19点差から5点差へ。双方まったく諦めなかった『Bリーグチャンピオンシップ』
よく晴れた春の日、3年目のBリーグファイナルの舞台である横浜アリーナには、12,972人のバスケットボールファンが詰めかけました。対戦カードは、アルバルク東京vs千葉ジェッツ。昨年のBリーグ王者アルバルク東京とレギュラーシーズン60試合でわずか8敗、歴代最高勝率でファイナルのチケットを掴んだ千葉ジェッツの戦いは、最後までまったく目が離せない、素晴らしい試合になりました。
家族で、友だちどうしで、一人でも楽しめるBリーグのファイナルは、どんな雰囲気ではじまり、どんなドラマがあり、どんな決着を迎えたのか。横浜アリーナの朝の様子からレポートします。
チームカラーを全身にまとって、さあゲームを楽しもう!
ファイナルの日は、朝早くから多くのバスケットボールファンが横浜アリーナの入場口に並びました。入場口の外にもBリーグのグッズ売り場があり、ファイナルの記念に買っていく家族やカップルがたくさん。
決勝を戦うアルバルク東京・千葉ジェッツともに、チームカラーは赤。アリーナ内にある各チームのショップで、チームTシャツやタオル、メガホンなどのグッズを買い揃えて、ティップオフを待ちます。試合開始が近づくにつれて、どんどん赤に染まっていくアリーナが圧巻!
ビッグサイズのチームシャツをワンピースにしたり、ネイルをチームカラーにしたり、チームロゴのフェイスペイントをしたりと、自由におしゃれを楽しんでいる子どもや女性が多くて、見ていて気分が上がってきます! 家族みんなでお揃いのコーディネートするのも、スポーツ観戦の楽しさの一つ。会場にいるみんなが、ファッションから応援を楽しんでいる様子が伝わってきます。バスケチームのグッズはデザインがかっこいいので、日常づかいすることを頭において買っても良さそうです。
両チームとも流れを渡さない!意地と意地のぶつかり合い
いよいよティップオフの時間が近づき、光と音の演出のなか選手たちがコートにコールされていきます。このコートに立てるのは、過酷なレギュラーシーズンを戦い、さらにチャンピオンシップのトーナメント戦で勝ち上がった2チームのたった24人の選手たち。いま、選手たちはどんな気持ちでいるのだろう……? 想像して鳥肌が立ってきます。
東京のスターティング5に、今まで怪我の影響でベンチスタートだった田中大貴(192cm)が入るサプライズ。馬場雄大(198cm)、竹内譲次(207cm)、アレックス・カーク(211cm)と、東京のゴール下の大きさが目立ちます。
1Q3分経過で8-6と東京が2点リード、初盤から両チームが点を取り合う展開に。中盤で千葉のターンオーバーが続き、12-6と東京6点リードになったところで千葉がタイムアウト。その後14-6まで点差が開くも、日本代表のポイントガード富樫勇樹が個人技で得点差を広げず、16-15の東京1点リードで2Qへ。
2Qは、千葉のシューター田口成浩が大爆発。ボールキャッチからシュートまでの早いこと! 迷いなくシュートを打つ姿に、タレント揃いのチームのなかで自身の役割をきちんとこなすプロフェッショナルぶりが光ります。田口は2Qで3ポイントシュート4本を含む14得点をあげる大活躍で、35-33の東京2点リードで前半を終えました。
まさかの展開で始まった3Q、決着のゆくえは……。
ハーフタイムは、チアのダンスを楽しんだり、食事をとったり、買い逃したグッズを見に行ったりと、思い思いに過ごします。子どもたちは、両チームのマスコット『ルーク』と『ジャンボくん』に夢中。どちらのマスコットも短い手足で、丸いお尻を振りながら歩く姿がとってもキュート! ルークがおっとりと動くのに対して、ジャンボくんはやんちゃに歩き回り、観客を楽しませます。
3Q開始1分で東京・竹内の3ポイントシュートが立て続けに2本決まり、41-35と一気に東京が6点リード。千葉ギャビン・エドワーズがダンクを決め、千葉に流れがいきそうなときも東京はコンスタントに点を重ねます。中盤に東京の安藤誓哉が3ポイントを決めて、気がつけば56-43と東京13点の大量リード。たまらず千葉がタイムアウトをとったところで、千葉ブースターから『ゴー! ジェッツ!』コール。全く諦めていない選手の表情に、ブースターも精一杯の声援をおくります。しかし、東京は高いゴール下を生かしたリバウンドから着実に得点を重ね、64-45と東京19点リードで4Qへ。
誰も予想していなかった大量点差で始まった4Q、両チームの応援のボルテージは上がり続け、アリーナは隣の声も聞こえないほどのすごい雰囲気。千葉ブースターは、これからの大逆転を信じて声援をおくります。
1シーズン、この舞台で勝つために戦ってきた選手たちの戦いは、簡単には終わらない。19点差から千葉の猛追が始まり、オフィシャルタイムアウト前にも富樫が2本の3ポイントを決めて、64-59と5点差まで千葉が詰め寄ります。
残り3分、千葉ギャビン・エドワーズのダンクで67-61と6点差にすると、東京の馬場がジャンプショットを決めて69-61と、どちらも流れを譲らない拮抗状態に。東京の堅固な守備をかいくぐって千葉はシュートを打ち続けますが、残り11秒、東京アレックス・カークが、与えられた2本のフリースローをきちんと決めて71-67になったところでタイムアップ。楽しい時間はあっという間に終わり、3年目のBリーグチャンピオンはアルバルク東京に決まりました。
チャンピオンシップの全試合をアウェーで戦い、その逆境から優勝をもぎ取った東京の奮闘に、心を奮い立たせられた人は多いのでは? また、19点差でも全く諦めずに、4Qの10分に自分たちの全てをかけて、最後まで希望をつないだ千葉のプレーからもらった感動は大きかったでしょう。コートに立った24人の選手たちは、勝ち負けの結果よりも大きな何かを、観戦したすべての人の心に残したはずです。
ファミリーで観戦をすれば、日本最高峰のバスケを子どもたちに身近で見せられる機会に。また、バスケ経験者なら、ずれの作りかたやステップバックの幅など、選手の細かなスキルに注目して、プロ選手がどれだけすごいのかを見るのも楽しい。イケメン揃いのBリーガーを間近で見て、日々の栄養にするのもよし。天候にも気温にも左右されないアリーナスポーツは、小さな子ども連れも気軽に楽しめます。
今年8月には、男子日本代表が21年ぶりに自力で出場をもぎ取ったワールドカップ中国大会が開催されます。来年東京で開催される最高の舞台への出場も決まり、ますます盛り上がる日本のバスケットボールは、今が歴史の変わり目。一歩ずつ世界の舞台へ歩みはじめる日本のバスケを、これから一緒に見守っていきませんか?
TEXT:石川歩
PHOTO:野呂美帆
写真提供:B.LEAGUE