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年間3,000人の声を靴づくりへ。ABC-MARTの“本気印”が生まれるまで

2026.07.17

日々店頭に立ち、お客さま一人ひとりの足元に向き合っているABC-MARTのショップスタッフ。だからこそ知り得る“現場の声”を商品開発に生かすために始まったのが、「ABC STAFF PROJECT」です。

店舗スタッフが開発中のシューズを実際に履き、検証。履き心地、クッション性、足当たり、グリップ、デザインなど、あらゆる面へのリアルなフィードバックをもとに、改良を重ねます。その取り組みから、どんな靴が生まれたのか――。ABC-MARTの担当・治部さんに伺いました。

すでにあった“本気”を、改めてプロジェクト化

――「ABC STAFF PROJECT」発足の経緯について教えてください。

もともとABC-MARTでは、自社商品の開発において、店舗スタッフやお客さまの生の声を取り入れながら進めてきました。ただ、その事実がまだ十分に知られていないという課題があり……。

だからこそ、お客さまの声がどのように商品へ反映され、どんな開発ストーリーにつながっているのかを、もっと多くの方に知っていただきたい。そこで、この取り組みを改めてプロジェクト化し、「ABC STAFF PROJECT」と名付けました。

ABC-MARTの販売スタッフは、日々、お客さまの靴選びに向き合っています。接客数は、年間平均3,000人。自分たちが履いて感じることはもちろん、お客さまから聞く「ここが痛い」「こういう靴が欲しい」「これは履きやすい」といった声も、すべて販売スタッフが拾い上げている環境があります。

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――だからこそ、本社スタッフではなく店舗スタッフ発信のプロジェクトなのですね。

そうなんです。靴販売の現場での動きは、一般的なアパレル販売とは、また少し違います。接客中にしゃがんだり、靴を履いたままお客さまの足元に寄り添ったり、サイズを探して何度も売り場とストックを往復したり――。靴自体がグニャっと曲がりますし、かかとやソールへの負荷もあります。いろんな動きをするからこそ、履き心地を体感できるんです。

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――そうして検証された商品には「本気印」を認定しているのですね。

売り場でも、該当の商品がお客さまにわかりやすく伝わる仕組みにしていきたいと考えています。

単に履きやすさを伝えるだけでなく、「実際にスタッフが履いて検証した」と言えることは、接客の中でも大きな意味があると思っています。

今後は、「ABC-MARTのスタッフが本気で考えた一足」といったキャプションを売り場で掲出するなど、商品に込められたストーリーをお客さまにも届けていきたいです。

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店舗スタッフが“100万歩”以上履いて検証

――今回のシューズは「100万歩検証」を経て誕生したそうですね。どんな方法で検証したのでしょうか。

発売前のサンプルをスタッフに履いてもらいました。参加したのは、1アイテムにつき12人。ABC-MARTのスタッフは、1日働くと、平均で12,000歩くらい歩くんです。人によっては15,000歩ほどになることも。参加者にはだいたい2週間、勤務中に履いてもらいました。

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――全員分の歩数を計算すると、100万歩を超えるわけですね! しかし、なぜ100万歩なのでしょう。

1日履いただけではもちろん、1週間履いてもわからないことがあります。ある程度継続して履くことで見えてくる部分があるので、その期間を2週間と設定しました。そして「100万歩」という言葉には、プロジェクトとしてのわかりやすさも込めました。

検証は都内だけでなく、北海道から沖縄まで、全国の店舗で実施しました。寒い地域、暑い地域、雨の多い時期など、環境によって履き心地や感じ方は変わります。だからこそ、さまざまな地域のスタッフに履いてもらい、よりリアルな声を集めることを大切にしました。

検証後のシューズは、すべて本社に返送してもらいます。すべて返送していなかったのでトル戻ってきた靴を見ると、泥がついていたり、ソールが大きくすり減っていたりすることもあります。「半日履いただけでは、ここまで減らないよね」と話しながら、実際の使用状況を靴の状態からも確認しています。

スタッフの感想だけでなく、返送された靴そのものも大切な検証材料です。たとえば、2週間で思った以上にシワが入っていれば、ニット部分の強度を見直す必要があるかもしれない。そうした細かな変化からも、改良のヒントを見つけています。

――検証を経て、実際に多かった意見は?

断トツで多いのは、やはりクッション性です。底付き感や、足当たりですね。1日中立っていると、足だけでなく膝や腰、首にも負担が出るので、薄すぎるソールだと疲れやすい。あとはグリップです。滑りやすいと踏ん張りが弱くなってしまうので、そこも重要なポイントになります。

――とはいえ、履き心地は足の形にも左右されるので、個人差もありますよね。意見はどのように整理しているのでしょうか?

