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「決めすぎないほうが、自分らしい」佐賀バルーナーズ・井上諒汰のリーダー論『僕をつくった、あの1足。』

2026.04.17

Bリーガーの足元から、その人の原点や価値観をひもとく連載企画。今回登場するのは、佐賀バルーナーズ井上諒汰選手。今シーズンからキャプテンを務める井上選手が選んだのは、ニューバランスの「1906」だった。

コートで見せる実直なプレー、周囲を見ながらチームをつなぐ立ち振る舞い、そして私服にも自然に馴染むシューズ選び。そのすべてに共通していたのは、“自分らしさを無理にねじ曲げない”という感覚だった。

強くあること。
目立つこと。
先頭に立つこと。

リーダーには、そんなイメージがつきまとう。だが井上選手の言葉を聞いていると、チームをまとめるというのは、前に立って号令をかけることだけではないのだとわかる。ときには後ろから声をかけ、ときには一歩引いて全体を見る。その柔らかさもまた、リーダーに必要な資質なのだ。

そして、その感覚は足元にも表れていた。選んだのは、がちっと決めすぎないニューバランス「1906」。きれいに整えすぎない、その“余白”が、今の井上選手にはしっくりきている。

「決めすぎないほうが、自分らしい」佐賀バルーナーズ・井上諒汰のリーダー論『僕をつくった、あの1足。』

試されている「真ん中」に立つ力


今シーズン、井上選手は佐賀バルーナーズのキャプテンを任されている。チームの中で年齢的にも“真ん中”に位置し、上にはベテラン、下には若手がいる。その間に立ちながら、どうやって全体をひとつにするか。そこに今季の大きなチャレンジがあるという。

「今シーズンからキャプテンになったので、どれだけチームをまとめられるか、そこにどれだけ自分がやりきれるかというのは挑戦しているところです」

ただ、その語り口に気負いはない。チームメイトがよく話を聞いてくれること、みんなが同じ方向を向いてくれていることに、まず感謝がある。

「個人で結果を出すというより、チームとしてチャレンジしたい、というところにフォーカスしてくれるメンバーが集まっている」

それが、今の佐賀の強みなのだろう。

「決めすぎないほうが、自分らしい」佐賀バルーナーズ・井上諒汰のリーダー論『僕をつくった、あの1足。』

井上選手はこれまで、小中高大すべてでキャプテンを経験してきた。だが、そのやり方はずっと同じではなかった。むしろ、失敗と試行錯誤の連続だったという。

高校時代は、寮生活のなかで厳しい部活動に身を置き、“キャプテンらしい怖さ”を自分に求めた。自分がいるだけで空気が締まるような、強いリーダーになろうとした。けれど、それは本来の自分とは少し違っていた。

もともとは、明るくて、誰とでもフレンドリーに接するタイプ。だから無理に厳しさを演じようとすると、自分自身が苦しくなる。

一方、大学時代は逆の形を試した。前でぐいぐい引っ張るというより、少し後ろから全体を見て、落ち込んでいる選手に声をかけ、一緒に走るようなキャプテン像だった。その両方を経験したからこそ、今はわかる。

前に立つことも必要。
厳しいことを言い切る場面も必要。
でもそれだけでは足りない。
チームには、声をかけられないまま沈んでいく選手もいる。そこで拾い上げる役割もまた、キャプテンの仕事なのだ。

「今はハイブリッドな形でできている感じがあります。背中で見せる部分と、言うべきことは言い切る部分と、フレンドリーにそれぞれに声をかける部分と」

「決めすぎないほうが、自分らしい」佐賀バルーナーズ・井上諒汰のリーダー論『僕をつくった、あの1足。』

トップダウンだけでもない。放任でもない。そのちょうど真ん中に、今の井上諒汰のリーダーシップがある。

「1906」は“決めすぎない”感覚がある


今回選んだシューズは、ニューバランス「1906」。

なぜこの1足だったのか。そう聞くと、井上選手は「単純に一番履いてますね」と笑った。派手なエピソードより先に、まず日常が出てくるのが彼らしい。

「決めすぎないほうが、自分らしい」佐賀バルーナーズ・井上諒汰のリーダー論『僕をつくった、あの1足。』

以前はスタンスミスやエアフォース1のような、いわゆる“きれいな定番スニーカー”を多く履いていたという。だが30代に入ってから、少し感覚が変わった。

「上が今日みたいにちょっと決まってても、下でニューバランスみたいなので外してると、なんかおしゃれ上級者感もあるし、決めすぎてないけどかっこいい、みたいなのが自分の中であります」

この言葉は、そのまま井上選手の人柄の説明にもなっている気がした。全部をまっすぐに決めすぎない。少し力を抜く。でも雑ではない。ちゃんと整っているのに、どこか親しみやすい。

「自分のキャラクター的にも、真っすぐに全部決めすぎるより、どこか親しみやすさがある方が自分らしいんじゃないかなと思う」

「決めすぎないほうが、自分らしい」佐賀バルーナーズ・井上諒汰のリーダー論『僕をつくった、あの1足。』

ニューバランス「1906」は、そういう感覚をうまく受け止めてくれるシューズなのだろう。機能面でも履き心地がよく、ここ3〜4か月はかなりのヘビーローテーション。しかも佐賀では、井上選手といえばニューバランス、というイメージも少しずつ定着してきたらしい。

