スケーターを虜にしたVANS(ヴァンズ)の定番シューズOLD SKOOL<オールドスクール>
スケートカルチャーを牽引し続けるアメリカ・カリフォルニア州アナハイム生まれのブランド『VANS(ヴァンズ)』。今回はこちらから1977年デビューの名作、OLD SKOOL<オールドスクール>をご紹介。80年代に経営破綻を経験したVANSを長年支えている王道シューズは何故、ファンに愛され続けているのか。その秘密に迫ります。
スケーターからの支持を受けたOLD SKOOL
OLD SKOOL(当時はStyle36)が発売されたのは1977年。76年に発売されたERA<エラ>が西海岸のスケーターたちの間で流行し、徐々にVANSブランドが確立されてきた時代でした。
OLD SKOOLは、今でこそお馴染みのサイドストライプを初めて取り入れ、印象的な色使いとアウトソールが特徴なシューズです。ちなみにサイドストライプ誕生のきっかけは、創設者であるポール・ヴァン・ドーレンの落書きからと言われています。このストライプは後に『ジャズストライプ』と呼ばれるようになり、OLD SKOOLの愛称でもある『JAZZ』の由来になりました。
耐久性アップのために爪先部分に本革の補強を入れるなどされたモデルは、当時としては革新的なものでした。また、ワッフル状に加工されたアウトソールは高いグリップ力を生み出し、スケーターを中心としたアクティブな若者に支持されていきました。
経営不振のVANSを支え続けた王道シューズ
VANSが生まれたのは、他メーカーと比較すると割と新しめな1966年。ポール・ヴァン・ドーレンと3人の仲間たちによってショップを運営していたことからこの名前がつき、『ヴァルカナイズド製法』と呼ばれる技術を用いてスニーカーを製作していました。これはアッパーとソールをラバーテープで固定し、さらに熱で圧着する製法で、あらゆる方向からの圧力に強い、丈夫な作りが特徴です。
当時は空前のスケートボードブームだったため、彼らの丈夫なシューズはスケーターたちの心をとらえ、徐々に評判を集めることに。創業10年後の76年には伝説のスケーター、トニー・アルバやステイシー・ペラルタによってデザインされたERAが大ブレイク。
ちなみにVANSのロゴである『OFF THE WALL』はERAの発売から取り入れられたそうですが、皆さんはこの『OFF THE WALL』の意味をご存知でしょうか? マイケル・ジャクソンの歌のタイトルにもなっているこの言葉。直訳すると“壁から離れる”ですが、実際は“一風変わった” “型破りな” “頭のおかしい奴”と訳すのが主流らしく、いかにもスケートボードブームから生まれたストリートカルチャーという感じがしますね。
また、シューズのカスタムオーダーをいち早くサービスに取り入れ、企業の販促用のみならず一個人のオリジナルモデルも気軽に作れました。現代でこそカスタムオーダーは広く一般に知られてきましたが、1970年代当時にそれでブームを巻き起こしたポールの先見性には驚かされます。
その2年後に発売されたOLD SKOOLも流行し、軌道に乗ったかと思えば84年には経営破綻。すでに一線を退いていたポールが社長に復帰することによって業績は回復したものの、その後に買収されるなど時代の荒波に左右され続けてきました。そんな中でも変わりなかったのが、若者たちからの揺るぎない人気ぶり。そして彼らの心をつかんでいたのが、OLD SKOOLやERAといった定番スニーカーだったのです。
インフルエンサーはスケーターたちだけは無い
確かにOLD SKOOLを履き始め人から人へと伝染させた張本人はスケーター自身でした。しかし、その魅力をさらに広めた要因の1つとして、1980年代初頭のアメリカンハードコアパンクブームがありました。
BLACK FLAG<ブラックフラッグ>のヘンリー・ロリンズやMINOR THREAT<マイナースレット>のイアン・マッケイなどがOLD SKOOLを履いて日常の不満や憤りを歌う姿は、当時同世代である10代の若者たちに強烈なインパクトを与え連帯感を生みだしました。
ヘンリーやロリンズ自身もスケートボードをする時の格好=普段着のままステージに上がっただけだったのでしょう。
OLD SKOOLの魅力とは?
このシューズの魅力は、時代を超えて愛されるその普遍的なデザインがまず挙げられます。カラーバリエーションも豊富ですし、近年ではハイブランドとのコラボレーションを発表するなどさまざまな層の人たちにアプローチしています。
しかし、その歴史を紐解くと原点はスケートボードカルチャーであり、スケーターたちの声を聞き、手ごろな価格で頑丈なシューズを作り続けてきたことです。高級なブティックに行かなくても、誰でも最高にクールになれるシューズであること、それこそがOLD SKOOLの魅力では無いでしょうか。
アメリカ西海岸の“オールドスクール”なカルチャーを感じたいなら、サイドストライプの魅力を存分に楽しめるOLD SKOOLを履いて出掛けてみては?