
バスケ選手が取り合う“最強の悪魔の実”は? 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ齋藤拓実選手×ONE PIECE【Bリーガーと漫画VOL.16】
お気に入りの漫画についてとことん聞いて、選手の個性にぐっと迫っていく『Bリーガーと漫画』。16回目は、名古屋ダイヤモンドドルフィンズの齋藤拓実(さいとう・たくみ)選手が登場。語るのは『ONE PIECE』(尾田栄一郎・集英社・ジャンプコミックス)です。
伏線から海外リークまで、ONE PIECE愛が深すぎるチームの会話
――今回『ONE PIECE』を選んだ理由は?
学生の頃からずっと読んでいる漫画だし、アニメも見ているので選びました。もちろん、家に111巻揃えているし、張り巡らされた伏線を追うのも楽しい。ストーリーの深さも含めて、とても良い漫画だと思います。週刊少年ジャンプもアプリで毎週欠かさず読んでいて、最近の話が1巻の伏線につながっていて驚いているところです。チームメイトもスタッフもONE PIECE好きが多いので、みんなで伏線について話し合っています。ONE PIECEは語り出したら止まらないですね。
――チームメイトとは、どんな話をするのですか?
(張本)天傑さんが中国生まれで、中国語を読めるんですね。それで、中国のSNSからネタバレを引っ張ってきて、「次のONE PIECEはすごい展開になっているぞ」と教えてくれるんです。だいたい伏線のソースは天傑さんが多くて、その情報を中東(泰斗)選手や今村(佳太)選手と一緒に「やばくない?」って話しています。
――中国のONE PIECE情報を話しているなんて、名古屋ダイヤモンドドルフィンズのONE PIECE語りは想像以上にマニアックです。
さらに言うと、天傑さんは「良い情報を見つけたぞ」と言ってインドの情報も引っ張ってきます。さすがにインドの文字は天傑さんも読めないのですが、絵を見て語れることがあるみたいで。ネタバレしたくてうずうずしている様子だから、「いいっすよ。僕も来週には日本で読むから教えてください」と言って話してもらいます。
――Bリーグの選手の中でも、齋藤選手はONE PIECEマニア度が高そうですね。
BリーグにはONE PIECE好きの選手がたくさんいますよ。その中で一番になりたいという気持ちは特にありませんが、以前チーム内でONE PIECEクイズが流行った時期があって、その時は僕と天傑さんが詳しかったです。
――どんなクイズですか? そのクイズ大会の様子を見てみたいです!
たとえば、「ONE PIECE1巻でゾロが磔にされた時に、おにぎりをあげた女の子の名前は?」。答えはリカちゃんです。新世界に入ってからはまだ2周ぐらいしか読み返せていないのですが、新世界前のクイズだったら自信がありますね。クイズの様子を配信してもいいけれど、質問を監修する人が必要ですね。天傑さんが監修してくれたらいいけれど、天傑さんも答えたいと思うんですよね。
齋藤選手が一番好きなキャラクターは?
――ONE PIECEの中で齋藤選手が一番好きなキャラクターは?
うーん……ひとりに絞るのが難しいですね。かっこいいなと思うのは、ゾロとトラファルガー・ローです。まだ謎があるキャラで気になるのはシャンクスです。あと、チームメイトと食事に行ったときに、MBTI診断をもとにONE PIECEのキャラクターで誰に似ているかを調べたことがありました。僕の結果はルフィだったんです。そういえば、中学生の頃にも何度か「ルフィっぽいね」と言われたことがありました。
かなり迷うけれど、好きなキャラをひとりに決めるなら、ゾロですね。ゾロは男の中の男だと思うし、ものごとを俯瞰して見て船長をしっかり支えているのがいい。大切なタイミングで、ルフィにきちんと伝える言葉にグッときます。
――印象に残っているゾロのセリフは?
パンクハザード編で、ルフィがシーザー・クラウンの“ガスガスの実”にやられて危険な状態になるシーンがあります。そのときゾロが、「“油断してた”で命取られても一巻の終わりだぞ!! 冗談じゃねェ!! おいルフィー!!! しっかりしやがれ!!! これからだぞ!!! “新世界”は!!!」(第68巻)と声をかけます。ゾロは口数は多くないけれど、必要なタイミングで簡潔に本質を伝えるのが良いです。
――現代社会にゾロがいたら、どんな靴を履いていると思いますか?
バルーンパンツにブーツのイメージがありますね。ゾロの足元は、ふわっとしたシルエットのパンツに、丈の長いロングブーツを合わせているイメージがありませんか。
――齋藤選手が最近よく履いている、お気に入りの一足は?
普段はアディダスのスニーカーをよく履いていて、シンプルなスタンスミスが多いです。スタンスミスはさまざまなコラボモデルがあって、カラフルでかわいいデザインのものも好きですね。パッと見はスタンスミスだけど、よく見ると「ちょっと違うな」とわかるような足元にするのが好きです。
バスケ選手が食べたい「悪魔の実」は?
――バスケットボール選手として、齋藤選手が感情移入するシーンやセリフはありますか?
