【対談】『GO OUT』編集長・竹下充&スタイリスト・佐々木智之が考える「アーバンアウトドア」ファッショントレンド&コーデ(前編)
フェスやキャンプなど、アウトドア・アクティビティはもはや世代性別問わず、多くの人にとってオフの楽しみ方の定番となっています。そして、近年は街中でアウトドアの要素を取り入れたファッションを見かけることも少なくないでしょう。ただし例えば「都会と自然、シチュエーションによってどういうアイテムを選べばいいの?」と迷ってしまう人もいるかもしれません。そこで今回は、それぞれのファッションをアーバンアウトドアとゴーアウトドアと名付けて、それぞれのファッションの楽しみ方を紹介する企画を前編・後編に分けてお届け。教えてくれるのは、アウトドアファッション雑誌『GO OUT』編集長の竹下充さんと、その『GO OUT』を始め、メンズファッション誌を中心に活動するスタイリストの佐々木智之さんです。
アウトドアアイテムを“やんわり”取り入れるのがオシャレ
──“アーバンアウトドア”という言葉について、お二人はどのようなイメージをお持ちですか?
竹下 どれくらいのアイテムをチョイスするかの度合いは、人それぞれだと思います。今すぐ山に登れるような格好をして街で遊びたい人もいれば、ゴアテックス素材のコートを革靴に合わせている人もいるし、どちらもアーバンアウトドアですよね。でも、都会のファッションに寄せるのであれば、アウトドアでも着られる素材感のアイテムを取り入れたファッションで、「これ実はね……」ぐらいにやんわり取り入れるのが今っぽいのかもしれません。
──アウトドアファッションが日本で流行り始めたころは、どんな特徴がありましたか?
竹下 20年ぐらい前のアウトドアファッションは、『ダナー(DANNER)』を履いてグラミチ着て、グレゴリー背負ってカブー被る……みたいのが定番でした。当時はけっこうゴリゴリというか、アメリカのトレイルを歩く人と同じような格好で都会にいるのがカッコイイみたいな時代だったんです。
佐々木 僕が中学生ぐらいの時にはカブーとかは流行っていたし、あとは90’sのACGとか。アメリカのラッパーとかがノースフェイスのダウンジャケット着ていて、僕はそういったのを見て育ってきました。そういうのがしばらく続いて、最近になって黒のアーバンっぽいアイテムを取り入れたファッションが出てきて、アーバンアウトドアと呼ばれるようになった気がします。
竹下 最近はいろいろなブランドが、ぱっと見はアウトドアっぽくないステンカラーでゴアテックスのコートや、速乾素材のジャケットとパンツのセットアップとかを作ったりし始めた。“アウトドアとバレなそうなアウトドア”みたいなアイテムが増えてきた印象はあります。
──数年前から ノームコアやアスレジャーといった言葉を見るようになりましたが、そういったシーンレスなファッションの流れにアーバンアウトドアもあるのでしょうか?
佐々木 僕自身、ノームコアやアスレジャーをあまり意識したことは無いですが、アスレジャーはスウェットパンツなどを取り入れたオシャレなジム帰りのようなファッションだとしたら、アーバンアウトドアは山から戻ってきた人がそのまま遊べるようなイメージでしょうか。
竹下 もしくそのままフェスに行けるような人が、アーバンアウトドアなのかもしれません。
普段使いでも重宝するアウトドアアイテムの機能性や素材感
──最近のアウトドアファッションで、トレンドのアイテムはありますか?
佐々木 例えばポケットがいっぱい付いているベストとか。どこのブランドも出してますね
竹下 あと僕が今日持ってきたX-PAC素材のポーターのバッグとかもオススメです。
──素材感はアーバンアウトドアにとって重要なポイントの一つですか?
