「東京スニーカー史」を手がけた小澤匡行さんが語る、90年代スニーカーブームと復刻版モデルのススメ
健康志向のライフスタイルがトレンドの昨今、スニーカーは幅広い層でファッションアイテムの主役となり、90年代にブームとなった“名品”の復刻版モデルも数多く発売されています。そこで「東京スニーカー史」の著者である小澤匡行さんに、当時のスニーカーブームと現在を比較しながら、復刻版モデルの魅力を語ってもらいました。
小澤匡行 おざわ・まさゆき
1978年生まれ、千葉県出身。大学在学中に1年間のアメリカ留学を経て2001年より雑誌『Boon』にてライター業をスタート。現在は編集・ライターとして雑誌やカタログなどで活動中。2016年に『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。Instagram:@moremix
「何を履くかではなく、どう履くか」が今のトレンド
「90年代のスニーカーブームは、まずスポーツ自体が発展したのが大きかったと思います。そこからさらに、スポーツシューズとさまざまなカルチャーが結びつくことで進化していきました。ランニングシューズやバスケットシューズが、スケーターやB-BOYのシューズに変わっていったり、ミュージックシーンで愛されるシューズになっていったのも特徴的です。90年代はカルチャーと連動しながら、その靴が良くなるための進化にメーカーも力を注いでいましたが、その上で今はライフスタイルに合っているかどうかが重視されているように感じます。『何を履くかではなく、どう履くか』という時代に変わってきました」
これぞ“断捨離”スニーカー NIKE[エアハラチ]
「これは『NIKE(ナイキ)』がアッパーのテクノロジーを追求し始めたころに生まれたスニーカーで、僕は中学で陸上をやっていた時に履いていましたが、足にピタッと吸い付く感じがよかったのを覚えています。アスリートだけでなく一般の人にとっても、自分のパフォーマンスを上げるための“靴を感じないさせない軽さやフィット感”を求めて生まれたのが[エアハラチ]だと思います。こういうスニーカーがトレンドなのは、断捨離だったり、煩わしいものを取り除きたい欲求の現れなのかもしれません」
“名品”の今の履きこなしを楽しむ NIKE[エアジョーダン&エアマックスモデル]
「説明不要かもしれませんが、スポーツやストリートのカルチャーがミックスして流行った靴ですし、もちろん思い出深いです。[エアマックス]は僕にとって…部室でなくなった靴です(笑)。30〜40代で当時のブームを経験した人たちには、[エアジョーダン]や[エアマックス]も昔のお宝を探しに行くというだけでなく、今の履きこなし方を楽しんでほしいですね。若い人たちがこういうスニーカーを細身のパンツと合わせて履きこなしている姿を見ると、ひとつの成功例なのかなと思います」
トレンドに合って新たな魅力 ADIDAS[エキップメントモデル]
「僕は陸上をやっていた高校生の時にこのシリーズを履いていたんですが、当時は『ADIDAS(アディダス)』のランニングシューズって全然イメージになかったんです。これこそ…街で履いている人はいなかったんじゃないでしょうか(笑)。ソールにブーストのテクノロジーが反映されていたり、アッパーがニットになっていたりとか、それらのギミックが今のトレンドと結びついたことで、新たな魅力が生まれているのは面白いですね」
ミニマムファッションにピッタリ REEBOK[フューリーモデル]
「最近はファッションもミニマムになっていて、それは潜在的な『ヘルシーに見られたい』という願望だったり、“健康的”っていうトレンドから来ているのだと思います。スニーカーってやっぱり健康の象徴ですし、もともと日本にスニーカーが入ってきた時もそういう“健康”っていう目的で入ってきました。僕は革靴とかも大好きですけど、どっちが健康的に見えるかという点で見た時に、[フューリー]のようなテクニカルかつ健康的なスニーカーが普段使いに選ばれているのかなと思います」
リーボッククラシック INSTAPUMP FURY DENIM インスタポンプフューリー デニム BD5609 16FA ABC-MART限定 BLU/WHT/BROWN
スニーカー=オシャレを広めた一足 NEW BALANCE[1400]
「一部のスニーカーマニアは別として、世の中的にスニーカーをオシャレに履くきっかけを作った一足なのかなと思います。これはファッションだけの文脈ではなくて、2011年に東北で起きた震災の後、『物を大事にしたい、食べ物にこだわりたい、生活を豊かにしたい』っていう人々の思いからライフスタイルの変化が起こって、それによって求められたのが[1400]なのではないでしょうか。個人的な思い出だと、僕は1994年の4月に高校に入ったのですが、3月にABC−MARTさんにスニーカーを買いに行って、なぜか[320]を買ったんです。いっしょに行った友達が[1400]を買っていて、卒業旅行で行ったディズニーランドで履いているのを見たら明らかに自分のよりカッコよく見えて。その後すぐに[1400]を買いに行ったのを覚えてます(笑)」
知る人ぞ知る隠れた“名品” VANS[ランピン]
「僕は以前『BOON』という雑誌を作っていたんですが、『復刻してほしいスニーカーランキング』をやると、古着屋さんとかオシャレな人たちは圧倒的に[ランピン]だったんです。当時、古着屋さんとかで探したんですけど、あまりなかったですね。復刻した際には大々的にPRしてなかったですが、一部の熱狂的な人たちから問い合わせが殺到したらしいです(笑)。こういうスウェードでボリュームのあるスニーカーをワイドなパンツに合わせたりするのはオシャレですね」
90年代に憧れた“お宝”を、ライフスタイルに合わせて楽しもう
「『今のスニーカーブームは90年代みたいですね』とよく言われていますが、僕の中ではあまりしっくりこなくて。今は今の楽しみ方があるし、そこにはライフスタイルの変化が密接に結びついています。手に入れることがオシャレだった時代から、それをどうやって履くかがオシャレになっている時代なので、それぞれのライフスタイルに合わせて、自由にスニーカーを楽しんでほしいですね」
テクノロジーの進化と流通面の向上によって、良い意味で誰でもかっこいいスニーカーを手に入れられる時代。90年代のブームを知る【スニーカーゴールデンエイジ】の人たちは、復刻された当時の“お宝”を、現代の自分のライフスタイルに合わせて履きこなして楽しむのはいかがでしょう?