広報担当者が知る篠山竜青選手、ニック・ファジーカス選手【Bリーグ広報のてまえみそ<川崎ブレイブサンダース編>】
1950年に、東芝のバスケットボール部として活動していた川崎ブレイブサンダース。2018-19シーズンは、東芝グループからDeNAグループに経営権が変わり、長い歴史を持つクラブは変化の年を迎えました。2018-19シーズンは、チャンピオンシップのクォーターファイナルで栃木ブレックスに2連敗し、シーズンを終えています。
21年ぶりに自力でワールドカップ出場権を獲得した男子バスケットボール日本代表選手のうち3名が、川崎所属というタレント揃いのチーム。一方で、代表3選手がベンチに下がった時間帯に、点を取れる選手の台頭が待たれるチームでもあります。
長く川崎のヘッドコーチを務めた北卓也氏が退任し、2019-20シーズンは、佐藤賢次氏がヘッドコーチに就任することが決まっています。また、即戦力として大塚裕土選手・熊谷尚也選手の入団も発表されました。チームが大きく変化していく時期に、広報の加藤希恵さんに、“川崎ブレイブサンダースのてまえみそ”なお話を聞いてきました!
のびしろしかない! ロウルくん
――もともと東芝の企業チームとして活動してした川崎ブレイブサンダースは、地域に根付いて成長してきたチームに比べると、これから川崎市民に認知されていく段階なのかなという印象があります。
「Bリーグが始まる前までは、多くの方にクラブの存在を知ってもらう機会が少なかったので、まずはBリーグの掲げる地域密着というテーマに基づいて、たくさんの方にチームを知ってもらうのが私の仕事です。川崎市の商業施設で選手のトークショーをしたり、選手が川崎市の学校の授業へバスケを教えに行ったりしています。先日、シーズン終了のご挨拶で川崎市長を訪問したのですが、『最近は、市内にバスケコートを増やしてください』という市長宛の手紙が来るとおっしゃっていました。これを聞いたときは、嬉しかったですね」
「川崎市には、まだまだバスケコートが少ないので、ホームゲームのときは試合会場の外にゴールを設置して、子どもたちが遊べるようにしています。クラブのスクールコーチが入って、試合前にフリースローゲームするなど、家族で楽しめるイベントを行っています。あとは、川崎市主催のマラソン大会にチアとマスコットのロウルが応援に行ったりして、市民のみなさんと直接触れ合える機会を増やしています」
――マラソンで走っているときに、チアの皆さんが応援してくれるとうれしい! ロウルは、マラソンには参加しないのですね(笑)? 走っている姿を見てみたいです。
「ロウルは、なかなか足が短くて走れないので、応援です(笑)。彼は本当に可愛い! 可愛いを詰め合わせて生まれてきたと思います。子どもたちから大人気で、試合会場で販売しているロウルのグッズは本当にたくさんの方に購入していただいています。雷獣って架空の動物なので、なんだか不思議な動きをすることもありますが(笑)、彼が誕生して1年目で、Bリーグマスコット総選挙の結果が4位だったんです。来年は1位にしてあげたい! 彼はのびしろしかないですね」
日本代表の篠山竜青選手・ニック選手の素顔は?
――川崎には日本代表選手が3人います。しかも、篠山竜青選手は代表のキャプテン。加藤さんから見て、篠山選手はどんな選手ですか?
「日本を背負って戦っている選手なので、やはりすごいキャプテンシーがあります。私は広報として篠山選手と話すことも多いですが、最近は、ふつうにテレビで見ることも多いです(笑)。篠山選手は、良い意味で、たくさんの人から“見られている意識”が強い人だと感じます。自分が発した言葉や、取っている態度がどんなふうに世の中に伝播していくのかきちんと考えている。とても真面目な人ですが、すごく面白い話もできる。変なことは言わないし、任せておけるので、広報的には“安心できる”選手ですね」
――男子日本代表は、ワールドカップ予選で4連敗して、本戦出場ができないかもしれないという崖っぷち状態でした。そのタイミングに、ぎりぎりで日本に帰化したニック・ファジーカス選手が代表入りしたことは、日本バスケ界のビッグニュースでした!
「ファジーカス選手が帰化してからワールドカップ本戦出場決定までのストーリーは、本当にたくさんのメディアに報道していただきました。帰化した理由は、純粋に日本が好きだから。近くで見ていて、本当に、日本代表が勝って本戦出場することに力をかけていてくれたんだなと感じました」
――加藤さんが知っている、ファジーカス選手の意外な素顔はありますか?
「昨年、お子さんが生まれたのですが、ものすごい子煩悩です。家族3人でスイミングスクールに通っているそうで……207cmのファジーカス選手がプールサイドにいたら、親御さんたちはびっくりするだろうなって思います(笑)。ファジーカス選手は、『僕は料理が得意なんだ』と言うのですが、私が紹介されたのはスムージーでした。スムージーを料理と呼ぶかはさておき(笑)、こだわりの食材でつくるスムージーは、ホームの試合会場で『ニックスムージー』として販売しました」
林翔太郎選手の“山盛りごはん”
――以前、ファションの取材で林翔太郎選手に出演していただきました。かっこいい顔立ちで、女性人気も高そうです!
「林選手は23歳と若いですが、2018-19シーズンの後半はプレータイムが伸びてきました。スタメンの5人が崩れたときに、チームを引っ張っていく存在になると思っています。穏やかな雰囲気の選手ですが、実はよく喋るので、そういう一面もこれからファンの皆さんに見せていきたいと思っています」
――加藤さんだから知っている、林選手にまつわるエピソードはありますか?
「林選手は川崎に加入して2年目ですが、加入当初は体が細くて、チームメイトによく突っ込まれていました。シーズン中はクラブハウスの食堂で食事をするのですが、運動量や体質に合わせてひとり一人、食事の量が違うんですね。林選手は、“日本昔ばなし”みたいな山盛りのごはんと、たくさんのおかずを出されていました(笑)。体重は増えた? って聞いたら、あと少しが遠いです~ってぼやいていましたが(笑)。シーズン後半にプレータイムを伸ばしていたのを見ると、目標体重は達成したのだと思います」
仕事として、バスケに関わることの醍醐味
――どんなスポーツもそうですが、試合はコントロールができないもので、最後までどうなるかわからない。それに関わるというのは、とてもエモーショナルなお仕事だと思うんです。加藤さんは、仕事としてバスケに関わることの醍醐味を、どこに感じていますか?
「まず、ファンの皆さんです。クラブの仕事は地味な作業も多いのですが、たくさんのお客さまが試合会場に来てくれて、その試合で勝つと最高の気分です。それに、北海道や沖縄まで応援に来てくれるファンの皆さんもいます。そういうのを見ると、嬉しい気持ちが一気に跳ね上がって、本当に仕事をがんばらないといけないと思う。
私たちクラブはモノを作っているわけではないので、試合も選手もどんどん変わるんです。“スポーツに関わる仕事をしたら辞められない”とよく言われますが、本当にその通りです。Bリーグの60試合、毎日、勝つか負けるかという環境で戦う選手たちを見ていると、本当にすごいメンタルを持っていると思うし、サポートしていきたいと思う。チームが勝っても自分がふがいないプレーをしたら喜ばない選手もいるし、自分が活躍してもチームが負けたら意味がないよって言う選手もいます。そういう姿を間近で見ていると、影響を受けますね」
文:石川歩
写真:白松清之
写真協力:川崎ブレイブサンダース