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バスケは現地で観戦!“心に響く、一発勝負” にハラハラする天皇杯観戦レポート

2019.02.15

残り5秒で1点ビハインド、立ちはだかる激しいディフェンスをくぐり抜けて、ぽーんと放った3ポイントシュートが決まったのは、残り2.6秒のこと。さいたまスーパーアリーナに詰めかけた8,000人超のブースターの絶叫以外に何も聞こえないなかで、冷静にディフェンスに戻る選手たち。終了のブザーがなった瞬間に喜びを爆発させる勝利チームと対照的に、どうにもならない思いを抱えて呆然とする負けたチームの選手たち。

第1クォーターで11-4と大きく点差が開く展開からスタートしたゲームは、このまま一方的な展開では絶対に終わらないという、熱をはらんだ緊張感が会場全体を包んでいました。最後まで一瞬も目が離せない、まさに激戦でオーバータイムにもつれ込んだ試合。さいたまスーパーアリーナに詰めかけたすべてのブースターには、1秒1秒に熱中した豊かな時間が流れました。

今回は、2019年1月13日に開催された、熱狂のなかで幕を閉じた第94回天皇杯決勝戦の模様をレポート。男性でも女性でも、一人でも家族でも楽しめる、壮絶な一戦となりました。

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由緒ある天皇杯で、最高の舞台に上がった2チーム

よく晴れた決勝戦の朝、激戦の舞台になったさいたまスーパーアリーナの周辺は、天皇杯・皇后杯の旗がたなびき、早くから多くのブースターが詰めかけました。屋外には、臨時のバスケットボールリングが設置されて気分を盛り上げます。

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試合開始前、各チームのグッズ売り場には長蛇の列が。Tシャツ・タオル・メガホンなど、応援グッズを身にまとって、全身で大声を出して応援するのはスポーツ観戦の楽しみの一つ。ティップオフ前には、各チームカラーである赤と黄色で真っ二つに割れた、圧巻の観客席が出来上がっていました。

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1921年(大正10年)に第1回大会が開催された、由緒ある天皇杯。第94回大会は、2018年9月に1次ラウンドがスタートしました。同じ期間に国内最高峰の男子バスケットボール『Bリーグ』のリーグ戦が行われおり、Bリーグの各チームは、リーグ戦と天皇杯を並行して戦ってきました。

“負けたら終わり” のトーナメント戦で決勝戦に勝ち上がったのは、初代Bリーグチャンピオンチームの『栃木ブレックス』と、天皇杯2連覇中で一発勝負に勝負強さをみせる『千葉ジェッツ』。

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キャプテン田臥勇太率いる栃木は、Bリーグで圧倒的な力を見せていますが、いまだ天皇杯の優勝経験はなし。昨年の天皇杯初戦で千葉に敗退しており、この決勝戦は栃木にとって負けられない試合。一方の千葉は、天皇杯3連覇への挑戦がかかる決勝戦。天皇杯とBリーグでチャンピオンを獲れば“2018-19シーズン2冠”という栄光を手に入れられます。トーナメントの一発勝負と相性の良い千葉が栃木とどう戦うのか、注目が集まりました。

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バスケ観戦では、一心にゴールを目指す、鍛え上げた体と表情の美しさを見てほしい!

試合開始から5分で11-4と栃木が大きく突き放す展開になった第1クォーター。千葉のタイムアウト後も15-6と栃木優勢が続きますが、千葉はアキ・チェンバースの3ポイントから盛り返し、17-13の栃木4点リードで第1クォーターが終了。

第2クォーター開始から2分、千葉が17-17に追いつきますが、この試合で合計23得点をあげたライアン・ロシターが得点を重ね、残り30秒で32-24と栃木がリード。残り25秒で千葉が2点を返し、32-26で前半を折り返します。

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身長2mを超える選手がスピードを競い、ゴール下でぶつかり合う迫力は異次元の世界。鍛え上げた体で、ただひたすらにリングを目指す体と表情の美しさは、ぜひ試合会場で体感してほしい! バスケットボールを間近で観る面白さに気がつくはず。

ハーフタイムは、各チームのチアとマスコットのショーで盛り上がります。『2017-18マスコット・オブ・ザ・イヤー』に選ばれた千葉ジェッツの『ジャンボくん』は、短い足で生意気に歩き回り、チアと一緒に機敏に踊る姿がキュートなピンクのゾウ。

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激戦の末の劇的な結果は……?

栃木6点リードで突入した第3クォーターも、栃木優勢のまま試合が展開。栃木が入れれば千葉も入れるという具合に、5点差前後を保ちながら時計が進みます。5分過ぎに栃木のライアン・ロシターのダンクシュートが決まって、42-38と栃木の4点リード。

ダンクシュートは確実に点が入る気持ち良さと、ゴールポストがぐらぐら揺れるくらいの迫力が体感できる、ぜひ会場で体感してほしいプレー。身長と身体能力を併せ持つ選ばれた選手にしかできないダンクシュートは、“良いもの見せてもらった!” という気分になれます。

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選手たちの息が上がってきた第3クォーター残り50秒で、45-45に持ち込んだ千葉。激しい栃木ディフェンスをくぐり抜けた千葉キャプテン小野龍猛のシュートで45-47とついに逆転。千葉ブースターの悲鳴に近い応援のなか、栃木が淡々と2点をとって、47-47の同点で第4クォーターへ。

第4クォーター開始から3分、拮抗した展開を破ったのは、千葉の西村文男選手。残り7分を切って、会場のボルテージが上がるなか、西村選手の周りだけ温度が低く感じるくらいの冷静さで左手レイアップシュートを決めて49-54と千葉リード。その60秒後、またも西村選手のしなやかなフォームから放った3ポイントシュートがきれいに決まって、51-57と6点差まで千葉リードを広げます。

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完全に千葉ムードになった時間帯に否を突きつけたのは、栃木の鵤誠司選手。ポイントガードとして規格外の体格を生かし、2m超の外国籍選手に体当たりしながらシュートを決めて、55-57まで点差を戻します。

ここまできたら、プライドとプライドのぶつかり合い。取られたら取り返す試合運びで点は拮抗し、60-60の同点で第4クォーターが終了。まさかのオーバータイムにもつれこみます。

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5分間のオーバータイムは、2点差前後で時計が進む拮抗状態。いったいどんな結末が待っているの……? 目の前で繰り広げられる激戦を一瞬も見逃さないように、コートを見つめます。

勝てば天皇杯優勝という一発勝負で強さを見せたのは、千葉ジェッツ。試合終了後の会見で、「前がディフェンスでふさがっていたらパスを捌く、空いていたらシュートを打つとシンプルに考えていた。(ゴールを放った瞬間は)前が空いているように見えた」という富樫選手の残り2.6秒での3ポイントシュートで逆転。69-71の激戦で、天皇杯優勝を決めました。

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こんなに熱中して1秒1秒を見守る濃密な時間を過ごせるのは、バスケットボール観戦ならでは。そこには、勝った嬉しさも負けた悔しさも、選手や多くのブースターと共有できる豊かな時間があります。

観戦する人の数だけ、試合のみどころがあるのがバスケットボールの面白いところ。家族連れでも冬の時期に開催される天皇杯はアリーナでぬくぬく観戦できます。今期のBリーグは5月のファイナルまで日本各地で開催されています。こちらもぜひ一度、試合会場に足を運んでみては。

TEXT:石川歩
PHOTO:野呂美帆

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