ALL-STAR GAME2019で大会MVP・富山グラウジーズ大塚裕土選手の『イージーブースト』<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.15>
クールな表情で3ポイントシュートを決め、大きなパフォーマンスもなく淡々とディフェンスに戻る。ディフェンスを外すための運動量、パスを受けてからシュートを放つまでのスピード、どんなシーンでもシュートを打つという気迫をまとった姿。大塚裕土選手のバスケットボールは、表情からは読み取れないアツさを、そのプレーから感じられます。
東海大学進学時に周りのレベルが一気に上がったのを実感し、チームでサヴァイブしていくために3ポイントシュートを練習しはじめたという大塚選手。188cmという身長と3ポイントを武器に、大学4年次にBチームからAチームに上がり、インターカレッジの4位入賞に貢献しました。大学卒業後は、栃木・宮崎・秋田・渋谷・富山と全国のチームを渡り歩いてきた大塚選手は、スマートな3ポイントシュートで観客を魅了しています。今回は、富山グラウジーズのシューター・大塚裕土選手に話を聞きました。
人気の『イージーブースト』を選んだ理由は?
——今日の大塚選手のシューズは、『アディダス(adidas)』のイージーブースト・ゼブラ<YEEZY BOOST ZEBRA>! アディダスとカニエ・ウエストのコラボレーション『イージーブースト』のなかでも超人気のシューズですね。
このシューズは最近買ったなかで一番のお気に入りです。思った以上に履き心地がよくて、デザインも好きです。
——イージーブーストシリーズは新作が抽選になることもあります。どうやって手に入れたのですか?
このシューズが出たときに“いいな”と思っていたけれど、すぐにプレミア価格になってしまって、手が出なかったんです。そのとき、同じチームのジョシュア・スミスが教えてくれたサイトがあって、そこで見たら僕のサイズがあったので買いました。このサイトが流行ると困るから(笑)、ここではナイショです。
——サイト名を教えてほしいですが……大塚選手が困ると私たちも困るので(笑)、聞かないでおきます。大塚選手は、プライベートで履く靴の情報をどうやって調べていますか?
話題になるシューズは海外のアーティストやトップアスリートが発信することが多いので、そういう人たちのSNSをチェックします。あと、仲のいい選手と情報交換をすることもあります。千葉ジェッツの富樫選手には『ナイキ(NIKE)』がついていて、販売前の情報を持っていたりするので話したり、名古屋ダイヤモンドドルフィンズの(張本)天傑くんは、僕が履いていた『コンバース(CONVERSE)』Off-Whiteがすごく欲しかったみたいで、どこで買ったか聞いてきたり。天傑くんはこのイージーブーストを結構な値段で買ったそうで、僕が買った値段を話したら悔しがっていました(笑)。
オリジナルパーカーもつくる大塚選手の、プライベートファッションは?
——トップスとパンツは、どこのブランドですか?
パーカーがUNDERCOVER、パンツはDIESELです。遠征なので動きやすいラフな服ですが、イージーブーストが目立つコーディネートにしました。パーカーはよく着ます。Supremeのパーカーは素材の質が良くてパーカー部分が立ち上がるシルエットが好きなのですが、最近のSupremeは人気がありすぎて、なかなか買えないですね。
——以前、この連載に登場したサンロッカーズ渋谷の伊藤駿選手が、大塚選手オリジナルのパーカーを着て登場しました。
伊藤選手から連絡があって、ページを見ました。こんなふうに取材で着てくれるとは思わなくて、嬉しかったです。もともと僕はクリエイティブなことをしてみたいという気持ちがあって、ファッションも好きなので、2013年ごろからオリジナルパーカーやTシャツを作っています。
——それは、セカンドキャリアも見据えた活動ですか?
そもそもは趣味でつくっていたのですが、今は自分のブランドをつくりたいと思っています。Bリーガーをやっていなかったら出会えない人たちが周りにたくさんいるので、現役のうちにいろんな人に会って学びたいと思っています。誰と会っても、いろいろ吸収していこうという姿勢で話していますね。
ハイブランドを、日常づかいするBリーガーたち
——大塚選手は、普段からおしゃれなのだろうなという気配が伝わってきます。コーディネートの参考にしている人やメディアはありますか?
