プーマ『スウェード』の物語【プーマ担当者がスニーカーを語る】
スニーカーの数だけ物語がある。また、そのスニーカーを履く人のこだわりが加わると、さらに物語は奥行きあるものになります。
普段から多くのスニーカーに触れている各メーカーの担当者に、お気に入りのスニーカーを聞くと、思いがけないエピソードがこぼれてきました。珠玉のスニーカー、今回は『プーマ(PUMA)』のスウェード<SUEDE>です。
プーマのマーケティング本部ブランドエヴァンジェリスト・野崎兵輔さんが、不変の美しさが魅力のプーマ定番モデルの一つを語ってくれました。
プーマ マーケティング本部ブランドエヴァンジェリスト
野崎兵輔さん
ストリートでの呼称から名付けられたプーマ『スウェード』
――『スウェード』はどんなスニーカーですか?
スウェードのルーツは、バスケットボールシューズとして開発された『クライド<CLYDE>』です。(CLYDEとは、1967年~80年に米国のプロ・バスケットボールプレーヤーとして活躍したウォルト・フレイジャーのニックネーム。プーマクラックは、更にそのOGという位置付け)
プーマは、1979年にウォルト・“クライド”・フレイジャーとの契約が終了すると、クライドの刻印を外した仕様で継続販売を行います。クライドはオン・コートだけでなく、ストリートでも人気があった為、このシューズの存続を訴える声が上がったことがその理由です。
その当時のプロダクトネームは『PUMA』。プーマの『PUMA』……。このシューズを愛用していた人たちも、きっと違和感があったと思います。
そんな中で、このシューズを「プーマのスウェードの靴」と呼ぶ人たちが現れはじめました。実は、『プーマ スウェード(現在はスウェード クラシックという商品名)』というプロダクトネームは、ストリートでの呼称から名付けられているのです。
スウェードは、1979年から80年代中期までは、アッパーとソールを接着剤で接合するセメント製法で作られていました。80年代中期以降は、アッパーとソールの接合強度を上げる為にサイドマッケイ製法にアップデートされています。このタフな仕様にシンプルなデザインのシューズは、世界中から販売のリクエストを受けるようになります。ニーズが増えたことによりヨーロッパの生産だけでは間に合わなくなり、アジアにも生産の拠点を設けることになりました。そして、1990年に入るとスウェードの生産はアジアで行われるように。
1990年代、スウェードがストリートユースのシューズとして生まれ変わる為に、細身でスタイリッシュなラスト(木型)が用いられることになったのです。世界中で最も多くの方々に愛された1990年代のシルエットを再現したのが、スウェード クラシック XXIです。
不変の美しさ。トレンドが変化しても、常にストリートにある
――譲れないお気に入りのポイントは?
時代に合わせてアップデートは行われていますが、やはり不変の美しさです。スニーカーのトレンドが変わっても、常にストリートに存在していることも魅力です。
シューレースを交換する楽しみ。アッパーの色に合わせるのか、フォームストリップに合わせるのか、全く違う色を持ってくるのか。シューレースは細いモノなのか、太いモノなのか。シンプルだけど、自分の個性が発揮出来るんです。洋服の色、プリントの色など、コーディネートする楽しみを教えてくれるシューズであることです。
同じカラーリングは二度と作らない
――『スウェード』とのストーリーを教えてください。
私が初めて手に入れたのが、1990年代に売られていたプーマ スウェードです。いわゆる当時の現行品です。
フォレスト グリーンに白いラインのプーマ スウェード。当時(1991、92年頃)、日本ではプーマ スウェードの展開が無く、並行輸入品を購入しました。シンプルな2トーンのシューズを、大好きな英国のミュージシャンたちが格好良く履きこなしていたことが購入の動機です。
色々なシューズを履きますが、1990年代前半に並行品を手に入れてから今までずっと、自分の靴棚にあるシューズはプーマ スウェードだけです。足入れの頻度は変わることがあっても、常に手元にあるシューズ。定番の5カラー(Puma Black-Puma White、High Risk Red-Puma White、Peacoat-Puma White、Steel Gray-Puma White、Puma Black-Puma Black)は、履き潰したら買い替えられるのも魅力。
またシーズナル カラーについては、同じカラーリングは二度と作らないという拘りも格好良いと思います。(同じようなカラーはリリースされていますが、パントーンのカラーを変えています)普通だけど、実はコレクタブルなアイテム。スウェードは、きっとこれからも自分の近くに居続けるシューズだと思っています。