
変わらないレストランの朝食メニュー。そして、変わるキャリア・年齢の楽しみ方【城町アネックス・新海康介】
英語で交差点を意味する「CROSSROAD」。
様々な分野で一直線に邁進するプレイヤーの「ターニングポイント」を振り返る本企画。そのポイントの以前・以後では何が変わったか。そして、変わらずに足元を支えていた“相棒”とも言えるスニーカーについて語る。
家業のホテルは大赤字 洋食レストランに懸けた起死回生
今回登場するのは、福井県福井市で老舗ホテル・城町アネックスを経営する新海康介さん。福井城址のお掘に沿って散歩をすれば、見えてくるのが三角屋根の赤レンガ。約40年の歴史を持つ城町アネックスが迎えてくれる。福井の魅力を広めようと改革を進める、今注目のホテルだ。
城町アネックスを創業したのは、新海さんのお父上。都会を感じられるビジネスホテルとして注目を浴び、地域に根差してきた。ところがバブル崩壊やチェーン店の台頭により、経営は厳しい状況に直面するように。
「父がホテルを閉業すると言い出して、それは……と。当時の僕はクボタで働いていたのですが、サラリーマンに向いていないなと感じていた頃でもありました。自分が良いと思うことややりたいことをストレートにしている方が健康状態が良いように考えたんです」
サラリーマンとしてのキャリアから舵を切り、30歳の若さでホテル経営に転身した新海さん。まずは併設するレストラン「二ノ丸グリル」から変革を始めることにした。
「ホテルはもう成り立たないだろうというネガティブなところから考えて、レストラン直営で延命するしかないと考えたんです。洋食Katsuiのオーナーシェフ・勝井景介さんのもとで料理の修行をしました。修行していた頃やホテルに帰ってきた直後は、こんなにお金がなくなるんだと驚くほどの状況でしたね。今は貧乏を経験して良かったなと思っています(笑)」
修行を経てたどり着いたのが、宿泊と食事を楽しめるオーベルジュスタイル。二ノ丸グリルの看板メニューも生み出し、老舗ホテルが生まれ変わった。
朝食のラインナップは、15年の間変わらず。バタートーストまたはフレンチトーストに、野菜たっぷりのスープ、サラダなど盛りだくさん。レストランから始まる朝が、幸せな気分で満たされていく。
客足は少しずつ伸びていき、今では食事目当てに城町アネックスを訪れる人も多いのだとか。この頃の新海さんの生活は「厨房がすべて」だったそう。
「厨房に24時間こもりきりのような感じでした(笑)。外に散歩に行くなんて一度もなくて、このままだとヤバいなと思ったんです。経営は少しずつ軌道に乗ってきたんですけど、ずっとこの状態でやっていくことを想像したら怖くなって。思い切って求人を出したら、すぐに応募が来ました」
2013年頃から新海さんは経営面に集中し、厨房は信頼できるシェフに専念してもらう体制に。料理以外にも手が行き渡るようになり、城町アネックスはさらに輝きを増していった。
「建物や客室に関しては、創業当時に戻すという方針を持っていました。本の展示などソフトな面に関しては、僕の生活のリビングの延長です。好きで買い求めたものだけを置いています」
厨房を出るようになった新海さんは、たくさんの“好き”を見つけるのが楽しいようだ。最近は家具や器にも目が奪われるのだそう。同業の宿泊施設や飲食店を回るときは、こんな気持ちを抱くという。
「ありがとうございます、と思うんですよね。僕にとっての原点みたいなものが感じられて、一生懸命な姿を見ているだけで心が落ち着きます」
ニューバランス996でフィットする、新しくて心地良い自分らしさ
そろそろアラフィフも近いという新海さん。愛用のスニーカー・ニューバランス996の良さに気づいたのは、年齢を重ねてからのことだった。
「普段歩きするのにスニーカーが好きで、若い頃からいろいろ履いてきました。ナイキとか格好良くて好きでしたね。昔はニューバランスに野暮ったい印象を持っていたんですよ」
「けれど雑誌のブルータスで松浦弥太郎さんがニューバランスを紹介していて。それで履いてみたら、あまりにも履き心地が良かったんです。特にこの年齢になってから、履き心地に勝るものはないなと(笑)。ニューバランスのショップでたくさん試着して、996が1番足に馴染みました。僕は足のサイズが28cm位ですが、そのサイズでもスタイリッシュに収まるのがうれしくて」
996はカラーのラインナップも豊富。ブラック、グレー、ネイビーなどがある中、新海さんの今の相棒は「CM996V2」のRich Oak with Black。シックなブラウンとソールのブラックが、そこはかとなく上品さを醸し出す。
「996も4足目、5足目になって、初めて色違いを買いました。グレーを履き続けていましたが、ブラウンにしてみたんです。元々はブラックを買うつもりでネットを探したらサイズ切れで、けれどブラウンにしてみたら逆にすごくよかったですね」
履き心地も色味もフィットするスニーカーを履いて、新海さんはどこに足を伸ばしているのだろう。
「朝に家を出たら、福井城の周りなどをぐるぐる回ったりしています。東京に行ったときは電車に乗らず、ひたすら歩くのが気持ち良いです。そういう時間も、40歳前後の頃はすごく少なかったですから。厨房から出るようになったばかりの頃は、1万歩なんてとてもじゃないけど歩けなくて。年々歩数が増えていって、今は1万歩でも気持ちよく歩けます。何かを越境していくときに傍らにいてくれたスニーカーがニューバランス996ですね」
履き心地もさることながら、ファッションアイテムとしてもニューバランス996がフィットする。
「スポーツをやっていた20代と違って、体力もなくなってきました。肉体的、身体的にストレスがないのが良いなと思うようになるにつれて、上着も重たいものはもうあまり着たくない(笑)。そういう時期に996と出会えて本当によかったです」
「30代まではカラフルな色が好きだったんです。ヨーロッパサッカーの芝生みたいな綺麗な色を選んだりしていましたが、40代後半になってグレーコーデや渋めの色で身を包むのが楽になりました。これがまた黒と白だとバチっと決めすぎになるので、濁らすことができるのが良いですね」
コーディネートは空模様で変えることもあるのだと教えてくれた。
「福井の冬は、ほとんど快晴の日がないんですよ。雪雨曇りがずっと続くので、晴れたら白い服を着たいと思うんです」
晴れの日も雨の日も、足元にはニューバランスの996。良い意味で肩の力が抜けた新海さんのこれからの人生は、なんだか楽しそうだ。歴代の996も出番を待っている。