実際、彼のファンの子どもたちがニューバランスのバッシュを履いてクリニックに来てくれることも増えたという。シューズはただの道具ではない。履き続けるうちに、その人の輪郭そのものになっていく。

「決めすぎないほうが、自分らしい」佐賀バルーナーズ・井上諒汰のリーダー論『僕をつくった、あの1足。』

プライベートな感性は音楽でも表現される。

試合前に気持ちを高めるための音楽、というより、井上選手にとっての音楽はむしろ“切り替えるためのもの”に近い。なかでもよく聴くのが星野源だという。試合後、車に乗り込み、会場を離れる時間に曲を流して、ようやく自分をプライベートモードへ戻していく。

キャプテンという立場にいる以上、試合のことは考えようと思えばいくらでも考え続けられる。だからこそ、意識してスイッチをオフにする。おいしくご飯を食べて、しっかり寝て、また次の日を迎えるために。

音楽は、井上選手にとって感情を煽るものではなく、思考を静かに整えるための習慣になっているようだ。

小学生の頃からNBAに行くために逆算


井上選手の話で印象深かったのは、子どもの頃から“目標から逆算して行動する”感覚があったことだ。

兄と姉の影響で、家には自然にバスケットボールの環境があった。本格的に始めたのは小学校1年生。かなり早い。だがもっと大きかったのは、小学生の頃に兄が録画していたNBAの映像を何度も繰り返し見ていたことだった。

「NBA選手になるには何が必要かって考えて、高校はディフェンスを強化できそうなところを選びました。英会話も、小学校の時から習い始めました」

ここが面白い。ただ“うまくなりたい”ではなく、“その先に行くには何が必要か”を考えていた。しかも、それを家族がちゃんと後押ししていた。

夢があるなら、今何をすればいいと思う?そんなふうに問われながら育ったという。

結果として、NBAには届いていない。けれど、当時の選択は無駄にならなかった。今、チームには英語しか通じない選手がいる。コミュニケーションが必要な場面で、あの頃身につけた英語が自然に生きている。

「今やってることが、その時思ってる目標に直接つながらなくても、必ずプラスになって返ってくると思う」

この言葉には、妙な説得力がある。成功した人の“結果論”ではない。遠回りに見える準備でも、あとからちゃんと意味が出ることを、彼自身が知っているからだ。

「決めすぎないほうが、自分らしい」佐賀バルーナーズ・井上諒汰のリーダー論『僕をつくった、あの1足。』

10代の自分に言いたい「時間を無駄にするな」


井上選手は、10代の自分に声をかけるなら何と言うかという問いに、少し考えてからこう答えた。

「ありきたりですけど、時間を無駄にしないでほしいなって思います」

高校でも大学でも、部活中心の生活だった。授業中は、どれだけ体力を温存できるかを考えていた。大学でも、単位が取りやすい授業を基準に選ぶことがあった。

それはそれで、当時のリアルだ。部活に打ち込み、友達と遊び、旅行に行く。学生時代にしかできないこともある。

でも今になって思うのだという。もっと面白い講義を受けてもよかった。もっと知識を取りにいってもよかった。日本史をちゃんと学んでいたら、全国を遠征で回る今、もっと楽しかったかもしれない、と。

この視点は、かなり本質的だ。若い時は、役に立つかどうかで物事を選びがちだ。でも実際には、あとから効いてくるのは、すぐに成果に見えない学びだったりする。井上選手が10代、20代に伝えたいのも、まさにそのことだった。

「今やれるべきこと、やった方がいいことを選択していく生き方はおすすめしたいです。直接その目標につながらなくても、自分に返ってくるので」

バスケットだけを見ろ、ではない。むしろその逆だ。バスケットを本気でやるからこそ、その周辺にあるものも見ておいた方がいい。英語でも、勉強でも、人との関わりでも、それは必ず自分の厚みになる。

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佐賀に必要とされることがかっこいい

取材の最後のほうで、井上選手は引退後のことにも少し触れてくれた。今は、できるだけ長く佐賀に必要とされる存在でいたいという。

「選手の間に最大限、佐賀での価値を上げて、その先にもつながれば一番いいなと思っています」

神奈川出身で、大学は関西。それでも今、残りたい場所として挙げるのは佐賀だった。それはもう、単なる所属先ではない。自分の場所になっているということだ。

コーヒーも好き。引退後は、佐賀のバスケットに関わる仕事や、別のチャレンジもしてみたい。ユースや育成に携わる未来もあるかもしれない。

「決めすぎないほうが、自分らしい」佐賀バルーナーズ・井上諒汰のリーダー論『僕をつくった、あの1足。』

“ミスターバルーナーズ”と呼ばれる今の立場を、一過性のものではなく、その先につなげていく。その意志が、静かだけれどはっきり見えた。

ニューバランス「1906」は、そんな井上選手にすごくよく似合う。履き心地がよくて、毎日に馴染む。主張しすぎないけれど、ちゃんとその人らしさが出る。決めすぎない。でも、甘くない。

キャプテンとして、真ん中に立つこと。前にも出るし、後ろからも支えること。目の前の勝負だけでなく、その先に効く準備をしておくこと。

井上諒汰という選手は、派手な言葉でそれを語らない。けれど、その静かな選び方のひとつひとつに、長く信頼される人の輪郭が出ていた。

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