少し強引にONE PIECEとバスケを重ねるなら、サンジがヴィンスモーク家の出身だとわかって、麦わらの一味を脱退しようとしたシーンです。ルフィはサンジを取り戻すためにホールケーキアイランドに行くのですが、サンジは一味に戻れない事情がある。
サンジはルフィとしたくもないケンカをするのですが、ルフィはやり返さないんですよ。サンジに一方的に殴られながら、ルフィは「おれの事蹴るだけ蹴っても!! 痛ェのはお前だろ!!! 旅はまだ途中だぞ!!!(…)サンジーーお前がいねェと…!! おれは海賊王になれねェ!!!」(第84巻)と言い切る。そこまで信頼しての仲間なのだと感じる言葉です。バスケットボールもチームスポーツで、ひとりでは何もできない部分が共通しています。シーズンで目指すべき目標があって、チームとして絶対に誰ひとり欠けることなく戦い抜きたいという思いは強いです。
――バスケ選手として最強になれる「悪魔の実」は何だと思いますか?
ピカピカの実かな。海軍大将の黄猿の能力で、光を操って光の速さで移動できる能力です。実は同じ話をチームメイトとしたことがあるんです。そのときは「対戦相手が悪魔の実を食べているかどうかで変わるよね」と話していました。コート上で自分だけが能力者なら、ゴムゴムの実もいいですね。びょーんと腕を伸ばして、全部3ポイントシュートで入れられる。どちらにしても、バスケでは光の速さで動ける能力が一番強いかなと思います。一つの実から複数の能力者は生まれないので、ピカピカの実は取り合いになりますね。
――齋藤選手がピカピカの実の能力者として、ONE PIECEの世界に入ったら何をしたいですか?
齋藤拓実としてONE PIECEに出るんですよね? 難しいな……。楽しそうだから麦わらの一味に入りたいです。入るなら最初のイーストブルー編から仲間になりたいですね。グランドラインの前で、ルフィ・ゾロ・ナミ・ウソップ・サンジの5人が樽に足を乗せて自分がやりたいことを叫ぶシーンがあるのですが、あの樽に6人目の麦わらの一味として足を乗せたいです。
ONE PIECEキャラから見る、名古屋ダイヤモンドドルフィンズの個性
――名古屋ダイヤモンドドルフィンズのチームメイトをONE PIECEのキャラクターにたとえるとしたら、誰がどのキャラに近いと思いますか?
チーム内の異名として、佐藤卓磨は濡れ髪のカリブーと呼ばれています。見た目が似ているわけではなくて、卓磨はべとべとになるまで髪にジェルをつけるんです。みんなから「今日も濡れてるね」と言われるうちに、濡れ髪のカリブーと呼ばれるようになりました。本人は「全然似てない!」と怒っていますが。
写真提供:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
――齋藤選手自身をONE PIECEキャラクターにたとえると誰ですか?
MBTI診断で出たように、ルフィに似ている部分はあるかなと思います。僕もちょっと自由なところがあるので。
写真提供:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
――ゾロは?
今村佳太ですね。多くは語らないけれど、コンパクトに要点を話します。あと、佳太は手術痕や小さな傷など、体にたくさんのバスケの傷が残っていて、そこが剣士っぽいです。
写真提供:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
コビーは(加藤)嵩都です。まっすぐにバスケに向き合っている選手で、プレーについていろんなことを質問してくれる感じがコビーに似ています。嵩都はバネがあってスピードがすごいんです。ピカピカの実の“ヒューン”というより、ブーストがかかった“ギュイーン、ビヨーン”という感じ。プレースタイルはベラミー感があるのですが、性格はコビーっぽいですね。
写真提供:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
――あと一人たとえるなら誰ですか?
赫足のゼフとショーンさん(ショーン・デニスヘッドコーチ)はどこか重なるところがあります。見た目や年齢の近さもありますが、ゼフは海賊上がりの総料理長で、ショーンさんもどこか海賊の血が残っちゃってる感じがします。ゼフは食べ物を粗末にする人には厳しいけれど、食べる人への愛情が深い。ショーンさんもバスケに対してすごく厳しくて熱い人ですが、オフコートはめちゃくちゃ優しい。大切なものに対する愛情の大きさと、本来の優しさを合わせ持っているところが似ていると思います。
写真提供:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
――最後の質問です。ルフィの「夢の果て」は何だと思いますか?
全種族の交流なのかな……と思っています。最近のネタバレや最新のジャンプを読んでいると、それがONE PIECEの総論のように思えてくるし、とてもルフィらしい考え方です。ONE PIECEには、巨人族やトンタッタ族、バーソロミュー・くまのバッカニア族、百獣海賊団キングのルナーリア族など、希少な種族がたくさん出てきます。そして、ワノ国ではヤマトが“心は男性”として、菊之丞は“心は女性”として、心の性別に従ってお風呂に入る描写があります。種族だけじゃなくて、性のありかたも含めて多様性の部分を自然に描いているのがすごいし、尾田栄一郎先生ぽいなと感じます。
取材・文:石川歩
写真:水野由佳
取材・写真協力:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