「綺麗じゃないのが、むしろ本物」。ラッパー・Jinmenusagiが履く、武装しないVANS【MY AUTHENTIC】
DOORでは「MY AUTHENTIC(私の本物)」をキーワードに、2026年に創業60周年を迎える『ヴァンズ(VANS)』とともに、自分らしい価値観を持つ人たちにインタビュー。今回話を聞いたのは、音楽制作とライブを中心に活動するラッパー・Jinmenusagi(ジンメンウサギ)(@1eeyvng)さん。VANSを偏愛し、楽曲『Vans Ninja』を発表。大学時代に買ったネイビーのエラ<ERA>から、今の定番である黒のオールドスクール<OLD SKOOL>やスケートハイ<SK8-HI>まで、何足ものVANSを履いてきた。そんなJinmenusagiさんに、靴から広がったファッションの楽しみやVANSへの思い、自身にとっての“本物”について聞いた。
ブランドより、自分が気に入ったものを
音楽を作り、ライブでパフォーマンスするJinmenusagiさん。そこから派生してファッション関係の仕事をするなど、音楽以外にも活動の場を広げている。そんな彼が、モノを選ぶときに大切にしていることとは。
「ブランドイメージとか価格じゃなくて、気に入ったものを単純に履き続ける。そういうピュアな部分を一つ持っていてもいいのかなと思っています」

音楽を続けるなかで、服や靴の好みも時代とともに変わってきた。
「ラップはどんな音楽にも乗るので、時代ごとに流行る音に合わせて、ファッションも変わってきます」
Odd Futureを好きになった頃、目にしていたのはアメリカ西海岸の若者たちのスケートカルチャー。その足元にはVANSがあった。
「ミュージックビデオで見たタイラー・ザ・クリエイターのファッションを、そのまま真似していました。襟のある半袖シャツに、浅めのジェットキャップとハーフパンツ。それに、ERAかOLD SKOOLを履いていました」
今はイギリスの流行にも影響を受け、より都会的な着こなしに目が向いている。
「今気になっているのは、ニュースクール<KNU SKOOL>の黒。履いてみたいですね」
VANSも流行に合わせて進化していると感じる一方、初めてVANSを「かっこいい」と思った気持ちは、いまなお残っている。
「ファッションの好みが多少変わっても、VANSは手元に置いておきたい。ずっと好きなものは、ブレずにいたいです」

ベージュのDickiesにネイビーERA
Jinmenusagiさんが初めて買ったVANSは、大学時代にABC-MARTで選んだネイビーのERAだった。
「お金がそんなにいっぱいある時期じゃなかったので、本当にそれは文字通り、潰すまで履きました」
当時よく履いていたのは、ベージュのDickiesのパンツ。ネイビーのERAなら、そのパンツにも合わせやすく、毎日のように履けると思った。
「いっぱい買えないから、毎日履いても差し支えない配色とサイズで選びたかったんでしょうね、当時は」

大切にしまっておくためではなく、気に入った一足を履けるだけ履く。その付き合い方は、最初のERAから始まっていた。Jinmenusagiさんはその後も、色や柄の異なるVANSを選び、何足も履き潰してきた。

VANSが好きで、曲も作った
楽曲に、VANSを題材にした『Vans Ninja』がある。曲にした理由はシンプルだった。
「VANSが好きだから、曲にしようと思ったんです。きっかけは、そんなに大げさなものではなくて」
2010年代には、身の回りにあるものをラップにする流れがあった。じゃあ自分なら、何を題材にしよう……。思い浮かんだのは、日頃から履いていたVANSだった。
「いろいろ持っていましたね。赤でソールが茶色いモデルや、ネイビーと薄い青、黒と青の切り替えのOLD SKOOL。普通の黒も、ソールが茶色い黒も、真っ白なモデルも……」

これまで、いろいろなVANSを履いた。

頭に浮かぶ、OLD SKOOLの白い線
OLD SKOOLの好きなところは、フォルム。サイドを走る白い線と、白いソール。それらがステッチに支えられて立体的に見える。白いシューレースもあいまって、パンツの裾からのぞくと、かっこいい。
「VANSって少し漫画チックというか、ポップ。それが自分にとってはいい。二次元的な魅力がある気がするんです」

ネイビーのERAを買ったときも、Dickiesのパンツとの組み合わせを考えた。服選びの出発点には、いつも履きたい靴があった。
「これを履きたいから、これを履いてかっこよく見せるにはどんなパンツがいいんだろう、その上には何を着ようって、逆算するのが楽しいんです」

「歩くことが楽しい日」に履く
彼がこの日履いていたのは、一見黒のように見えるダークブラウンのOLD SKOOL。
「茶色って、すごいかっこいいなと思って。汎用性も高いんですよ」

「10年くらい前にカニエ・ウェストがよく茶色を着ていた時期があって。特徴的な形のパーカを合わせていたのが、かっこよくて。スニーカーに茶色をもってくるのもかっこいいなぁ、と」

そして彼にとって定番として欠かせないのが、黒のSK8-HIとOLD SKOOL。「死ぬまで付き合うだろうな」と思っている。

いろんな色を試してから結局、黒白のVANSに戻る人もいれば、ずっと黒白しか履かないという人もいる。Jinmenusagiさんは、前者。
「いろんな色に浮気して帰ってきたタイプですね。やっぱり黒のこれでいいんだなって」
トレンドのボリュームシューズを履くこともある。そんななかでVANSを選ぶのは、歩くことが楽しい日。
「『どこかへおしゃれして行くぞ』と武装する感じとはまた違って、より本当の自分に一歩も二歩も近いのがVANSという感じです」

本物とは、“綺麗じゃないもの”
Jinmenusagiさんにとっての「本物」とは? 少し考えたあと、こんな答えが返ってきた。
「僕にとっての本物は、多分、“綺麗じゃないもの”ですね」

「例えば、おろしたての靴は綺麗じゃないですか。使って使って、汚くなって、ほころびが出てくる。そのほころびって、自分が使った証拠でもあるじゃないですか。自分に近い距離にあるから、本物だと感じるんです」
ほころびは、靴だけに生まれるものではない。
「ふとした発言で、この場にいるみんなが笑っちゃうことも、ずっと張り詰めた緊張のなかの緩みじゃないですか。何もなかった綺麗なところに生まれたほころびというか。みんなで一緒にほころぶことができる。そういうことこそが、本物に近い気がします」
靴は、履くことで自分のものになっていく。集めて楽しむ気持ちもわかるが、靴を履いて楽しむことに魅力を感じる。昔、気に入って履いていたというタイダイ柄のERAも、雨の日に靴の中まで濡れるほど履き続け、惜しみながら手放した。
「普通に履いてなんぼだと思うんです。履いて楽しんで、自分のファッションの中に入れられたら、もっとクリエイティブですよね」
履いて、汚して、履き潰す。そうして自分が使った跡のある靴もまた、“本物”だ。



