Bリーガーに学ぶ、心が折れたときの這い上がり方。三遠ネオフェニックス・西川貴之選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.26>
26回目は、三遠ネオフェニックスの西川貴之(にしかわたかのぶ)選手が登場。北海道札幌市出身の西川選手は、レバンガ北海道でバスケキャリアをスタートし、シーホース三河を経て、今シーズンは三遠ネオフェニックスに移籍しました。
西川選手は3ポイントシュートから、ドライブで切り込むシュートまで、どこからでも点を取ってチームに貢献するエース。私服は196cmの長い手足でシンプルなコーディネートを着こなしていて、ボールを持っていなかったらファッションモデルみたい…!
今回は、私服や髪型のこと、学生時代のこと、うまくいかないときのモチベーションの上げかたについて話を聞いてきました。
西川貴之選手、196cmの買い物事情
――今日は、コールハーン(COLE HAAN)のスニーカーを履いてきていただきました。このシューズを選んだ理由は?
「もともとコールハーンの革靴が好きで履いていて、スニーカーも欲しくなって探していたんです。シンプルなスニーカーが見つかったので買いました。僕は足のサイズが31cmで、日本のブランドではなかなか合う靴が見つからないので、外国のブランドを履くことが多いです」
――他には、どんな靴を履きますか?
「最近は、オールバーズという靴を履いています。靴の中がふかふかしていて気持ち良くて、ずっと履いていても足に負担がかからない。丸ごと洗濯機で洗えて便利だし、シンプルなデザインも良いです」
――オールバーズはサンフランシスコ生まれ、ファッションとエコ意識の高い人たちの間でブレイクしているブランドです。西川選手は目の付けどころがおしゃれというか、センスのある人ですね! 今日の服も、とてもすてきです。
「ふふ、ありがとうございます(笑)。何を着てくるか、めちゃくちゃ迷いました。昨日の夜、クローゼットの前でいろいろと考えた。冒険しようと思ってデニムジャケットも持ってきたんですが、直前まで迷った結果、いつも通りの服にしました」
――アウターがラルフローレン、セーターがマッシモドゥッティ、パンツはディーゼルです。身長が196cmだと服選びに制限があって、その中でおしゃれするって大変そうです。
「袖丈が足りなくて、手首が出ちゃうので困ります。本当はいろんな服を着てみたいのですが、袖丈が足りるブランドは限られる。服はシンプルなものが好きで、なんて言うんだろう……自分に似合いそうなものがいい。大学時代、授業にスウェットで来る人が多かったのですが、僕はそれが嫌で私服で授業に出ていました。アルバイトができなかったので今日のような服は買えなかったけれど、大学の頃からこういうシンプルなスタイルになりました。ファッションで見ているのは、NBA選手がアリーナに入るときのコーディネートとか、オールスターのダンクコンテスト。彼らはスーツも似合っていて、バスケ選手がああいうキレイな格好をしているのは良いなって思います」
――さっき広報の廣瀬さんに、移動中の西川選手のスーツ姿はめちゃくちゃカッコいいと聞きました!
「そうですか(笑)。どうなんでしょうね。そういう反響は、今まであまり聞いたことがなかったです(笑)」
――西川選手は、普段はどこで服を買いますか?
「(フェニックスのホームタウン)東三河エリアではサイズが見つからないので、名古屋や東京で買います。三河にいたころは、栄のラシック(※名古屋の繁華街にある複合商業施設)とか三重県のアウトレットモールに行っていました」
――196cmの西川選手が栄を歩いていたら、すごく目立ちます!
「“でかいっ!”って感じで見られるんですけど、僕はあんまり目立ちたくないんです。信号待ちが一番目立つので、そこで目立たない方法を見つけまして。こう……膝をグッと曲げて信号待ちをして、青になったらそのままスッスッと歩いています」
――(一同爆笑)それ、逆に目立っているかも。そもそも体の迫力が違うから、どうしたって目立っちゃうと思います!
西川貴之選手の髪型がふわふわの理由は?
――西川選手は、そのふわふわの髪型が良いです! コートでもトレードマークになっています。
「僕は天パで、こんなにクルッとはしていないのですが、サラッとした髪型にはならないんです。高校・大学まですごくスポーティーな髪型をしてきたので、その反動で髪を伸ばしてパーマをかけたいなと思って、この髪型になりました。大学でおしゃれな先輩たちを見て影響は受けていたけれど、大学時代は余裕がなかったし、なんというか……僕は怒られキャラなので、パーマをかけたら怒られそうだった(笑)」
――西川選手はクールなプレーで、飄々とした雰囲気が魅力的です。怒られキャラなんて、想像がつかないです!
「僕は、そういう完璧な感じの人間じゃないです。けっこうポンコツで、いろいろやらかしますよ(笑)。高校では無名だったし、大した選手ではなかったです」
――もしもそうだったとしても、B1リーグのチームでエースまで登り詰める人は少ないです。思い返して、ブレークスルーのきっかけは何だと思いますか?
