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「『突き抜けろよ』に勇気をもらった」三遠ネオフェニックス山本柊輔選手のアスリート論<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.35>

2020.11.30

今シーズンから三遠ネオフェニックス選手兼スキルデベロップメントコーチとして入団した山本柊輔(やまもとしゅうすけ)選手。大学バスケの強豪校である筑波大学に一般受験で入学し、大学卒業後にトライアウトで山形ワイヴァンズ(現B2リーグ)に入団、その後レバンガ北海道に移籍して1シーズンを過ごしたのち、2019年9月にカナダリーグ挑戦のため渡米。帰国後はアルバルク東京に約2ヶ月在籍して退団、約半年間の“浪人期間”を経て三遠ネオフェニックスに入団しました。

今回は卒業や退団の節目でバスケ選手としてチャレンジを繰り返してきた山本選手に、靴と服の選びかた、“メンタルモンスター”になるまでの話、バスケ以外の活動に取り組む理由について話を聞きました。

「『突き抜けろよ』に勇気をもらった」三遠ネオフェニックス山本柊輔選手のアスリート論<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.35>

スタンスミスは「白スニーカーの王道」

――今日の靴はアディダスのスタンスミスです。これを選んだ理由は?

「僕はシンプルな白のスニーカーが好きで、これの他に『ナイキ(NIKE)』のエアフォース1<AIR FORCE 1>やエアマックス95<AIR MAX 95>の白を持っているんですが、白いスニーカーの王道はスタンスミス<STAN SMITH>だと思って履いてきました。『アディダス(adidas)』はデザインがカッコ良くて、コーディネートのワンポイントになるところが良いです」

「『突き抜けろよ』に勇気をもらった」三遠ネオフェニックス山本柊輔選手のアスリート論<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.35>

――秋らしい服装で来ていただきました。胸の筋肉がすごいです!

「体型的にシャツを着るとパツパツになるので、秋っぽい色のセーターにしました。これもけっこう胸のあたりがパツパツですが(笑)。僕はきれいめの服が好きで、トータルで色数を増やさないように気をつけています」

――トップスがトゥモローランド、パンツがユナイテッドアローズです。これまでハイブランドかファストファッションを着る選手が多かったので、馴染みのある日本のブランドが新鮮です。

「バスケ選手というとジャージで練習の往復をしているイメージがあると思うのですが、僕は私服でスタバに行って自分の時間を過ごすのが好きです。その時間はスポーツ選手じゃない自分になれる。この服装をしている理由の一つはそこにありますね」

「『突き抜けろよ』に勇気をもらった」三遠ネオフェニックス山本柊輔選手のアスリート論<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.35>

出る杭は打たれるけれど出過ぎた杭なら打たれない

――山本選手はYouTubenoteで情報発信をしたり、自身のブランド『Playful!』を立ち上げるなど、バスケ以外にもアグレッシブに活動されています。“スポーツ選手じゃない自分”の時間の使い方が、他の選手とは違うように感じます。

「Bリーグを見ていると、新しいことをばんばん始める人があまりいないイメージがあります。僕の中では岡田優介さんがそういうことをする人なのですが(※1)、いろんな選手と話すと『岡田さんは特別だから』という雰囲気を感じるんです。でも僕はバスケ選手として上に行くのはもちろんですが、他のことも両立してどんどんチャレンジして自分を変えていきたいと思うから、やりたいことはやろうという気持ちでいます。自分のブランドを持つのもYouTubeも、やっていることの全てで相乗効果を生み出せば選手としてより高みにいけます」  

「『突き抜けろよ』に勇気をもらった」三遠ネオフェニックス山本柊輔選手のアスリート論<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.35>

――もう2020年ですし、この質問自体が古いかもしれませんが……。『バスケ選手なら練習をしろ』という意見は出てきませんか?

「うーん……もしあっても、そういう意見は見ないようにしています。元プロサッカー選手の那須大亮さんと元プロ野球選手の里崎智也さんが対談している動画を見たのですが、里崎さんが『どう思われたって関係ない』『言ってくる人が僕にご飯をたべさせてくれるわけではない』と言っていて、かっこいいなと思いました。僕も自分が大切にしたい人を大切にしていきたい、そういう気持ちでやっています」

「『突き抜けろよ』に勇気をもらった」三遠ネオフェニックス山本柊輔選手のアスリート論<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.35>

――どの業界でも、出る杭は打たれるけれど出過ぎた杭なら打たれないというのはあるかもしれません。

「本当にそうですね。(レバンガ)北海道にいたとき松島良豪さん※2)と仲良くなったのですが、まつさんも出過ぎた杭だと思うんです(笑)。そのまつさんから『突き抜けろよ』と言われて勇気づけられました。突き抜けたらこっちのもんだと思うし、そういう存在として周りに示していけるようにがんばりたいです。サッカーでは早くから競技外でいろんなことをやっている選手がいて、いずれBリーグもそうなっていくと思います。僕はいろんな場所で自分の力を発揮していきたいと思います」

※1 岡田優介選手 B2リーグアースフレンズ東京Z所属のバスケットボール選手。公認会計士・3×3チームオーナー・会社経営者などバスケ選手以外にも複数の職業を持っている

※2 松島良豪さん 2019-20シーズンにレバンガ北海道で現役を引退した元プロバスケ選手。『劇団松島』と呼ばれた試合前のパフォーマンスでも有名。現国士舘大学アシスタントコーチ

選手とスキルデベロップメントコーチ、両立の方法は?

