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「ジェッツのバスケは速い!」千葉ジェッツ・佐藤卓磨選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.33>

2020.10.26

今シーズン、滋賀レイクスターズから千葉ジェッツに移籍した佐藤卓磨選手。シーズン開幕直前におこなった今回のインタビューでは「ジェッツみたいなすごいチームに来られてうれしい。毎日、さすがジェッツだと感じています」とジェッツにベタ惚れしている様子を話してくれました。

泥臭いプレーでチームを鼓舞し、すごいスピードでコートを駆けて197cmの身長から得点する佐藤選手のプレーは見ていて面白い! しかし、移籍後の練習当初は「ジェッツのバスケは全然ついていけないくらいに速くて、僕の中でスピードの基準が変わった」と戸惑いもあった様子。

今回は佐藤選手に、移籍して変わったこと、プライベートファッションで大切にしていること、生まれたばかりのお子さんのことなどを聞いてきました。

「ジェッツのバスケは速い!」千葉ジェッツ・佐藤卓磨選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.33>

ジェッツの練習は「体の中から変な音が鳴るくらいキツかった」(佐藤卓磨)

――さっきまで自主練をされていました。ジェッツのバスケには慣れてきましたか?

「今シーズンのジェッツはメンバー層が厚くて、そのぶん自分を出し切れると思っているんです。みんな、自分が長くコートにいようとするのではなく、出ている時間帯に出し切る感覚。その出し切っている状態を体感すると分かるんですが、ジェッツのメンバーは一人ひとりの強度がめちゃくちゃ高い。あと、滋賀のときに外から見ていてジェッツのバスケは展開が速いと思っていたのですが、中に入ったら本当に速い。ギャビン(エドワーズ)、セバス(セバスチャン・サイズ)も足が速い! 僕はスピードが持ち味だと言ってもらえるのですが、全然ついていけないくらい速くて、僕の中のスピードの基準が2倍くらい引き上がった。これがすごく楽しいです」

「ジェッツのバスケは速い!」千葉ジェッツ・佐藤卓磨選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.33>

――その状態を楽しいと言える佐藤選手がすごいです。

「最初は体力的にキツかったんですよ。もうキツすぎて、体のどこかから変な音が鳴るくらい(笑)。でも、数ヶ月練習を続けたらスタンダードが上がって周りが見えるようになって、そこから徐々にそれぞれのメンバーの良さと特徴が分かってきた。それで自分ができることと、無理なことというのが理解できてきた」

「ジェッツのバスケは速い!」千葉ジェッツ・佐藤卓磨選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.33>

©IKEMENKOHO

「篤史さん(大野篤史ヘッドコーチ)が僕を評価してくれることの一つに、どんな時でもハッスルできること、ボールへの執着心とか気持ちを出したプレーがあるんです。僕も、ディフェンスとリバウンドっていう誰でもがんばればできることを誰よりも出し切れる自信がある。それをやらないとジェッツのあの速攻は出てこないので、僕はそこを絶対に徹底すると決めています。シーズンをむかえるにあたって、今はすごく充実しています」

「ジェッツのバスケは速い!」千葉ジェッツ・佐藤卓磨選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.33>

千葉ジェッツの重圧に押し潰されそうになったときに

――自主練の様子を見ている限り、佐藤選手はチームにすんなりと溶け込んでいるように見えました。

「僕はめちゃくちゃいじられるから、けっこうチームに溶け込めていると思います。このまま“いじられまくりキャラ”でいくのかな(笑)。ただ最初はジェッツの服を着ているだけで、“あのジェッツだぞ”って勝手にプレッシャーを感じて、イップス(※)みたいになったんすよ。マジでシュートが入んなくなった。勝手に勘違いをして一人でプレッシャーを感じていたとき篤史さんに『自信持ってシュートを打ち切っていいよ』と言われた。オーミさん(大宮宏正)とかベテラン選手も『プレッシャーは感じなくていい。絶対に大丈夫』と言ってくれて、新潟(アルビレックスBB)とのプレシーズンマッチで1本シュートを決めて、そこから大丈夫だという気持ちに変わったんです」

