ゆっくり走れば速くなる? ランニング初心者用の『LSDトレーニング』
「夏に向けてダイエットしよう!」「ダイエットといったらランニングだよね!」と、ランニングに取り組むビギナーの方も多いかと思います。有酸素運動は脂肪燃焼に効果が期待できますが、初心者の人は“ペース配分”を誤りがちです。
そこで今回は、ランニング初心者にオススメしたい『LSDトレーニング』をご紹介します。コツは、とにかくゆっくり長く走ることです。
LSDトレーニングとは何なのか
LSDとは、Long Slow Distanceの略で、その名の通り『長く、ゆっくり、走る』というトレーニングです。スローペースで長時間走ることによって、有酸素運動の能力を向上させることを目的としています。
このトレーニングの優れているところは、とにかく運動負荷が軽いこと。余裕を持って会話が可能なほどのペースで走るため、一定のペースを保ちやすく、長時間走りやすくなるでしょう。
よくランニングが長続きしないというビギナーの方がいますが、それは自身で『しんどい』というペースまで上げてしまっている可能性があるからです。走り始めると身体が温まってくるので、無意識にペースが上がっていきます。しかしLSDトレーニングは最初から最後まで“ゆっくりペース”を貫くので、呼吸が上がるようなことにはならないのです。
では、具体的にどんなペースでどの程度走ればいいのか。一般的にはキロ7~8分ペースで60分以上走るのが主流となっていますが、厳密なルールはありません。心地よいと感じるペースよりもやや抑え気味で、可能な限り長い時間走るようにしましょう。
LSDトレーニング誕生の歴史
このトレーニング理論が誕生したのは1960年代まで遡りますが、『LSD』という言葉を日本で広めたのは、1988年ソウル大会女子マラソン日本代表の浅井えり子さん。浅井さんは当時指導を受けていた佐々木功監督からLSD理論を継承し、『浅井えり子の「新・ゆっくり走れば速くなる」マラソン・トレーニング改革』、『新版 ゆっくり走れば速くなる』などの著書を出版しています。
かいつまんで紹介すると、LSDは『身体の器』を大きくすることで、マラソン向きの身体を作るトレーニングのことを指します。『身体の器』とは、わかりやすくいうとガソリンタンクのこと。速く走るためのトレーニングというよりは、速く走るための土台を作るための手法とも言い換えることができるでしょう。
浅井さんは高校、大学までは平凡な陸上ランナーでしたが、実業団で監督からLSDトレーニングを叩き込まれ、アジア大会金メダル、四年に一度の世紀の祭典や世界選手権出場などのキャリアを積み重ねていきました。
ではLSDトレーニングはエリートランナー向けのトレーニングなのかといえば、そうではありません。書籍『新版 ゆっくり走れば速くなる』で、浅井さんはこう記述しています。
ランニングを始めたばかりの人が、いきなりペースを上げて走ろうとしても長い間走り続けることは無理ですが、ゆっくりとしたペースだったら、より長い時間走り続けることができます。どんなにペースがゆっくりであっても、長時間動いていれば、走行距離も延び持久力の向上につながります。
(途中省略)
LSDは、マラソンの基礎練習においても他のさまざまな面でも、とても大切で効果的なトレーニングなのです
LSDトレーニングで効果が期待できること
では、具体的にLSDによって、どのような効果が期待できるのでしょうか。1つひとつ解説していきます。
・全身持久力の向上(毛細血管の発達)
LSDのような有酸素運動を行うと、毛細血管が活発になります。これによって、酸素をたくさん含んだ血液を循環させることができるため、最大酸素摂取量と全身持久力の向上が期待できます。
・マラソン向きの身体作り(遅筋の発達)
マラソン向きでない身体とは、無駄な脂肪がついている(太っている)、スプリンター体質(速筋繊維が多い)という方が当てはまります。これらはすべてLSDによって体質を変えることが可能。LSDは有酸素運動ですので脂肪燃焼に効果抜群ですし、ゆっくり走り続けることで遅筋繊維を発達させることができます。
・ダイエット効果
上記の通り、LSDは脂肪燃焼に効果的ですので、ダイエットに最適なトレーニングです。本来ならばマラソンランナーが行うトレーニングですが、普段走らない方の減量方法としてもオススメできます。
・ランニングの習慣化
『ランニングはキツイもの』というレッテルが貼られがちですが、その意識が習慣化を妨げてしまっています。LSDは負荷が軽いトレーニングなので、音楽を聴きながら早歩きペースでのんびり走ったり、友達とおしゃべりしながら楽しく走ることができます。
LSDトレーニングの注意点
ここまでLSDの効果やメリットを書き連ねてきましたが、長い時間を走るゆえに気を付けなければいけない注意点も把握しておきましょう。
・最後までペースを一定にキープする
走り続けると身体が温まってくるので、どうしてもペースが上がりがちになってしまいます。ペース自体は早歩きよりも少し速い程度ですので、最後まで一定ペースを心掛けましょう。
・ランニングフォームを崩さない
自転車などでもそうですが、速いスピードで走っているよりも、遅いスピードで走っている方がバランスを取るのが難しくなります。LSDにおいても同様で、最後まで腰が落ちない綺麗なフォームを意識しましょう。
・夏場は直射日光を避ける
夏場のランニングは熱中症や日射病や熱中症に注意が必要です。特にLSDは長い時間運動し続けるので、可能な限り直射日光は避けるようにしましょう。
・無理のない時間・距離設定を
「〇〇さんは120分走っているらしいから、私もそのくらいがんばろう!」となりがちですが、その無理がランニングの習慣化に悪影響を及ぼしている可能性が高いです。慣れてきたら徐々に長くしていけばいいので、自分が可能な範囲で時間・距離設定をしましょう。
そんなLSDには、長い時間のランニングに耐えられるクッション性の高いシューズがおススメです。いくつかピックアップしてご紹介します。