――山本選手は試合ではナイキのカイリー6<KYRIE 6>を履いています。これを履いている理由は?

「スピードが出て、反発力が強くてふんばりが効くのがいいんです。そういうバッシュはソールが薄いものが多いのですが、カイリー6はソールに厚みがあってバンッと蹴っても足の裏を痛めない。かかとまわりがしっかりしていて、ガードの動きにしっかり付いてきてくれるバッシュです」

「『突き抜けろよ』に勇気をもらった」三遠ネオフェニックス山本柊輔選手のアスリート論<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.35>

©San-En NeoPhoenix

――小学校1年生からバスケをしている山本選手が選ぶ、自分史上最高のバッシュは何ですか?

「ナイキのハイパーダンク2016ローカット<HYPERDUNK 2016 LOW>です。僕の周りでもあれは伝説のシューズと言われていて、生産が終わってからもストックして履いていました。圧倒的に動きについてくるキレが良くて、サイドの切り返しがとてもいいバッシュでした」

――今シーズンの山本選手は、選手とスキルデベロップメントコーチを兼務しています。両立するために気をつけていることはなんですか?

切替えを大事にしています。選手としては上を目指しながら、一歩引いた目線でコーチとして選手一人一人の良さを引き出すために自分は何ができるのか考えながらやっています。全体練習では選手としてチームメイトと競いながら、練習外では若手選手にアドバイスをしたり、中堅選手・ベテラン選手の良さを引き出すためのパスやディフェンスに入ります」

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――今シーズンの三遠は寺園脩斗選手、ネナド・ミリェノヴィッチ選手、鈴木達也選手と山本選手含めて4人のポイントガード(PG)がいて、選手としてはプレータイムを奪い合うライバルだと思います。選手とスキルデベロップメントコーチの切り替えは話す以上に難しそうです。

チームが勝つことが一番大事で、そのために今シーズンはPGが4人いるわけです。理想論かもしれないけれど、僕が常に考えるようにしているのは4人全員が良くなっていけばおのずとチームのプラスになるということです。自分が試合に出て活躍したい思いはもちろんあるけれど、周りの選手が成長すれば僕はそれを追い越そうとしてがんばれる。それが、自分の成長につながると思っています」

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©San-En NeoPhoenix

“メンタルモンスター”に学ぶ、ポジティブシンキング

――山本選手は2019-20シーズンにアルバルク東京を退団した後、どのチームにも所属しない期間が続きました。プロバスケ選手としては、プレーするチームがない状態はキツそうです。

「最初の1ヶ月はしんどかったですね。本当はカナダに行く予定を組んでいたのですがそれがなくなって、地元の静岡にいました。モチベーションやエネルギーを当てる場所がないまま体育館で自主練をするというのはキツかったです」

――結果としてその空いた期間にYouTube・noteの発信や自分のブランドの準備をするなど、時間をうまく使いました。山本選手にはタダでは起き上がらないメンタルの強さを感じます。

「『突き抜けろよ』に勇気をもらった」三遠ネオフェニックス山本柊輔選手のアスリート論<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.35>

「もとはメンタルの波が激しい選手だったんです。大学のときにプレッシャーに耐えられず試合に出ることが怖くなって、体に症状が出てメンタルブレイクした。そのときメンタルについて勉強をして、マイナスの感情には一人称はないと思ったんです。たとえば、あいつはライバルだからダメになれと思えば、それは巡って自分もダメになれと言うことと同じ。それが分かってからは、全員が良くなるように接することで自分も良くなると考えられるようになりました」

――日々、困ったことはさまざまに起きます。そういうとき読者が真似できる山本選手の考え方を教えてください。

「僕なりのポジティブに変える方程式があって、ダメだったことや上手くいかなかったことは全て自分のストーリーにできると考えるんです。どんなことも、あれを乗り越えたから今こうなったと言うための前フリにする。そうすると失敗というものはなくて、上手くいかなかったらネタになるし、成功したら“よっしゃー!”と思う。そういうふうに考えたらいいと思います」

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トップス:トゥモローランド
パンツ:ユナイテッドアローズ
スニーカー:アディダス

取材・文:石川歩
写真:藤原萌
取材・写真協力:三遠ネオフェニックス