新しいスポーツの歴史を切り開く。日本一そして世界一のフリースタイルバスケットボーラー・ZiNEZ a.k.a KAMIKAZEが描く、フリースタイルと自分の未来。
カナダでフリースタイルバスケットボールを始め、その後数々の大会で優勝を続けるZiNEZ a.k.a KAMIKAZE(ジンジ a.k.a カミカゼ)。今回は、エアフォース 1<AIR FORCE 1>&ビッグ ナイキ<BIG NIKE>とのコラボ企画としてインタビューとファッションスナップを前後編でお届け。
インタビューの前編では、フリースタイルバスケットボールを始めたキッカケや、プレーやファッションのこだわり、そしてエアフォース 1の30周年イベントにも出演した彼と『ナイキ(NIKE)』との思い出やフリースタイルバスケの魅力・未来についてたっぷり語ってもらった。
ZiNEZ a.k.a KAMIKAZE
東京生まれの日本とカナダのハーフ。2004年、バスケットボール選手を目指しカナダのVictoria島へ移住。2006年、フリースタイルバスケットボールと出会い、2008、2009年に行われたフリースタイルバスケットボール日本一決定戦では、史上最年少記録となる18歳での優勝と、初の日本大会2連覇を成し遂げ、さらに弱冠19歳で世界王者となる。現在はパフォーマーとしての活動のみならず、世界中でワークショップやトーナメントを主催するなど、フリースタイルバスケットボール界のパイオニアとして世界中の競技者たちに影響を与え続けている。日本国内でタレント・モデル・ラジオDJとして活動するかたわら、海外でも多くのバスケットボールイベントに出演、また大会審査員として招待されるなど、Internationalに活躍している。 Twitter / Instagram
さまざまなキッカケをくれたフリースタイルバスケ
――ZiNEZさんがフリースタイルバスケットボールを始めたキッカケは?
父が翻訳家、母は英語の先生だったんですが、元々父は画家やミュージシャンといったアーティストになることを夢見ていて。僕は子どもの時に漫画家志望で、芸術への漠然とした憧れがありました。中学では友だちに誘われてバスケ部に入ったんですが、どこか肌に合わなくて。そんなことを考えていた中学1年の終わりぐらいに、『AND1 MIXTAPE』っていうストリートバスケのDVDがすごい流行ったんですよ。そこからすべてが始まりましたね。
――その影響でカナダへ?
タイミングが良かったんですけど、そのDVDに出会った半年後ぐらいに家の事情で引っ越さなきゃならなくなって。当時、ストリートバスケにおいてアンダーグラウンドで最強と言われる2チームが、バンクーバーとトロントにあったんです。彼らはフリースタイルバスケもやっていて、僕はリアルを体験したいと思っていたところに両親が引っ越し場所を決めていいって言ってくれたので、カナダに行くことになりました。
――カナダで印象に残っているエピソードがあれば聞かせてください。
向こうに行った時は英語を話せなかったので、最初は友だちが出来なくて。とりあえずボールを持ってコート周りでトリックの練習をしてたら、そのうち周囲の奴らから「お前面白いね」って言われてコートに入れてもらえるようになったんです。友だちが出来るキッカケも、英語を覚えるキッカケもフリースタイルバスケでしたね。
当時は15歳ぐらいから自分で撮って編集していた動画をネットの掲示板にUPしてました。それを続けていると、2008年ぐらいにフリースタイルバスケの世界大会を運営する会社の目に留まって、マディソン・スクエア・ガーデンのショウのオファーをもらったんです。それがマイケル・ジョーダン主宰の『ジョーダンブランドクラシック』のハーフタイムショウ。そのコート上に立った時に、「これをもっとカタチにしたい」「好きを仕事にしたい」と強く思いました。
ストリートっぽさ×動きやすさ×カッコよさが重要
――ZiNEZさんにとって当時憧れたスターはいましたか?
2001年ぐらいに、ナイキがコートじゃなく真っ暗な部屋の中でボールを回す……というCMをやったんですが、それに出演した彼らが“フリースタイルバスケットボール”という言葉を定義しました。その人たちがフリースタイルのスターとしてキャンペーンで日本を含めて各国を回ったことで、世界中にフリースタイラーが生まれたんだと思います。
――当時はどんなファッションでプレーしてましたか?
ストリートバスケの延長線上でやっていたので、絶対に2XL以上じゃなきゃ着なかったですね。ダボダボの服にファットなスニーカー。あとHIPHOP以外は音楽じゃないと思ってました。当時はEMINEMとか50CENTが流行ってたんですけど、僕は90年代のNASとかCOMMONとかが好きでしたね。
――今のファッションやプレーする時のこだわりは?
