
「クラブで音楽聴いて、ご飯屋さんでワイン飲んで、山にも登れる靴を」Dannerがもつ多様性【SANU・本間貴裕】
英語で交差点を意味する「CROSSROAD」。
様々な分野で一直線に邁進するプレイヤーの「ターニングポイント」を振り返る本企画。そのポイントの以前・以後では何が変わったか。そして、変わらずに足元を支えていた“相棒”とも言えるシューズについて語る。
地元大好き青年がオーストラリアに旅立ち見つけた幸せ
今回登場するのは、Backpackers’ Japan、SANUと世の中をワクワクさせる会社を立ち上げてきた本間貴裕さん。2022年7月にローンチしたシェア型別荘「SANU 2nd Home」は、日本各地で拠点を増やしている真っ最中。共同オーナーというシステムを導入することで、「別荘には憧れるけど、購入と維持が不安」という層も別荘にアプローチしやすくなった。
海に山に、海外にとフットワークが軽い本間さんだが、元々は生まれ育った福島県会津若松市が大好きで、地元の高校教師を目指していたという。
「19歳の時に『竜馬がゆく』を読んで、頭をぶん殴られたような衝撃を受けて。竜馬は物語の中で幕末の世を駆け抜けていくんですけど、最終的には自由に旅をできる社会にしたかったんですよね。そんなに外の世界を見たくて、ハードルがある中でも(仕組みを)変えていくことができるのかと。『竜馬みたいな生き方がしてみたい。縦横無尽に走り回りたい。 福島しか知らない自分はここから出た方がいいかも!』と考えるようになったんですよ」
そうして20歳のときに飛び立った先が、オーストラリアのシドニーだった。
「けれどシドニーの街に着いた瞬間、『俺、何するんだっけ……』と駅前の交差点で立ち尽くしてしまって(笑)。あまりにも僕がぼーっとしていたから、通りがかりの日本人の旅人が『どうしたの?』と声をかけてくれて、ゲストハウスに旅人がたくさんいるから行ってみればと教えてくれたんです。着いたとたん、『ビール飲もうぜ!』とドイツ人の旅人がすぐに話しかけてくれたのが衝撃的でした」
「初めての旅で、最初の3か月くらいは自分の自由を制御できないというか、何をすればいいのかもわからない。自分のためにも誰のためにも役立ってない気がして、日本に帰ろうかなと思った時期もありました。生まれて初めての自由でどうしていいかわからなくて、キョドったんですね(笑)。けれど『あんまり考えすぎず、ただ、今やりたいと思うことをやりゃいいじゃん』と気づいてからは、オーストラリアでできた友だちと路上で音楽をやって稼いだり、ビリヤードやったり、あとは飲んだくれたりしてました」
「オーストラリアでは、20歳というめちゃくちゃ大事な一年間を過ごしました。自分の中では人生の凝縮みたいな時期で、いろいろ悩んだしいろいろやってみたんです。でも、大きな変化はこれといって無かった。。シドニーから日本に帰るタイミングでは『俺、一年も費やして結局何も達成できてないじゃん』とヘコんでいたのですが、一緒に旅した仲間がサプライズで飛行場に別れを言いに来てくれたんですね。それがすごく嬉しくて『あ、人生これでいいや。ハッピーだな』と思えました」
オーストラリアで過ごした日々には悩みも憂いもあったけれど、得るものもあった。
「一年間をたった80万円で過ごして、いくら貧乏になっても生き抜ける自信がついたし、自分が世界の役に立たなくてもアイデンティティを失わない自信もできた(笑)。僕はサーフィンが好きなんですけど、僕がいくら社会で役に立てなくても、貧乏でも、波はいつでも海にたつ。だから僕の精神的なベースには不安がないんです。かなり生きやすいタイプの人間ですね」
「やりたいことを制限しない」ダナーは人生に馴染む靴
本間さんの生きやすさに欠かせない一足が、Danner(ダナー)だ。頑丈な仕事靴として1932年にスタートしたブランドだが、トレッキングや長旅のお供としても人気を博している。
「ダナーはかなり前に上野のABC-MARTで買って、ソールを張り替えながら使ってます。行動を制限しないところが好きですね。靴でも服でも、それに行動を縛られたくないんですよ。スーツを着てるから海に行けないとか、スニーカーだから山登れないとかは嫌。都会でも山でも海でも川でも、全部行ける靴が欲しい(笑)」
「仕事で空き時間があったら、この靴で散歩するのも良い。防水なのでこのまま川に入って釣りもするし、かといってそんなに痛むこともない。登山用じゃないけど登山もするし、スノーブーツも兼ねる。ノルウェーの山歩きにも履いて行って、めっちゃ格好いいフィヨルドを見てきました」
ダナーが本間さんの足の一部のように馴染んでいるのは、自らの手でケアしているから。
「手入れするのが好きで、クリームを塗ったりオイルも定期的に入れてます。リペアすると自分のものになった気がするじゃないですか。開いた穴を自分で塞いだその瞬間から、オリジナルの感覚になる。長く履きたいですし、いつまでも履ける靴が好きです。こいつもあと10年はいけそうですね」
まさに相棒といえる存在のダナーは、仕事でも本間さんの足腰を支えてくれる。
「SANUでは岩手県釜石市で植林をしているんです。木を植える場所は斜面地で、茨もすごくある過酷な状況。ダナーを履いていって木を植えていますけど、安心感が全然違いますよ」
ダナーに対する信頼は絶大のようだ。着こなしにも本間さんのスタイルが表れている。
「都市と自然の両用がいいんです。今日のパンツはめっちゃ履きやすくて過ごしやすいし、動きを邪魔しません。上はカットソー。速乾性なのでこのまま釣りしてもいいくらいで、スノボのインナーにも使える。」
「僕はアウトドアが好きですけど、靴も服もいわゆるアウトドアブランドだけで固めるのはちょっとつまんない感じがしています。『可愛いな』『いい色が入ってるな』とか、ドキドキしたい。クラブにも行けて、美味しいご飯屋さんでワインも飲めて、山登りもできるような靴と服がいい。本当に欲張りです(笑)」
一足で何役もこなせるような靴だから、人生のあらゆる道筋が楽しくなる。制限を設けない靴と服で、本間さんのこれからの未来はどこまでも広がっていきそうだ。