「ジェッツのバスケは速い!」千葉ジェッツ・佐藤卓磨選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.33>

――良い仲間に囲まれていますね。

「先輩やチームメイトにそう言ってもらえるのはありがたいけれど、自分で自分の機嫌を取れるようにならないといけないと思っています。自分でコントロールして、自分の調子を戻せるようになる。そこの修正力は身につけたいです」

――それは、どうやって実現していきますか?

「自分でコントロールできることしか集中しない。たとえばレフェリーのコールなど不可抗力で受け入れるしかないことに気を回さない。それよりもディフェンスをがんばるとか、誰でもできることを絶対に徹底する。そうやっていると自分の気持ちがノッてくるし、みんなのためにもなります」

「ジェッツのバスケは速い!」千葉ジェッツ・佐藤卓磨選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.33>

――このあと、私服に着替えて取材させていただきます。どんなコーディネートなのか、楽しみです!

広報さんから『取材で履く靴のメーカー・種類を教えてください。ハイブランドだとなお良し』というメッセージが来て、どういうこと! って思ったんすよ(笑)。GUCCIのスニーカーも持ってるけど、ハイブランドだからカッコいいものだとも思わないし」

――この連載に登場してくれた西村文男選手小野龍猛選手(現信州ブレイブウォリアーズ)がクリスチャン・ディオールとバレンシアガを履いてきたんです。2選手の間で、ジェッツはハイブランドしばりにしようって話があったみたいです。

「僕はまず、この体(197cm)が入るサイズかどうかで決めるんです。特定のブランドが好きというより、いろんなお店を回ってサイズがあったら買う感じなので、あんまり期待しないでくださいね!」

※イップス:特定の状況下で特定の動作ができなくなる状態のこと。原因は解明されていないが、精神的な問題が要因と言われている

GUCCIのソックスは、今シーズン中に召喚予定

――上下ディーゼル、スニーカーはアディダスのナイトジョガーで来てくれました。爽やかで良いです!

「ジェッツのバスケは速い!」千葉ジェッツ・佐藤卓磨選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.33>

「今日のポイントは、『アディダス(adidas)』とヨウジヤマモトがコラボしたショルダーバッグです。僕はモノトーンの服が多いので、オレンジのバッグをワンポイントにしました。ハイブランドで言うと、GUCCIの小物をポイントにすることもあります」

――ハイブランドをさりげなく取り入れられるのは上級のおしゃれだと思います!

「GUCCIの靴下を持っているんですが、“ザ・グッチ”という感じの柄で合わせ方が難しくて、正直なところまだこの世に召喚できてないんです(笑)。今シーズン中には召喚します! 僕は奥さんと大学2年から付き合っていて、彼女がファッション好きだから服を買うときは相談するんです。僕が、こういうスタイルをしたいってイメージを話すと、奥さんがこれがいいんじゃない? ってアドバイスをくれます」

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――アディダスのナイトジョガーを選んだ理由はなんですか?

「何を履いてくるかいろいろ考えたんですが、一番お気に入りでヘビーローテーションしているスニーカーにしました。かなり使い込んでいますが、好きな靴を履いてくるのが僕らしいと思ったから。実は学生時代は、『ドクターマーチン(Dr.Martens)』とかのブーツばかり履いていたんです。オフの日に1日中ブーツを履いて痛くて、脱いだら血が出てたりして(笑)」

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――佐藤選手はバスケ強豪校の東海大学出身ですよね。ジャージにスニーカーで過ごす忙しい毎日……というイメージがあります。

