「気にしすぎなくていい。でも、自分は曲げるな」広島ドラゴンフライズ・ドウェイン・エバンスの宝物『僕をつくった、あの1足。』
強い選手には、いくつかの種類がある。声で引っ張る選手もいれば、数字で証明する選手もいる。そのなかで、ドウェイン・エバンスは、空気そのものを引き締めるタイプだ。
広島ドラゴンフライズで求められている役割について聞くと、彼は迷いなくこう答えた。「リーダーになることが自分の役目。高い強度をチームにもたらして、勝利に貢献することがやるべきことだと思っています」
言葉はシンプル。でも、そのシンプルさには、ごまかしがない。
今回は、そんなエバンス選手に、10代のころのこと、音楽のこと、そしてずっと履き続けてきた一足について話を聞いた。選んでくれたのは、飾らず、でも確かな美学が宿るヴァンズ(VANS)のオールドスクール<OLD SKOOL>。そこには、彼の生き方そのものが表れていた。

父のいる体育館がバスケの原風景
バスケットボールを始めたきっかけは、父の存在だった。父はバスケットボールの審判をしていて、エバンス選手は3歳のころから、その姿について体育館に通っていたという。まだ自分が試合に出る以前から、コートは日常の景色だった。やることがないから、サイドでボールをつく。そんな時間が、自然にバスケットボールへとつながっていった。
早くから始めたからこそ、特別な“スイッチ”が入ったわけではない。むしろ逆だ。毎日のように体育館にいて、気づけばずっと続けていた。4、5年生のころにチームで本格的にプレーし始めてから、より真剣になっていったが、その根っこにはずっと“自然とそこにあったもの”としてのバスケットボールがある。
ずっと近くにあったものは、ときに運命になる。エバンス選手にとって、バスケットボールはきっとそういうものだった。

複数ポジションで見える景色が増えた
10代から20代にかけて、プレースタイルは大きく変わった。
当時はチームの中で一番背が高い存在で、4番、5番を担うビッグマンだった。けれど今は、ガード的な役割もこなす。普通なら戸惑いそうな変化を、エバンス選手はまっすぐ受け止めている。むしろ、すべてのポジションを経験したことが、相手の読みやゲーム理解を深めることにつながったと話す。
ひとつの役割だけでキャリアをつくってきたわけじゃない。いろんな場所を通ってきたから、いろんな視点を持てる。
それはプレーにも、人との関わりにも表れているように見える。自分のやり方は持っている。でも、視野は閉じない。エバンス選手の言葉を聞いていると、その柔らかさが繰り返し立ち上がってくる。

真夜中にロックを爆音で聴いていた10代
今回の取材でおもしろかったのは、音楽の話だ。10代のころ、エバンス選手がよく聴いていたのはロックンロール。FallOutBoyやBlink-182の名前が挙がった。しかも聴くのは真夜中、寝室で、大音量。リラックスのためではない。音楽を聴きながら叫んだり、感情を爆発させたりするためだったという。
そのエピソードは、少し意外でもあり、すごく腑に落ちもした。コート上では冷静に見える選手ほど、内側では強い熱を持っていることがある。10代のエバンス選手にとって、ロックは感情を逃がすための場所だったのだろう。
今はヒップホップ、日本の曲、カントリー、EDMまで、かなり幅広く聴くようになった。試合前に気合いを入れる曲、シューティングのときに流す曲。その場面ごとにプレイリストを変えているという。感情を爆発させていた10代を経て、いまは感情を使い分けられる大人になった。
その変化もまた、キャリアの厚みだ。
派手じゃない。でも、どこでも履けるオールドスクール
今回選んでくれた一足は、VANSのオールドスクールだった。理由は明快だ。
「どこでも、どんなシチュエーションでも履けるから」
スーツのようなきちんとした格好にも合うし、ジムに行くようなカジュアルな場面にも合う。その“振れ幅”が気に入っているという。
ファッションとしての派手さではなく、生活に馴染みながら、その人らしさを出せること。
この選び方は、とてもエバンス選手らしい。

しかも彼は、新品すぎるVANSはあまり好きじゃないとも話す。少し履き込まれて、ほどよく汚れているくらいがいい。去年の夏に買った一足を今も履いていて、毎年ひとつ新しく買うつもりでいる一方、買い替えたら古いものは手放す。コレクターというより、ちゃんと使う人の感覚だ。
大学時代、VANSを履いていた理由もシンプルだった。安くて、履きやすかったから。当時はファッションをそこまで気にしていなかったという。
でも年齢を重ねた今は違う。他人がどう思うかではなく、自分にとって本当にいいと思うもの、自分に似合うと思うものを選ぶようになった。ファッションの話をしているようでいて、これは生き方の話でもある。

「気にしすぎるな。でも、自分は曲げるな」
今回の取材で、いちばん印象に残った言葉がある。
10代の自分に何を伝えたいか。そう聞かれたエバンス選手は、「いろんなことを気にしすぎるな」と答えた。成功したい、友達をつくりたい、正しいことをしなきゃいけない。若いころは、いろんなことを背負いすぎていたという。いま振り返ると、全部を正しくやるなんて難しい。だからこそ、自分自身を曲げないことが大事だと思うようになった。
誰かに好かれるか、嫌われるか。そこに振り回されるより、自分がなりたい自分になることの方が大事だ。
彼は同時に、こんなことも言っている。
「人と正しい接し方をしながら、情熱を持ってやっていければ、最後は結果がついてくると思う」

信念は曲げない。でも、人との向き合い方は誠実に。この両方をちゃんと持っているところに、エバンス選手の説得力がある。
未来は決めすぎない。でも、開いておく
自分の性格については、「流れに身を任せるタイプ」と分析していた。自分のやり方を貫きながらも、オープンにいろんな視野を持つ。できれば優しい人でありたいとも話していた。
10代のころ、将来のことはほとんど想像していなかった。日本でインタビューを受けている未来なんて、もちろん考えていない。でも、そのときどきでいろんなものを受け入れてきたから、いまがある。
10年後は、日本にいたい。バスケットボールは引退しているかもしれないけれど、自分のブランドを持って、店を開けていたらいいな。そんな未来を、いまは思い描いている。
未来を細かく決め込みすぎないこと。でも、自分の好きな方向にはちゃんと進んでいくこと。その姿勢もまた、彼らしい。

履くものにも、生き方が出る
VANSのオールドスクールは、エバンス選手にとって“特別に派手な一足”ではない。でも、どこでも履けて、自分らしくいられて、少し履き込んだくらいがちょうどいい。その価値観は、そのまま彼の人柄に重なる。
無理に誰かになろうとしない。
気にしすぎない。
でも、自分の信念は曲げない。
そして、人には正しく向き合う。
10代の読者に向けてのメッセージとしても、これ以上ないくらいまっすぐだ。バスケットボールでも、学校生活でも、人間関係でも、余計なことを考えて揺れる瞬間はある。けれど最後は、自分が信じていることを続けられるかどうか。その積み重ねが、自分の輪郭をつくっていく。

エバンス選手が履いてきたVANSオールドスクールは、そんな生き方に似合う一足だった。



