アウトサイダーな印刷会社でありたい。自由な足元にはメレル「モアブ3 シンセティック ゴアテックス」【藤原印刷・藤原隆充】
英語で交差点を意味する「CROSSROAD」。
様々な分野で一直線に邁進するプレイヤーの「ターニングポイント」を振り返る本企画。そのポイントの以前・以後では何が変わったか。そして、変わらずに足元を支えていた“相棒”とも言えるスニーカーについて語る。
ベンチャーでの経験を活かし、ニッチなニーズに挑戦していく
今回、登場するのは、長野で3代続く印刷会社「藤原印刷株式会社(長野県松本市)」の専務取締役・藤原隆充さん。一人一人に寄り添う丁寧かつ斬新なスタイルで、兄弟で印刷業界に新たな息吹を吹き込んでいる。
藤原さんは、自らのキャリアを通じて独自の価値を創造し続けてきた。大学卒業後、すぐに家業を継いだのではなく、フランチャイズのコンサルティングを手がけるベンチャー企業に就職した。次にインターネット広告代理店の新規事業部に勤め、従来の枠にとらわれない挑戦が当たり前の環境で、「差別化への意識」を培ったという。
そして27歳のとき、本社のある長野県松本市へIターンをし、家業の印刷会社を継ぐことを決意。しかしその過程は決して平坦ではなかった。
「長年勤めて歴史と信頼を重んじる母親(2代目社長)と、入社したばかりで新しい挑戦をしたい僕たち兄弟がぶつかり合って、何度も親子喧嘩をしていました。それでも、『ニッチで際立たせる』というベンチャー時代の教訓を活かし、デザイナーやイラストレーターが持つ印刷会社への不満や要望を実現することで、業界の中で特異なポジションが築かれていきました」
「藤原印刷は、頭はサービス業、体は製造業だと思っています」と藤原さんは語る。一般的な製造業は、生産性や稼働率といった効率を重視しますが、藤原印刷ではそれ以上に顧客満足を第一に考えるのだという。
「一番大切なのは、作ったものがお客様に喜ばれるかどうか。そのために、手間のかかる仕事や前例のない案件にも積極的に取り組んでいきます。印刷業界で一社ぐらい、面白おかしくてニッチなことに寄り添ってくれる会社があってもいいんじゃないかと」
藤原印刷が転機を迎えたのは、青山ファーマーズマーケットが野良仕事をテーマにした雑誌を企画したときだ。「1ページごとに異なる紙を使用したい」という要望を受けたが、予算とは合わないことは明らか。そこで本文用紙を16ページごとに紙の種類と順序を変えるプランを弟さんが提案。それが採用され、これまで見たことがないほどバリエーション豊かな仕様の雑誌が完成した。この一冊がSNSを中心に話題となり、デザイナーたちの間で藤原印刷の名が広まったのだ。
「前例のないオーダーも、受けてみて試行錯誤していくうちに経験と知見が溜まっていきます。1回目より2回目の方が、補助輪なしの自転車に乗れたときみたいに確実に速くなる。数を重ねるごとに採算も合っていきます。とにかく打席に立ってバットを振り続けることで、様々なニーズに応えていける筋肉がつくことに気がつきました」
このように藤原印刷は、従来の印刷業界では疎かにされていた「面倒で手間がかかる」マーケットを開拓してきた。
「アウトサイダーであり続けたいと思っています。印刷会社の枠に括られたくないですし、ラベリングされた瞬間、同じ穴の狢と化して思考停止してしまう。自由で柔軟な発想はずっと持ち続けていたいです」
印刷業界はもっとオシャレになっていい
藤原さんが愛用するシューズは、メレル(MERELL)のモアブ3 シンセティック ゴアテックス。
軽量でありながら頑丈で、デザイン性も高いこのシューズは、プライベートから仕事まで幅広い場面で活躍しているそうだ。
「まず真っ黒というカラーリングが気に入っています。ゴアテックス素材なので、雨の日でも足が濡れないですし、通勤時や休日に子どもと遊ぶときにも重宝していますね。あと、本当に軽くて万能です」
藤原さんは男子校育ちでモテることにとりわけ敏感だったため、若い頃からオシャレでいたいという思いが強かったそう。とくに高校時代はファッション雑誌を買い漁りに大きな影響を受けたという。
「印刷業界では、まだまだ保守的な面が強く、営業マンは黒系のスーツにネクタイというフォーマルな服装をするのが一般的です。でも、もっとその人らしいスタイルでいいと思っていて、オシャレもその一環だと思います。きちんと清潔感があれば、自由なスタイルのほうが柔らかくて開けた印象を持ってもらえます。結果的にお客様への印象が良いし、採用にもプラスで働いていいて、自分の考えをきちんと持った人が入ってきてくれるようになりました」
常にアウトサイダーであり続けたいのは、メレルが掲げる「LET’S GET OUTSIDE.-一歩外に出て もっと自然を楽しもう」にも通ずるものを感じて、気に入ってるのだとか。
家業の伝統を重んじつつも、常に挑戦を続ける藤原さん。その姿は、印刷業界の未来を切り開くリーダーとして、同業者や顧客といった多くの人々に希望と情熱を与えている。