「東海大出身ってバスケエリートと見られるんですが、僕は全くそんなことないです。当時、高校の内部推薦に落ちてしまって、たまたま選んだのが北海道でバスケが一番強い高校(東海大学付属第四高校※旧称)だった。僕はその中でもどちらかというと学生生活を謳歌したいタイプで、コートを離れたらバスケ部以外の人と交流していました。一つのことにのめり込んで狭い道しか見えない、ということになりたくなかったんです。大学ではジャージが多かったのですが、オフは東京まで藤永(佳昭)さんと服を買いに行ったりしていました」

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サンロッカーズ渋谷・ベンドラメ礼生選手は『所作おしゃれ』

――『おしゃれなBリーガーは?』というアンケートには、サンロッカーズ渋谷のベンドラメ礼生選手を挙げました。同じ東海大出身ですね。

「礼生さんって発想がすごいんすよ。Instagramを見ると分かると思いますが、見せ方がおしゃれ。大学の頃から発想がすごくて、どこからその感性がきているのかなと思って見ていました。ファッションの知識が豊富とかそういうおしゃれではなくて、普段から発信する言葉とか動きが……礼生さんは“所作おしゃれ”なんすよ(笑)」

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――この連載に出てくれた狩野祐介選手も東海大出身ですが、大学のときストレス性蕁麻疹が出たと聞いて驚きました。

「狩野さんは滋賀で一緒でしたが、毎日すごいストレスと闘っていますよ。僕は思うんですが、プロスポーツ選手はメンタルが強いと言われるけれど、実はめちゃくちゃ繊細だと思っています。僕もすごく落ち込みますよ。だからもう僕は素の状態をそのまま見せて、人間くさい感じを出していこうと思っています」

――アスリートだって人間です。いつも前向きなわけではないですね。

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子どもが生まれて変わったことは?

――素の佐藤選手が垣間見えるものに、Instagramで発信している『#さとうのごはん』があります。料理素人の佐藤選手が料理をする様子に癒されます!

「はじめたきっかけは奥さんの出産で家事が大変になるからなのですが、僕だけが主役ではなくて、見ている人たちが料理を学び合ってるのが良いんです。さとうのごはんという場所で交流しあうコミュニティが生まれているのを見て、やってよかったなと思っています」

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――佐藤選手は7月8日にお子さんが生まれたことを報告されました。子どものいる生活はどうですか?

「最初は慣れなかったです。僕は練習が終わった後にビデオを見返して勉強をしたいんですが、娘が生まれてその時間が取れないことを受け入れられなかった。奥さんが育児をしているときに、僕が自分の世界に入ってバスケのことをしていたら、奥さんがキツそうで一度ケンカをしたんです。オーミさんとか子どものいるチームメイトに聞いたら、そういうケンカは絶対に起きることで、僕たちはその状況を受け入れるべきだ。奥さんを責めたら絶対にダメ。自分が変わるしかないと言われたんです。僕はそれに納得して生活を変えました。今は、育児の合間に少しできる空き時間でバスケのフィルムワークなどやるべきことをしていますが、逆に集中力が上がったと思います。それに、日に日に子どもが可愛いっていう思いが増していて、気がついたら時間を忘れてずっと遊んでいるんです」

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――お子さんがいることで、バスケをしているときの気持ちに変化はありますか?

「子どもができたとき最初に思ったのは、いつも試合を見にきてくれる子どもたちみたいに、いつか僕の子どもも試合を見にくるということ。コート上でふて腐れるとか、そんな姿は自分の子どもに絶対に見せたくないから変なことはできないって自覚が生まれました。子どもが僕を成長させてくれていることに、すごく感謝しています。今は、ジェッツで優勝して子どもをコートに呼び込んで、チームメイトと子どもと一緒に喜び合いたいと思っています」

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トップス:DIESEL
パンツ:DIESEL
シューズ:アディダス
バッグ:Y-3

取材・文:石川歩
写真:吉田一之
取材・写真協力:千葉ジェッツ