【スニーカー偏愛記】やっぱり、定番に戻る。スタイリスト・三島大輝が愛するアディダス『スーパースター82』とティンバーランド『3-EYE BOAT SHOE』
スニーカーとは、偏愛だ。たとえ同じモデルでも、抱く思いはそれぞれ。どこに刺さり沼落ちしたのか、履けばほのかに蘇るあの淡い思い出……。今回偏愛を語ってもらうのは、俳優やアーティストのステージ衣装やミュージックビデオ、ブランドのシーズンルック等のスタイリングを手がけるスタイリスト・三島大輝さん。彼がピックアップしたのは、『アディダス(ADIDAS)』の[スーパースター82]と『ティンバーランド(Timberland)』の[3-EYE BOAT SHOE]。
アディダス『スーパースター82』×三島大輝
「去年ぐらいから、また[スーパースター]を履きたいというブームが突然やってきたんですよ。履いてはいたものの、もう一度ちゃんと履いてみたら、今の気分とすごいマッチしたんですよね」
「僕、学生時代はずっと野球をやっていたんですけど、丸刈り野球小僧のくそダサで(笑)。当時はファッションも全然関心がなかったんです。中学のときに初めてちゃんと外出用のスニーカーが欲しくなって、買ってもらったのが『ADIDAS(アディダス)』。当時、野球で履いていたのが『NIKE(ナイキ)』のトレーニングシューズだったので、ナイキのスニーカーには、キツい野球の練習のイメージが勝手に刷り込まれてしまっていて。一方でアディダスはサッカーのイメージが強くて、どこかちょっとさわやかでシャレてる印象が……オフは、できるだけ野球と離れたかったんです」
「スーパースターを最初に見たときの印象は、鮮烈に残っています。カッコイイな、と。当時はこれを『どう履こう』というより、ただ純粋に履いてみたかった。このなんともいえない魅力が、ずっと変わらず定番としてあり続ける理由なんでしょうね」
「高校卒業後、野球を引退してからは、ひたすら映画を観ていました。映画の中でも特にブラックカルチャーの題材で出合うシューズは、どれもカッコよかったです。その中でアディダスは、より“いなたく”見えて、でもそこに“男臭さ”のような、カッコよさを感じていました。個人的には縦長のフォルムが好きなので、ひもをギュッと絞って履くことが多いです。そのときにできる履きジワも渋いです。新品でも、そういう見せ方をしたい。ヴィンテージの当時オリジナルものも興味はありますが、気づいたときには、高すぎて……。でも、いつか。憧れです」
「スーパースターはどんな服装にも合わせられますが、今回は、スポーツミックスを取り入れたセットアップに合わせました。ハズしではなく、そのまま王道のスーパースターを履くと、逆にオリジナリティが出るのかなという気がします。[ジョーダン]や[ダンク]も好きですが、スーパースターはトータルで見ると、控えめながら確固たる存在感に粋を感じます」
ティンバーランド『3-EYE BOAT SHOE』×三島大輝
「『ティンバーランド(Timberland)』の魅力を知ったのは、ここ5年くらいの最近の話。正直もともと、ちょっといなたい印象がありました。『アメおじシューズ』というか。それまでは洋服のテンションに合わせて、もう少しクリーンなデッキシューズを履いたりしていました。それが、バックグラウンドを辿っていくうちに、ヒップホップカルチャーのイメージから、アウトドアというより『不良性』的なカッコよさを感じて。コラボものの[3-EYE BOAT SHOE]を買ってみたら、めちゃ履きやすくて好きになりました」
「ソールも厚めで足元にボリュームも出るし、これまでの服に合わせると、どこか新鮮な仕上がりになるというか、スタイルに、『なんかちょっといいアングラな感じ』を出せる。そこからハマって、色違いやコラボものに手を出すように。僕はブーツよりも、3-EYE BOAT SHOE派です」
「触るとしっかりしているんですけど、履くと革が馴染んで本当に柔らかいんですよね。重厚感もあるので、コーディネートしたときに、足元のいい『かさ増し』になるんです。革靴でも、スニーカー感覚で履ける。正にタフで、ラフ。小雨くらいなら、履いちゃいます」
「合わせたいのは、こんな感じのコーディネート。ニューヨーク東海岸のブルックリンから、シティへ行くイメージ。クラシックで、言ってみればちょっと『おじ』っぽいんですけど。レイヤードにも、ヒップホップカルチャーを彷彿とさせる危険な香りをさせつつ……。古着のTシャツのグリーンは、僕のなかでNYのイメージカラー。このスタイルで、ニューヨークのチャイナタウンとかを闊歩していたら……と、妄想を膨らませつつ」
ニューヨークが好きすぎる
「僕、ニューヨークが好きすぎるんです。最初に行ったのは、大学の卒業旅行で。当時よく観ていた90年代〜2000年代のアメリカ映画の舞台もニューヨークが多くて、実際にこの目で見たら、なんかもう、大興奮(笑)。全てのスケールが大きくて、『自分が求めていたロマンはこれだ!』と感じましたね。ファッションも『服がオシャレ』とかじゃなく、その人のアイデンティティに服が乗っかってるというか、人そのものにパワーを感じました。それからもう、5回ほどは刺激を求めに行っています」
「ファッションも影響されました。クラシックなスポーツ要素をスタイリングに入れたら、モダンに仕上がって。僕自身は全くロマンチックではないですけれど(笑)、映画のムービースターがかっこよくて。劇中でリアルを演じているのにスタイルにロマンを感じる。そのバランス感を、スタイリングする上で表現したいと、常々思っています。実在する映画に、架空の新しい登場人物を生み出すみたいな感覚。そういう遊びも取り入れながら、スタイリングをしています。最近では、俳優やアーティストのステージ衣装やミュージックビデオを手がけることが多いです。スタイリングはもちろん、人との触れ合いがとても楽しく感じます」
「靴は手放すこともあり、どんどんアップデートしています。コレクションできればいいんですけど、目新しい物も気になって。でも、スーパースターや3-EYE BOAT SHOEのような定番のものは、ずっと持っています。常備しているのは、王道のメーカー5足ずつくらい、40足くらいかな。個性的なものにも惹かれて買ったりもしますが、結局は、定番モデルが残ります。古く愛され続けるところに、ロマンを感じるんですよね」