“キツキツのシューズの方がパフォーマンス向上”は勘違い? ランニングシューズの選び方
皆さんは、ランニングシューズを選ぶ時に、どのような基準で選んでいますか? 最近では、デザイン性の高いシューズも続々と登場しているので、「迷ってしまう」という声も聞こえてきます。今回はシューズ選びのポイントと、ランナーにとってのシューズの意味について考えてみたいと思います。
これだけは外したくないランニングシューズの選び方
いざ、ランニングシューズを購入するためにお店に行った際に、どのポイントに気をつけて選んでいますか? デザインも気になるところですが、ランナーにとって大切なのはサイズ感。
幼少期に短距離を速く走るために、キツキツのシューズを履いて走った記憶はないでしょうか。サイズがタイトの方が、よりスピードが出て、足の回転が速くなりそうな気がして、フィット感あるシューズを選ぶのです。
この感覚を頼りにランニングシューズを選んではいけません。書籍『一流はなぜ「シューズ」にこだわるのか』の著者・三村仁司さんは、これまで一流ランナーに適切なシューズを提供してきました。瀬古利彦さんをはじめ、森下広一さん、有森裕子さん、高橋尚子さん、野口みずきさん……など、世界を舞台に戦ってきたランナーばかり。他にも、イチローさん、長谷川穂積さん、香川真司さんといった有名スポーツ選手のサポートもしてきました。
キツキツのシューズの方がパフォーマンスが上がる。そう考えるのは皆さんだけではありません。上記の一流選手も同様の感覚を持っているようです。なかでも、サッカー選手の香川真司さんは、繊細なボールタッチができるという理由から、キツめの26.0cmのシューズを選択していました。しかし、三村さんは、最低でも26.5cmのシューズを選ぶべきとアドバイス。キツいシューズを履いていると、常につま先が曲がったままプレーすることになるので、ゲーム後半に足がむくみ、つってしまったり、故障につながります。
バルセロナ国際大会銀メダルの森下広一さんも同様の感覚だったようです。しかし、スポーツ選手は常にシューズを履いて競技をしているので、シューズが故障の原因になっては、継続的にパフォーマンスを上げることはできません。
皆さんも、いざシューズを選ぼうとした時は“ワンサイズ大きめを選ぶ”という選択肢があることも頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
ランナーにとってランニングシューズの存在とは
プロフェッショナル・ランニングコーチの青山剛さんは、これまで多くのランナーを指導してきました。一般ランナーを見ていて、気付いたことがあると自著『仕事ができる人の「走り方」』で明かしています。
ランニングで使用するメインの道具であるシューズが『汚れていたり、傷んでいる人』は、心の準備が整っていない人が多い
多くの一般ランナーがこれに当たるというのです。ランナーにとって重要なアイテムであるシューズに対して無頓着なランナーは、自身のカラダに対してや、トレーニングに対しても鈍感であったりするのです。
カラダの声なき声に気付いてスピードを調整するスポーツでもあるランニング。そんなランニングをする際に『鈍感』であれば、無理をして故障してしまうことも。『鈍感』であることは、このスポーツに不向きと言えるので、もし心当たりがある人は、まずはランニングシューズのメンテナンスに気を使うようにしてみてはいかがでしょうか。せっかく購入した大切なシューズですので、大切に扱ってあげてください。
また、青山さんは大変興味深い指摘もしています。
それは、『敏感』になりすぎてもよくないということです。これは、どういうことでしょう。
丁寧に選んだ自分だけのランニングシューズに対して、『スピードを上げてくれる』『故障を予防してくれる』と、過度に期待してしまう傾向もあるようなのです。
せっかく自分に合ったシューズを買ったのだから、高額なシューズを買ったのだから、自分のパフォーマンスをグッと引き上げてくれるに違いないと思い込んでしまうのです。
そんなランナーに対して、青山さんは冷静に指導をしてくれます。
道具に期待し過ぎてはいけません。シューズが走る訳ではないのです。自分のカラダを鍛え、カラダの状態を整えておくことがファーストプライオリティだということを忘れてはいけません。『シューズは、パフォーマンスを上げるものではなく、下げないもの』そのように私は、シューズ選びの指導をしています
なるほど、自分のカラダを作り上げたり、コンディションを整えることを第一優先にし、そして、故障をしないシューズを選ぶことで、ランニングのレベルが上がるんですね。
ランニングシューズに対しては、『鈍感』でも『敏感』でもいけない。そして、“自分のカラダを鍛え、カラダの状態を整えておくことがファーストプライオリティ”。これらを頭に入れて、ランニングライフを楽しみたいですね。