【スニーカー偏愛記】完成されたカルチャー。ネイビーブレザー豪徳寺・ 店主小林英樹が愛するナイキ『ダンク LOW レトロ』と『エアフォース1’07』
スニーカーとは、偏愛だ。たとえ同じモデルでも、抱く思いはそれぞれ。どこに刺さり沼落ちしたのか、履けばほのかに蘇るあの淡い思い出……。今回偏愛を語ってもらうのは、「ポロラルフローレン」や「イタリアのカシミアブランド」などを経て、世田谷区豪徳寺にコンセプトショップ「ネイビーブレザー豪徳寺」をオープンさせた、店主小林英樹さん。彼がピックアップしたのは、『ナイキ(NIKE)』の[ダンク LOW レトロ]と[エアフォース1 ’07]。
ナイキ『ダンク LOW レトロ』×小林英樹
「[ダンク]は、アメリカ・フロリダにホームステイをしていた1999年当時に、初めて手にしました。復刻の紺×黄色がリリースされたばかりで、ダンクがフォーカスされて店に並んでいて。一目惚れでした。それからというもの、自分のなかでの定番です。リリースされるたびに、自分の欲しいタイミングとリンクするたびに、購入しています。ダンクは、流行り廃り関係なく、履けるスニーカー。2年に1度ぐらいは『ダンクの気分』がくるので、これまで10足以上は買い替えています」
「もっと遡ると、僕は野球少年だったんですけど、1995年当時の日本のプロ野球選手が試合でナイキのスパイクを履くようになって、それでナイキに興味を持つように。『ザ・アメリカ』な感じに、憧れを抱いていました」
「[エアフォース1]もそうなんですけど、僕が学生のときから、普通にスニーカー屋さんに並んでいたモデル。それが、今でも愛されている。流行り廃りがないんですよね。トラッド靴で例えるならコインローファーのような、ベーシックな一足。靴箱に欠かせない存在です」
「ダンクのよさは『ずっと定番であり続ける』という、その存在価値。服も、選ばない。履き心地でいうと、[SB]なんかはクッションがあって履きやすいんですけど、このダンクは、履き心地というよりはシルエットとデザイン。当時のアメリカらしさ。『ダンクに敬意を示して履く』『バスケットに敬意を示して履く』という、カルチャーの一足です。アップデートされたモデルはたくさん出ていますが、やっぱりこれが原点。そこにリスペクトを持って、履きたいです。復刻版が出るということも、シーンからリスペクトされ続けている表れなのだと思います」
「今回組んだコーディネートは、USの高校のバスケ部が部活後にハーフパンツを履いて……というイメージ。カレッジスタイル風に紺ブレザーとスタイリングしました。年配の方がこういうスタイルをしてもカッコいいと思います」
ナイキ『エアフォース1’07』×小林英樹
「エアフォース1との出合いは、もう少し後。18、19歳ぐらいだったかな。ファーストエアフォース1は、オールホワイト。レコード袋を片手にヤンキースCAPを浅くかぶり、渋谷のABCマートで買ったのを記憶しています。ナイキのスニーカーといったら、エアフォース1っていうくらい流行っていて、まわりの友達もみんな履いていましたね。最近は、黒×ホワイトスウッシュも好きで、よく履いています」
「アメリカに行くと、街中でめちゃくちゃかっこいい履き方してる人がいるんですよね。『これが本来の履き方だな』と、再認識させられます。ブルックリンやハーレムのストリートでは急な雨が降ると、スニーカーにさっと買い物のビニール袋をかぶせるのも普通。スニーカーに対しての敬意を感じます。そのパッションこそが、クールです。アメリカだけでなく、ヨーロッパやアジアでも履いている人を見かけるし、やっぱり世界中で選ばれる定番モデルなんだな、つくづくと感じます」
「他のブランドも、昨今とても魅力的に感じます。スニーカーカルチャー自体が今でも好きですが、僕のスニーカー人生はナイキから。エアフォース1のタフな感じと、ダンクのカレッジ色の強い学生っぽい感じが、たまらないですね」
「コーディネートを考えるときは、どの街に行くとか、こういうシーンで着る、履くとか、割と具体的にシチュエーションやテーマを設けています。そうすると、お客さんにも具体的に伝わりやすいんです。僕は常に、プライベートでも向こう1週間ぐらいのクローゼットコーディネートを考えるようにしています。組むときは、まず靴×靴下から。靴を決めてから靴下を合わせて、それからキャップ、パンツ、シャツ、の順ですね」
「豪徳寺はおもしろい」
「前職のアメリカントラッドのブランドでは、主に紺のブレザーを仕事着として着ていたので、店名を『ネイビーブレザー豪徳寺』にしました。お客様よりご要望があれば、紺のブレザーに合うアイテムを選定し、コーディネートでのご提案をさせていただいています。店内の壁のボードには2週間ぐらい先に着られるようなコーディネートを6体、毎日出勤後にスタイリングしています。夏でも紺のブレザーが着られるよう、オリジナルでリネン素材のブレザーもテーラーさんと作っています。オーダーメイドで裏地の色も選べるのですが、おすすめの1着目は、いま僕が着ている『テニスボールカラー』。テニス競技の主審が着るようなイメージで作りました。店で扱うスニーカーは、『なるべく人とかぶらないもの』をセレクトしています」
「店がある豪徳寺は、歴史のある街。トラディショナルな紺のブレザーともマッチしていると思います。伝統は守りつつも自分が好きなカルチャーとミックスしながら、古着・新品問わずアップデートしたスタイルを発信ができるようなお店にしていきたいです。
このロケーションはヨーロッパを訪れた際に、奥まった場所にあるテーラーが素敵で、自分でお店をやるんだったらこんなところでやってみたいと思っていたので、今の場所が気に入っています」
「はじめはスニーカーがきっかけで、ファッションや音楽カルチャーが好きになりました。昔は雑誌の広告にずらりとスニーカーが乗っていて、当時はスマホもなかったので、常にBAGに雑誌を忍ばせて持ち歩いていました(笑)。実家にあった『Boon』などは、いまだに持っています。小学校5年生のときに地元のモールで[トライアックス]を購入してから、30年以上スニーカーと一緒。もう生活の一部ですね。ダンクとエアフォース1は、いつも靴箱にあります。この2足は、時代を超越し、完成されているスニーカーだと思います」