僕は「余裕」という言葉をいろんな意味で大事にしていて。気持ちの面もそうだし、ファッションで言えば、ズボンはストレッチが利いていて普段着るものより2サイズぐらい大きい方が動きやすいと感じたりだとか。基本的に縛られないことが好きなんですよ。ショウによってはそれも変わってきますが、根っからのフリースタイルバスケットボーラーとしては、“ストリートっぽさ”と“動きやすさ”、あと“カッコよさ”の三拍子が揃ってるのが良いですね。
いつもより「自分カッケー」と思わせてくれるシューズ
――HIPHOPの話が出たのでその流れで伺いますが、個人的にナイキのエアフォース 1はJay-Zのイメージがあって。白をピカピカにして履くのがB-BOY的なマナーで、自分にとっては“勝負靴”なんですよね。
僕にとってもナイキは大事に履きたい靴で、エアフォース 1をコンビニに履いて行くことはないですね。初めて履いたのは……18歳とか、それこそ白をピカピカにして履くのが流行ってた頃に、大好きな先輩がおさがりでくれました。そこから常にエアフォース 1は靴箱に入ってます。ナイキは“何か目的がある時”に履く靴なんですよね。ただ練習するって時はスケシューっぽいのを履いて、人に見せつけるって時はナイキっていうイメージでいつも履いています。
――そういう意味でもフリースタイルバスケットボールの時に“見せつける”という面でもエアフォース 1は合ってるのかなと。
ホントそうだと思います。そもそもバスケというものとナイキが密接な関係ですし、その中でも僕らは人前でパフォーマンスをするバスケなので、エアフォース 1はピッタリかもしれませんね。
――ZiNEZさんにとってエアフォース 1の良さは何でしょう?
エアフォース 1に限らずですが、ナイキって何年経ってもブレないじゃないですか? デザインもそうですし、色やカラーバランスでナイキだとわかる。一本筋の通ったカッコ良さがありますよね。バッシュでもナイキは好きですし……ただただかっこいい。どんなシーンでもナイキを履いてれば、ちょっといつもより「自分カッケー」って思わせてくれるシューズです。
――今日履いたエアフォース 1はいかがでしたか?
90’s感があっていいですよね。ブーツカルチャーを匂わせるカラーで服と合わせやすいし、何よりやっぱり履きやすい。
“ライフスタイル”としてのフリースタイルバスケ
――ZiNEZさんはシーンを引っ張る立場にいると思うのですが、今後フリースタイルバスケットボールをどのようなものにしたいと考えていますか?
今ってなんでもミックスカルチャーになっていて、僕らがやっているフリースタイルバスケ自体もミックスカルチャーだと思います。僕が技を作る時は、ブレイクダンスの技を引っ張ってきてみたり、ピアニストの指の動きを参考にしてみたりもします。サンプリングであり、ミックスであり……2000年代のスポーツってこういう事なんだと。そういう意味で僕はいいタイミングで始められたし、音楽とスポーツをミックスしてそれをダンスのように表現出来るフリースタイルバスケは、新しいスポーツの可能性を秘めていると思います。
ZiNEZの技も披露!
――ZiNEZさん自身はどのような人になりたいですか?
元々漫画家志望だったのが僕にとってはすごい大きくて、「自由な表現を評価されたい」っていう気持ちが根底にあります。尊敬する人物もダヴィンチといった歴史上の人物や、先ほどのNASやCOMMON、アレン・アイバーソンのようなアスリート、ダンサーのダニエル・クラウド・カンポス、映画監督のクリストファー・ノーランなど。とにかく自由でハンパない人が好きです。
僕自身も常に変化しながら、カッコ良くありたい。そういう意味でスケーターに近くて、フリースタイルバスケットボールもライフスタイルであるべきだと思う。例えばスケーターからデザイナーもやったマーク・ゴンザレス、PV監督から映画監督になったスパイク・ジョーンズとかもいるわけじゃないですか。
面白い人たちがフリースタイルバスケを通して努力したら、結果的にいろんな道で活躍できるはず。その時に「何でこんな功績を残せたんですか?」って聞かれて、「フリースタイルバスケで得た価値観があったから」って答えられる業界が素敵だと思います。みんなプロになれとも思わないし、世界大会で優勝した人が一番でもない。ボールと身体だけで表現する魅力と可能性を、あえて定義付けない――それが僕にとってのフリースタイルバスケットボールです。
インタビュー中にZiNEZさんは「11年間、毎日ボールを触ってる」と教えてくれた。そういう意味でもフリースタイルバスケットボールというライフスタイルを追求し、誰よりも“フリースタイル”の言葉を体現しているのがZiNEZ a.k.a KAMIKAZEという男なのだろう。
後編ではエアフォース 1とビッグ ナイキ ハイ&ローの3アイテムを取り入れたコーディネートと各スタイリングのポイントを、ZiNEZさんのスタイリッシュなスナップとともにお届けします!
INTERVIEW/TEXT:ラスカル(NaNo.works)
STYLING:Keisuke Kano
PHOTO:Seiya Uehara