90年代の雰囲気が凝縮! スケートラインのカタログから蘇ったヴァンズ『SPEED』の物語【ヴァンズ担当者がシューズを語る】
仕事で日々スニーカーに向き合い、肥えた視点をもつスポーツメーカー担当は、あのモデルをどう見ているのか。今回ピックアップするのは、『ヴァンズ(VANS)』のスピード<SPEED>。「スケシュー」のムーブメントが最盛期となった90年代のスケートラインのカタログに掲載されていたアーカイブモデルの復刻版です。
スタイリングの軸となりそうなファットなルックスなどその魅力について、ヴァンズジャパン マーケティング部の古谷さんが語ってくれました。
“ポテっ”としたファットさが逆に今、新鮮
――『スピード』は90年代のアーカイブモデルなんですよね。
1998年秋冬のスケートラインのカタログに掲載されていた、もとはウイメンズ向けのスケートシューズとして登場したモデル。2023年に「シュプリーム」とのコラボレーションによってアーカイブから蘇りました。若干のアップデートがされてはいるものの、全体的なシルエットは当時のまま。それを経て、2024年春夏から、一般モデルとしていろいろなカラーが登場してきています。
――6月から「ABC-MART GRAND STAGE」にて、ブラック、ホワイト、ネイビー、パープルの4色が展開予定とか。
カラーリングが全部渋くて、いいですよね。
――このモデルの特徴を教えてください。
まず見た目のファットさ。シュータンがすごく分厚くて硬い。最近のモデルのシュータンは、薄くてもしっかりと耐久性や保護性がありますが、当時はこういったファットなものが主流でした。そこが見るからに昔のスケシューのリバイバルだなという感じ。90年代〜2000年代のスケシューは、こういったファットなシルエットが主流だったんですよね。フィット感がありつつも、窮屈な感じはしません。
あとは、このヴァンズのサイドストライプ。通常レザーで入っていることが多いですが、それがボディと同じカラーで表現されつつ、メッシュとスエードの切り替えのデザインがされているなど、ディテールも凝っていますよね。シューレースのホールにもデザイン性があったり。
さらに今の気分に合うのが、シュータンのブランドロゴが現行のものではなく、当時の少し縦長のものを採用していること。そしてこの「ちょい見せラバーソール具合」。何周も回ってカッコいい、かわいい、みたいな捉え方をされている昔のトレンドが凝縮されているのが、このシューズのいい部分かなと思います。
――古谷さんならどう『スピード』を履きますか?
僕は普段からスケートをするわけじゃないですが、このモデルはタウンでもばっちりハマりますよ。少し太めの「ディッキーズ」のワークパンツに合わせてざっくり履いたり。90年代当時のファッションの雰囲気も感じますし。これからの季節は、ショーツに合わせてもカッコよさそう。
――ヴァンズの「ファットシューズ」といえば、こちらの 『ニュースクール』もありますよね。ファットなシルエットが最近のトレンドだったりするんですか?
去年、ニュースクール<KNU SKOOL>の復刻版が登場しました。もとは、ヴァンズの定番・オールドスクール<OLD SKOOL>から派生して、90年代に生まれたモデル。今のトレンドにもすごくマッチしていますよね。どんなスタイルにも合わせやすいというのも人気の理由なのかなと思います。シューレースも非常にファットなのですが、あえてシューレースを結ばずにさらっと履いてもかわいいですし、細いものに変えて履いてもカッコいいです。
――『スピード』も『ニュースクール』も、ユニセックスでいけそうなデザインですね。
『ニュースクール』は半々かなと思います。『スピード』はよりメンズに支持されやすいモデルかなと思います。「シュプリーム」とコラボしたという系譜にしかり、ディテールに凝った部分が、スニーカーラバーの心をくすぐりますよね。
アーカイブの復刻で「また好きに」なってほしい
――アーカイブの復刻は積極的にやられていますか?
ヴァンズは多いです。一見そんなにバリエーションがないブランドのように思えますが、少しずつ違うモデルが存在しており、ブランドとしての圧倒的な信頼感と安心感を保ちながら、少しずつアレンジされたモデルを復刻しています。
そうすることで、よりヴァンズを知ってもらうきっかけになり、手に取る人が増えたらいいなと思います。今までヴァンズを履いたことがない人や最近ヴァンズを履いていない人のような、いわゆる「今ヴァンズの気分じゃない」という人への新しい提案となれたら。定番モデルにも出会うきっかけにもなってくれたらうれしいです。今後もそういった商品をいろいろと展開していけたらと思います。
――ヴァンズはヴィンテージも多いですよね。
ただヴィンテージは、値段が張るものも多いですよね……。だからこそ90年代や2000年代のムードを味わいたい、いまの若い人に刺さってくれたらいいなと思います。もちろん、当時履いていたという往年のヴァンズファンにも、ぜひ履いてほしいです。
スポーツ、カルチャー。「オーセンティシティ」な魅力
――今年は世界的に大きなスケートボードの大会がありますが、前回大会からスケートボードが正式種目になりましたね。
前回大会では、ヴァンズからもライダー2名が参加しメダルも獲得しました。まだ選考期間中なのですが、うまくいけば出場できそうなライダーが数名いるので、僕らとしてもぜひ応援していきたいなと思います。
もとはストリートカルチャーであり、スポーツではないスケートボード。このことに関しては、いろいろな意見もあると思います。競技となると演技点の考え方など、捉え方も変わりますしね。一方、ストリートで滑っている子たちは、挑戦する相手が自分自身。自分と闘ってメイクできるようになり、大きな達成感を与えてくれるのがスケートです。ヴァンズとしては、どちらも全力で応援したいですね。大会で表彰台を目指すライダーも、ストリートのスケーターも。
――他にも「スケシュー」があるなかでのヴァンズならではの魅力とは?
ヴァンズが親しまれるゆえんは、やっぱり歴史。スケートボードシューズとして、一番古くからありつつ、今もなおずっと同じことをやり続けている信頼度は強いのかなと思います。昔からライダーやチームをサポートして、カルチャーがあってショップやコミュニティがある。スケートボードを育んできたコミュニティに対して、サポートする気持ちがすごくあるブランドです。ライダーもしっかりケアしますし、ショップとの関係性も大切にしています。
社内では「オーセンティシティ」という言葉でよく表現しているんですけど、ヴァンズはそこがすごく強いブランドだと思うんです。スケシューとしてもそうですし、それ以外のカルチャーも。例えば音楽なら、パンクバンドの子が履いていているのを真似して世界中のパンクキッズが履いていたりして、そうやって「ヴァンズだったら間違いない」という気持ちが生まれて、それがオーセンティシティ=信頼感につながるんだと思います。