名古屋ダイヤモンドドルフィンズ張本天傑選手のスニーカー論<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.34>
白シャツとラフなネイビーのパンツ、裾から見える足首はきっちり引き締まっていてセクシー。197cmの身長だから、こんなシンプルな着こなしがサマになるのだというお手本スタイルで取材チームの前にあらわれた名古屋ダイヤモンドドルフィンズの張本天傑(はりもとてんけつ)選手。張本選手はBリーガーの中でも大のスニーカー好きとして知られています。
青山学院大学在学中、当時NBLのアーリーエントリーでトヨタ自動車アルバルク東京(現アルバルク東京)に入団し、2016年名古屋ダイヤモンドドルフィンズに移籍。今シーズン含め3季連続でキャプテンを務めています。オールラウンダーとして梶山信吾ヘッドコーチからの信頼が厚く、日本代表候補にも定着している張本選手。コート上ではクールなイメージがありますが、スニーカーの話になると会話が止まらない……! 今回は、筋金入りのスニーカー好きBリーガーの話をたっぷり届けます。
張本天傑選手と竹内譲次選手の密な関係
――昨晩、今日の取材で履いてくるスニーカーを『ナイキ(NIKE)』から『アディダス(adidas)』に変更したいと連絡をもらいました。ナイキだったら何を履いてきたのでしょうか?
「OFF-WHITEとコラボしたハイパーダンクか、ジョーダン1か11。それで迷っていたんですが、ナイキは他の選手も履いていると思ってアディダスに変えたんです」
――アディダスのイージーブースト<YEEZY BOOST>を履いてきてくれました。イージーブーストを選んだ理由は?
「気分です。僕の家にはスニーカーの部屋があって、そこでスニーカーを見てパッと決めました。そういえば、イージーブーストは(アルバルク東京・竹内)譲次さんにプレゼントしましたよ。急に譲次さんから連絡が来て、これ(イージーブースト)買っといてって言われたんすよ。その時期ちょうど譲次さんの誕生日が近かったから、だったらプレゼントしますということであげました」
――張本選手と譲次選手は年齢が7歳離れていますが、仲が良いんですね。
「何で仲がいいんだろう……うーん、単に仲良しなんですよ。昨日も譲次さんから電話がかかってきましたよ。出なかったですが(笑)」
――その電話は出ましょうよ!
「僕もいろいろ忙しいんで(笑)。僕ね、今日の服装はバーバリーのスポーティーなパーカーとスウェットで上下揃えようかなって思ったんですよ。でもふと、譲次さんがインタビューでバーバリーを着ていたのを思い出してやめたんです。危なかった(笑)、譲次さんと丸かぶりになるところでした」
――今日はトップスがZARAで、ボトムスがアルマーニです。張本選手は事前アンケートの好きなブランドでZARA・アルマーニ・ゴヤール・バーバリーを挙げました。どれもきれいめのブランドですが、きれいのテイストの幅が広いなと思いました。
「この身長(197cm)に合う服って本当に無いのですが、アルマーニは大きなサイズがあるんです。竹内兄弟がアルマーニを着ていて、僕は譲次さんにアルマーニの服をもらっていました。ファッションに気をつかうようになったのは社会人になってからです。アルバルクの最初の頃は寮に入っていて、隣の部屋が(田中)大貴だったんですよ。大貴は当時からけっこうおしゃれで、一緒に出かけるときに僕もちょっとおしゃれしないといけないなと思ったのがきっかけです。好きなファッションはシンプルで清潔感があるもの、着ていて楽なアイテムです」
90足のスニーカーは、どうやって履き分ける?
――これまでお話を聞いてきたBリーガーの皆さんから、張本選手のスニーカー好きはすごいと聞いていました。そもそもスニーカーにハマったきっかけはなんですか?
「小学生の頃からスニーカーが好きで、父によく買ってもらっていたんです。中学・高校とスニーカーを集めていたんですが、サイズが小さくなって履けなくなった。大学生のときはお金がなくて買えなくて、社会人になったときに学生時代に欲しかったスニーカーを1足買ってみようと思って原宿に行ったんです」
「原宿を歩いていたらスニーカーショップを見つけて、学生時代に欲しかったエアジョーダンとスラムダンクがコラボしたスニーカーを買ったんです。僕はマイケル・ジョーダンが好きで、そこからジョーダンシリーズの歴史を調べるようになりました。『シャッタード・バックボード』はジョーダンがバックボードを壊したときに履いていたバッシュだとか、2度目の復帰をしたときに履いていたバッシュはエアジョーダン17とか……そういうスニーカーが持っている背景を僕は面白いと思うんです。僕は、ジョーダンシリーズはほとんど持っています」
――張本選手は、スニーカーを何足持っているのですか? 持っているスニーカーはどう履き分けているのでしょうか?
「全部で90足弱持っています。エアジョーダン1でも前の部分が赤か黒で違うとか、少しのモデル違いで持っています。シチュエーションで履き分けるというよりも僕の性格上、全部揃えておきたいんです。もちろん集めるだけでなく履きますよ。たとえば、タイトデニムを履くときはエアジョーダン1(シャッタード)バックボードのオレンジが合うと思う。ゆるいシルエットのデニムなら、エアジョーダン1か11の赤黒系を合わせます」
――張本選手が、これからスニーカーを知っていこうとする“スニーカー初心者”の導入に選ぶなら何にしますか?