竹下 そもそもそういうアイテムは使ってみたら丈夫だし、あとTシャツとかはアウトドア仕様のものを着たらすごく楽なんですよね。
佐々木 このTシャツもそうですが、メリノウールって今すごく流行っていて。一度この感覚を味わったら、毎日着ちゃいます。
竹下 すぐ乾くし、臭わないし。それに汗をかいたときに汗染みにならないんですよね。
──それは普段使いでも大きな違いですね。あとアウトドアと一口に言っても、キャンプに行くのとフェスに行くのでは、チョイスするアイテムは違うと思うのですが。
竹下 そうですね、アウトドアで何をするかによって全然違います。アウトドアは何だかんだ言って過酷ですし、ふざけているとツライ思いをするのは自分なので。カッコつけてばかりいると「コレやめておけば良かったな……」ということもあるので、あんまりふざけられないというか。そういうときは理に適ったハイスペックなアイテムを選ぶといいと思います。
佐々木 でもフェスの場合でも、そこまで考えなきゃいけないのはフジロックぐらいじゃないでしょうか。ただし、フジロックですら今はアーバン寄りのファッションが増えている気がします。
竹下 昔のフジロックが雨降って大変だったっていうイメージから、やたらとアウトドアのアイテムを着て行く人が多い時期もあったと思いますが、やっぱりフジロックは社交の場と言いますか、ファッション含めみんながスタイルを見せ合う場でもあるので、カッコつけなきゃいけないじゃないですか。そういう時にみんなゴアテックスを着ていたらカッコつかない。なのであえてそこでマッキントッシュを着てくる人がいたりとか、「バンドTだけ着るぜ!」っていう人がいたりするのも面白かったりしますよね。
アーバンアウトドアコーデ&ダナーのシューズでスタイリング
竹下さんのアーバンアウトドア・スタイリング
シャツ /マウンテンリサーチ
Tシャツ/スネークポルノウィール
パンツ/グラミチ
シューズ/ダナー×フラワーマウンテン
キャップ/サンオブザチーズ
バッグ/ポーター
時計/カシオGショック
ダナーのお問い合わせ先
スタンプタウン渋谷店 tel:03-3477-0658
https://www.stumptownjapan.com/
竹下さん着用シューズ:N.V0LCANO(ダナー×フラワーマウンテン)
自然の造形美を表現し、手作業による仕上げを美学とする“フラワーマウンテン”。海外の人気セレクトショップからも注目を浴びるこのブランドと、ダナーが初めてコラボレーションしたシューズが<N.VOLCANO>です。ダナーのマウンテンブーツからインスピレーションを受け、そこにフラワーマウンテンのテイストを落とし込んだミッドカットスニーカーは、山並みのように複雑に重なり合って構成されるデザインと、滑らかに曲線を描くステッチラインが魅力。有機的なディテールは自然を感じさせつつも、洗練されたフォルムが都会にもフィットします。
竹下さんのスタイリングのテーマは「機能素材を街で着る」。パンツはNASAのために開発されたアウトラスト素材のグラミチをチョイスしています。「アウトラスト素材は熱くなったら冷たくなって、冷たくなったら熱くなるという、常に温度を一定に保ってくれる優れものです」と語るパンツはストレッチ性も抜群で、なおかつカラーはアウトドア過ぎない黒に。カバンのポーターは、通常ではナイロン素材に多いX-PAC加工をコットンダックに施すことで強度をUPした逸品。また、オーガニックコットンやリサイクル素材のプラナのアイテムによるサスティナブルを意識した着こなしもオススメしています。
Tシャツ/プラナ
ショートパンツ スーパーモジョショーツ/プラナ
シャツ/テイラースティッチ
シューズ/ダナー
プラナのお問い合わせ先
コロンビアスポーツウェアジャパン tel:0120-193-803
https://jp.prana.com
佐々木さんのアーバンアウトドア・スタイリング
Tシャツ/ブラウン バイ ツータックス
パンツ/リップラップ
シューズ/ダナー
バックパック/ミステリーランチ
時計/シチズン
佐々木さん着用シューズ:リッジトレイナープラス(ダナー)
全米で広く支持されるハイキングシューズと同様のスペックを搭載し、ダナーが新たな表現として挑戦する、その名もまさに“URBAN OUTDOOR”シューズが<リッジトレーナープラス>。特徴的なレーストゥートゥーのデザインが高いフィット感を実現し、トレイルランニング用に開発されたvibram®ソールはクッション性に優れ、濡れた路面で滑りにくさを発揮します。さらに、セパレートタイプのかかとは特に下り坂で効果を実感。アウトドアの要素を備えながらも、都会で履くことも想定した高い機能性を誇る、ダナーの新定番となる軽量機能シューズです。
今回着用した私物のダナーをメインにスタイリング。加えて、過酷な状況にも耐えるスペックが自慢のミステリーランチのバックパックがポイントに。「ダナーを履いて、ミステリーランチのバックパックを背負っただけで、らしさは出るのかなと。カラーはいつも黒が多いので、今回のスタイリングでもそれを貫きました。個人的には、山に行くときに電車に乗っても浮かないファッションを常日頃から意識しています」。着用したダナーのカラーは黒でしたが、“外し”としてビビッドなカラーをチョイスするのもアリとのこと。別パターンのスタイリングでは、今まさに流行中のベストを取り入れたファッションを紹介してくれました。
シャツ/ブラウン バイ ツータックス
ベスト/コロンビア
ショーツ/アイスブレーカー
シューズ/ダナー
今回のスタイリングでは、お二人ともダナーのシューズを着用(フォトシューティングで着用したシューズは私物)。さらに、アウトドアの要素を備えながらも街で履くことも想定した軽量機能シューズで、特徴的なレーストゥートゥーのデザインが高いフィット感を誇るダナー<リッジ ランナー プラス(RIDGE RUNNER PLUS)>や、どんな天候下でも最上級のグリップ力を発揮するMegagripを使用するとともに、軽量化とサポート性を追求したダナー<トレイル 2650(TRAIL 2650)>なども、今回のようなアーバンアウトドアのスタイリングに合うのでオススメです。
アイテムは落ち着いたカラー、スペックや素材感に注目
お二人のお話からは「アーバンアウトドアのファッションに決まりはない」という前提はありつつも、30代以降は落ち着いたカラーのアイテムを取り入れたり、スペックや素材感に特徴のあるアイテムをチョイスしたりする方が、近年のアーバンアウトドアらしいファッションと言えるのかもしれません。後編では引き続きお二人に、自身のアウトドア観を元にゴーアウトドアのファッションのポイントや、オススメコーデを紹介してもらいます。
text by ラスカル(NaNo. Works)
photo by Kohichi Ogasahara