アンケートでは、履きやすさ、クッション性、幅、デザインなどを選択式で聞きつつ、フリーワードでも入力できるようにしています。上がってきた内容はすべて一覧にして、同じ内容はまとめながら整理します。

たとえば12人中10人くらいが「幅が狭い」と言っていれば、そこは強く意識します。ただ、全員が幅広の足というわけではないので、どこまで広げるかは調整が必要です。逆に少数意見でも、「防水機能があった方がいい」など、他の意見と真逆ではなく新しい機能につながるものであれば、コストの範囲内で搭載を検討することもあります。

――多数派だけでなく、少数派の気づきも取り込んでいるのですね。

はい。少数派の意見でも、お客さまから聞いた声を代弁している可能性があります。だから、全部に目を通して、一つひとつ「これはどうしようか」と考えています。

――「履き心地」は数値化しづらいからこそ、現場の声が重要ですね。

そう思います。もちろん、全員に完璧に合う靴を作るのは難しいです。足の幅や形も人それぞれですし、幅のパターンを何種類も作れるわけではありません。だからこそ、どの意見をどう生かすか、さじ加減が大切になります。

現場スタッフの声には、自分が履いて感じたことだけでなく、お客さまの声も含まれています。そこを拾えることが、ABC-MARTならではの強みだと思います。

第一弾の「本気印」は3型

――「ABC STAFF PROJECT」第一弾の商品、「ローファースニーカー」と2型展開の「ハンズフリーサンダル」について教えてください。まず、「ローファースニーカー」は、どのようなニーズから生まれたのでしょうか?

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最近は、通勤にスニーカーを履く方が本当に増えています。パンプス離れもありますよね。ただ、ランニングシューズのようなスニーカーだと、通勤服やオフィススタイルに合わせにくいという声もあります。

そこで、通勤時にらくに履けるように、ローファーのデザインを落とし込んだスニーカーを開発しました。紐がなく、シンプル。きれいめスタイルにも合わせやすいデザインです。

パンプスに近づけるために、甲の露出が少し出るような浅めのローファーデザインにしました。そうすることで抜け感が出ますし、女性らしい印象にもなります。

ただ、スニーカーのよさは、甲までしっかり覆われていることで、体重や足にかかる負荷を分散できるところにもあります。今回のようにパンプスに近い形にすると、幅やかかとの部分でしっかり止まっていないと脱げてしまう。デザインと履き心地のバランスが難しい部分でした。

――検証では、どのような課題が出ましたか?

幅が少しタイトすぎるという声がありました。かといって、幅を広げすぎるとパカパカ脱げてしまう。そこで、ベルト部分は伸びすぎない素材にして、足の一番広い部分はニットで少し伸びるようにしました。締めるところは締めつつ、当たりやすいところにはゆとりを持たせています。

――機能面ではどんなこだわりがありますか?

インソールには、汗をかいてもサラッとしやすいドライクールマックスのメッシュ素材を使用しています。アッパーはメッシュで通気性があり、冷感糸も練り込んでいます。ずっと冷たいというよりは、履いた瞬間や出かける瞬間に少しヒヤッとして、快適に履き始められるようなイメージです。

黒に関しては、現場から「仕事でも履くので全部真っ黒にしたい」という声が上がりました。最初はライニング部分にライトグレーを入れて、靴としての表情を出そうとしていたのですが、仕事用として使うなら余計な色がない方がいい。現場の要望を反映して、真っ黒にしました。

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――「ハンズフリーサンダル」は、2型展開しているのですね。

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ハンズフリーのシューズが好調でサンダルデザインの要望が現場から多数あり、開発にいたりました。定番のツーベルトデザインは、ストラップで調整可能にすることで足にフィットしやすくしています。調整後は、手を添えずとも履いたり脱いだりできる設計です。

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そして最近人気なのが、甲を覆うデザイン。特に男性には、「マジックテープを開閉するのも面倒で、手を使わずにすっぽりと足を入れて履きたい」というニーズがあります。だからこそ、安定感やフィット感を妥協せず、簡単に履けるものを作りたいという話になりました。

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――開発で苦労した部分は?

スッと履けることと、歩いたとき脱げにくいことは、両立が難しい部分です。そのバランスを検証しながら整えました。

スッと足入れができて、かつフィット感を出すために、クッションの位置を下げたり、増やしたり、減らしたり……としながら、何度もサンプルを作り直しました。

甲を覆うドローコードタイプは、履くときにアッパー部分が巻き込まれてしまうことも課題でした。そこで、巻き込まれにくいようにステッチで固定するなど、細かい調整を重ねました。

次なる一足にも期待が高まる

――「ABC STAFF PROJECT」は、今後どのように展開していく予定ですか?

次のシーズンに向けては、ウィメンズのオリジナル商品を中心に、これまで長く販売してきた人気アイテムのアップデートも進めています。

たとえばローファーパンプスのように、すでに多くのお客さまに支持されている商品でも、「かかとが抜けやすい」「前が詰まる」といった声が上がることがあります。そうした細かな声を拾いながら、履き心地やクッション性、フィット感を見直していく予定です。

――新しい商品を作るだけでなく、定番として売れている商品も見直していくんですね。

そうですね。売れている商品だからそのままでいい、というよりも、長く支持されているものだからこそ、今の声に合わせてアップデートしていきたいです。

現場のスタッフは、日々お客さまと接しているので、「ここがもう少しこうだったらいいのに」という声を一番近くで聞いています。

その声を商品に反映して、さらに店頭で「これはスタッフが実際に履いて検証した一足です」と伝えられるようにしていく。そうすることで、スタッフ自身も自信を持っておすすめできますし、お客さまにも商品の背景まで知っていただけると思います。

――これからABC-MARTの店頭で、“本気印”の商品が増えそうで楽しみです!

はい。今後ラインナップが増えていくことで、「ABC-MARTのスタッフが本気で考えた商品」という認知が、少しずつ広がっていけばいいなと思っています。

お客さまの声が商品に反映されていて、そこに開発ストーリーがある。そのことを、もっとたくさんのお客さまに知ってもらいたいですね。

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