海外のSNSでは、おしゃれなスポーツ選手としてNBA選手の会場入りを取り上げていることが多くて見ています。NBA選手は、練習にハイブランドのバックで来るんですよ。たとえば、グッチのボストンバッグにバッシュやスウェットを入れて会場入りする。そんなふうにハイブランドをさらっと使っているのがかっこよくて、僕も真似しています。僕以外にも、ハイブランドのバッグで会場入りするBリーガーは多いと思います。チームメイトの中には、ルイ・ヴィトンのポーチに直接ボディーソープを入れたり……見えない部分のおしゃれを楽しんでいる選手もいますね。
——富山では、街でファンから声をかけられることも多いそうですが、注目される立場としてコーディネートで気をつけていることはありますか?
僕たちはスウェットでいることが多いですが、丈の短いスウェットで足首を出して靴が見えるようにして、全体のシルエットがきれいになるようにしています。子どもたちが見たときに、同じスウェットでもあんなふうに着こなせるんだと感じてもらえたら、それがプロスポーツ選手といえる佇まいだと思って。僕も子どもの頃にスポーツ選手をそんな目線で見ていたから、大人になったいま子どもたちの憧れの選手になれるように気をつけています。
——大塚選手が試合で履いているのは、ナイキのコービー AD EP<KOBE AD EP>です。このシューズを選んでいる理由は?
ずっとナイキKDを履いていましたが、モデルチェンジをしたら足に合わなくなったので、試しにKOBEを履いたんです。KOBEは軽くて、試合前日に履いても違和感なく試合に出られるくらい足にフィットしたので、次の日の試合で履いたら試合に勝った。縁起がいいなと思って、それからはKOBEを履いています。
シューターの心に残っている言葉は?
——シューターの大塚選手を見ていると、リングにボールが届く前に“入った”という表情をしているときがあります。まだリングにボールが触れてもいないのに、どうして入ると分かるのですか?
「あ、このボールは入るな」という感覚があります。ずっと練習をしていると、“入るシュート”と“入らないシュート”の感覚を体が覚えているんです。すごく調子が良いときは、ボールをキャッチした時点で「このシュートは入る」とわかりますよ。
——試合の解説では、「今日はシュートタッチが良い・悪い」という表現をされます。
僕は、シュートタッチという表現はあまりしてほしくないです。普段の練習を見ていないのに、その場のシュートが入るかどうかで選手の調子の良し悪しは分からないでしょう? だから、シュートタッチが悪いですねって言われると、なんだか悔しい(笑)。シュートが入らないから今日は調子が悪いと言うのは簡単ですが、それでも打ち続けるのがシューターだから。
——シュートが入らない試合でも、打ち続ける気持ちはどうやって奮い立たせていますか? 大塚選手に限らず、入らないシュートが続くと、観ている私たちがくじけそうになります。
基本は、ずっと続けてきた練習の積み重ねが心を強くしていると思います。他の人がどれだけ練習をしているかわからないけれど、僕は休みの日もずっとシュートを打っていたし、今もずっと練習をしています。秋田ノーザンハピネッツに在籍していたとき、3ポイントを5回連続で外していた試合の第4クォーターの残り1分、僕が3ポイントを決めて勝ったことがありました。当時ヘッドコーチの中村和雄さんに、「あそこで入るなら大丈夫だ」と言われたんです。6本目を外してチャンスを得られない人はどこかで消えていくのだろうけど、僕はそれが運だったか実力かはわからないけれど入った。大丈夫だとコーチから言ってもらえたのは大きくて、シュートの感覚に波があるときは、その言葉を思い出してプレーしています。
トップス:UNDERCOVER
パンツ:DIESEL
シューズ:adidas
今年1月に開催された『B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2019』で、第3クォーターだけで3ポイント6本を含む20得点をあげてMVPに輝いたのが大塚選手でした。打っても打っても入るシュートは見ていて痛快でしたが、今回の取材で、1本1本と放つシュートの背景には、ずっと練習し続けてきた重みがあることを知りました。
磨き上げてきた技術に、私たちの常識を超えた身体能力が全力でぶつかり合うBリーグの試合は、ちょっと日常では味わえない体験。今シーズンのBリーグもクライマックスが近づいてきました。ぜひ一度、生観戦でその迫力を体感してください!
INTERVIEW / TEXT:石川歩
PHOTO:野呂美帆