「大学進学のとき、コーチが僕のシュートを見てアウトサイドプレーヤーにしたいと言ってくれたんです。高校3年で195cmだったのでセンターをしていて、スリー(ポイントシュート)なんて打ったことがなかった」
「アウトサイドをやる想像もできなかったけれど、周りの人に恵まれて明治大学に入ったのは大きかったと思います。それに僕は、諦めが悪いんです。シュートが入るまでは帰らないという性格だったので……負けまくりますけど(笑)、負けず嫌いです。最後に、勝てばいいんです」
心が折れたあとの、這い上がりかたは?
――西川選手は、試合ではミズノ(MIZUNO)のウエーブリアル スーパーライトを履いています。このシューズを選んでいる理由は?
「同じ種類のバッシュを4~5年履いているのですが、名前の通りすごく軽くて、走りやすいんです。プレーの反応についてくるグリップ力もあって、ずっと履いています。インソールはオリジナルでつくってもらっていて、それを入れています」
――今シーズン、フェニックスは開幕から16連敗と厳しいスタートでした。接戦するのにどうしても勝てないのは見ているほうももどかしかったです。あのときは、どんな気持ちで戦っていましたか?
「どうしたらいいか分からなかった、というのが正直な気持ちです。いつになったら勝てるんだろう、何をやっても勝てない……焦りとイライラが本当にすごかった。天皇杯で勝てば流れが変わると思っていたのですが、信州(ブレイブウォリアーズ)さんにコテンパンにやられて、そこで一度、気持ちが折れた。あのときは最悪でした。試合がくるのが怖かったというか……、もう週末だ、もう試合だって、そんな気持ちでした」
――それでも、心配とか不安に押し潰されずに戦い続けました。どんなふうに、試合にのぞむ気持ちを高めていったのですか?
「試合の日の朝起きて、正直に言うとあんまり行きたくないなって思ったこともあるんです。不安で、どうやっても調子が悪くて。何と言ったらいいんだろう……がんばろうって口では言っていても、実際にはがんばるのが無理なときってありませんか? でも、そういうときに、家族や今までのコーチ、ファンの皆さんなど応援してくれる人がいると思うと、試合に行きたくないなんて思ってる場合じゃないと考えられる」
「試合の日の朝に、『今日も試合を見てるよ』と家族から連絡が来たり、会場に行ってファンの方が『今日もがんばってね』と言ってくれると、気持ちがすごく復活していました。10連敗とかしていると、次の試合には誰も来てくれないんだろうなと思っていたのですが、フタを開ければ満席に近い人たちが見に来てくれた。本当に、周りの人のおかげで生きています。僕一人だったら、もうおわってます」
――フェニックスの今シーズン初勝利は、12月7日の北海道戦でした。西川選手にとっては地元への凱旋試合で、30分以上の出場で16得点。気持ちの入ったディフェンスやシュートは、見ていて頼もしかったです。
「地元で恥ずかしいパフォーマンスはできなかったし、ここで連敗を食い止めたらめちゃくちゃ気持ちいいだろうなと思っていました。地元の友だちも見に来ていたので、いつも以上に気合は入っていました。ただ、北海道から三河に移籍して、初めて北海道と戦ったときに気合が入りすぎて空回りした経験があったので、意識しすぎず平常心でプレーすることを心がけていました」
――昨シーズンまで在籍した三河では、シーズン後半にチームが方針転換したこともあって西川選手のプレータイムが減りました。あのときは、どんなモチベーションでバスケをしていたのですか?
「人間なので『なんで試合に出られないんだよ』って思ってしまうことはありますが、腐ってしまえばそこで終わりです。短いプレータイムで結果を出すのは、プレーヤーの力量がないとできない。たとえば1~2分出場して、良いディフェンスをしたり、1本シュートを決めきるのは昔の自分ではできなかった。それができるように、僕はいつコートに出ても良いパフォーマンスができる準備をしていたし、実際にできたときに成長を感じていました。はたから見たら、あの時期は無駄だと思われるかもしれませんが、僕にとっては、試練ではあったけれど、すごく貴重な時間でした」
コートではあまり感情を出さないイメージのある西川選手ですが、連敗中は日本人エースとしてのプレッシャーが重くのしかかっていたはず。どうしてもうまくいかないときの西川選手の考え方や、そこからの這い上がりかたは、私たちが暮らしていくなかでも、参考にできることがありそうです。
三遠ネオフェニックスのホームゲームは、ファンの温かい声援に包まれるアットホームな雰囲気が魅力。その声援を聞いていたら、きっとチームを応援したくなります。新型コロナウイルスの影響で今シーズンのBリーグは中止になりましたが、最後まで戦えなかった選手たちの悔しさは、来シーズンのモチベーションになっているはず。まだバスケ観戦をしたことがない人は、来シーズンこそフェニックスのホームゲームに足を運んでみてください!
文:石川歩
写真:藤原萌
取材協力・写真提供:三遠ネオフェニックス
※この記事は、2020年2月14日に取材したものです