「王道はエアジョーダン1じゃないですか。ジョーダン1はシンプルでかっこいいし、色の選択肢も多いからどんな服でも合わせやすいと思います。まずは気になるジョーダン1を1足手に入れてみたらどうでしょう? そこからスニーカーがもっと好きになれると思います」
Bリーガーで持っているのは一人だけ?! 張本選手とびきりの自慢シューズは?
――自慢のシューズは、エアジョーダン6のスラムダンクコラボで井上雄彦先生のサイン付きと聞きました。
「今日はそのスニーカーを持ってきました。たぶん、Bリーガーでも僕しか持っていないと思います」
――これはすごいですね! 両足にサインと桜木花道のイラストが描いてある!
「井上先生と対談をさせてもらったときに、他の選手は色紙を持って行っていたのですが、僕はスニーカーを持っていこうと思って、このジョーダン6のスラムダンクコラボを海外から取り寄せたんです。先生に見せたら『よくこんなスニーカーが手に入ったね』と言っていました。これはもう、僕の宝物ですね。履くことはないと思います。ずっと見ています」
――他に、張本選手の思い入れが強いスニーカーはありますか?
「エアフォースワンとG-DRAGONがコラボしたスニーカーですね。最初は真っ黒のエアフォースワンなんだけど、履いていくうちに外側の黒い部分が剥がれてきて、全部剥がれると花の模様が出てくるんです。自然に剥がすなら2~3年履いて皮を柔らかくするんだけど、僕はきれいに剥がしたいんです。だから、家でドライヤーを当ててピンセットで少しずつ黒い部分を剥いでいったんです。1日3時間くらいやってもほんのちょっとしか剥がれなくて、今は右足だけ少しずつ花柄を出しています」
――張本選手が家で粛々とそんな作業をしているなんて……その姿を想像するとチャーミングです! 張本選手が一番多く履いているのはなんですか?
「細かいけれど、けっこう面白い作業なんですよ(笑)。一番よく履いているのは『アシックス(asics)』のサンダルかな。スニーカーじゃないけれど(笑)。実用となれば、僕はバッシュがアシックスなので私服のときもアシックスをよく履きます。鬼塚さん(※アシックス創業者の鬼塚喜八郎)生誕100周年記念モデルのオニツカタイガーのヒマワリデザインスニーカーが好きでよく履いています」
張本選手は、白いバッシュが似合わない?
――張本選手は試合ではアシックスのインベイド ノヴァ<INVADE NOVA>を履いています。これを選んでいる理由は?
「僕が以前履いていたモデルにベルトがついたもので、クッション性が高くて足にフィットするから。僕がバッシュで大切にするのは、最初にフィット感です。僕は足の横幅が広いからあまりにタイトだと足が痛くなるので横幅がフィットするかどうかを確認します。その次にクッション性、グリップ力と通気性を見ています」
――張本選手史上、最高のバッシュはなんですか?
「アシックスのノヴァ サージ<NOVA SURGE>ですね。今でも練習ではずっと履いていて、気分次第で試合でも履いています。4色くらいあって、試合では黒・黄色・紺を履いています」
――練習では白バッシュを履くのに、試合では履かないのですか?
「前に、ファンの方に『白が似合わない。中学生みたいだ』と言われたんです(笑)。そう言われてからは、試合で白いバッシュは履いていないです」
最強補強をした名古屋D。張本選手、3季目のキャプテン観は?
――今シーズンの名古屋Dは、齋藤拓実選手、ジェフ・エアーズ選手、レオ・ライオンズ選手、狩野祐介選手と強気の選手補強をしました。強力なメンバーが揃いましたが、チーム構成を聞いたとき張本選手はどう思いましたか?
「いよいよ優勝できるメンバーが揃ったなと思いました。今シーズンは本当に上に行かないといけない。こんなチャンスはもう無いかもしれないから、いつもより気合が入っています。いつも以上に声を出して、コートでもベンチでもコミュニケーションを取ることが増えています」
――それはキャプテンとしての振る舞いですか?
「キャプテンとしてよりも、いち選手としてチームをより良くしていこうという意識です。キャプテンとしてはどうだろう? 逆に副キャプテンの狩野選手に僕がケアされているほうかもしれない(笑)。狩野選手のほうがキャプテンぽいかも。僕は“キャプテンだから”といったことはせず、自分のやるべきことをしっかりやらないといけないと思っています」
――側から見ていると、“キャプテン・張本選手”は名古屋Dに定着しているように見えます。
「僕がやらなきゃ、このチームは他にキャプテンに向いている人がおらん(笑)。みんな個性が強いんで、逆に僕がキャプテンをやることでバランスが取れているんだと思います。僕は、個性の強いメンバーたちに気をつかえるから」
――気をつかうことに、張本選手はストレスを感じないのですか?
「全く、そういうストレスは無いですね」
――やっぱり、張本選手はキャプテンに向いているのだと思います(笑)。そこの、人によってはストレスを抱えそうなことを流せるのはすてきなことで、そもそも張本選手はそう振る舞える明るい人だと感じます。その性格はどこからきているのでしょう?
「以前、実家が料理屋さんをやっていたんです。親は、人にごはんを食べさせて美味しいって言われるのが好きな人でした。僕もそうなんです。家に友だちや後輩を呼んで、ごはんをつくってあげる。みんなが美味しいって食べてくれる。それだけで僕はうれしい。育った環境が僕をそうさせるんです。サービス精神があるってことですかね? チームでもその精神がそのまま出ているのだと思います」
取材・文:石川歩
写真:藤原萌
取材・写真協力:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