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「僕は操作系か放出系」宇都宮ブレックス村岸航選手×HUNTER×HUNTER【Bリーガーと漫画VOL.15】

2025.01.03

お気に入りの漫画についてとことん聞いて、選手の個性にぐっと迫っていく『Bリーガーと漫画』。15回目は、宇都宮ブレックス村岸航(むらきし・わたる)選手が登場。語るのは、『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博・集英社・ジャンプコミックス)です。

村岸選手の“念の針”は、いつ抜けた?

――『HUNTER×HUNTER』を選んだ理由は?

子どもの頃から読んでいる好きな漫画で、今回の取材の話を聞いた時に最初に浮かんだのがHUNTER×HUNTERでした。少年漫画にありがちな「どっちが強いか、弱いか」という単純なバトルではなくて、登場人物の能力が複雑に絡み合って深いストーリー展開になっていくのが面白いです。設定の説明文を読むのも楽しいです。

――天空闘技場編、グリードアイランド編と読んでいくと、キメラアント編でストーリーがより複雑になって深みが出てきますね。

僕はキメラアント編が一番好きです。ここから作風が変わりますよね。グリードアイランド編はカードを駆使してバトルを繰り広げて、最終的にゲームをクリアするという流れです。その後のキメラアント編は人間模様を描いていて、ラストシーンがすごく悲しくて、うるっとくるんです。

「僕は操作系か放出系」宇都宮ブレックス村岸航選手×HUNTER×HUNTER【Bリーガーと漫画VOL.15】

キメラアントはいろんな生物の特性を吸収した個体で体が強くて、人間では太刀打ちできない。中でも王のメルエムは最強で、どんな念能力者でも勝てないんです。その王がだんだん人間の情を思い出して、最後は人間のメルエムとして自分の大切な人と最期を過ごしたいと願い、その思いを遂げて死んでいく。

キメラアント編を読み始めた時は、キメラアントは絶対悪で、人間がその悪にどう立ち向かうかという展開を想像していたんですが、最後は人間とキメラアントが逆転するくらいにキメラアントの人間らしさが描かれます。こういう展開の複雑さがHUNTER×HUNTERの魅力です。

――HUNTER×HUNTERで、村岸選手が一番好きなシーンは?

ゴンがパームとデートをしている時に、キルアが尾行するシーンがあります。尾行中の森の中で、キルアはキメラアントのラモットに会ってしまう。でも、念能力が使えなくなっているゴンに戦闘をさせるわけにいかないから、一人で戦います。僕はその戦闘シーンが一番好きです。

「僕は操作系か放出系」宇都宮ブレックス村岸航選手×HUNTER×HUNTER【Bリーガーと漫画VOL.15】

キルアって暗殺一家のエリートなんですが、お兄さんのイルミに溺愛されていて「勝ち目のない敵とは戦わずに逃げろ」という念の針が刺されています。一種の洗脳ですね。キルアは額に刺された念の針に気づいていなくて、ゴンを守りたいのに体は逃げようとしてラモットにやられちゃいます。でも、最後には友だちのゴンを絶対に守るという気持ちを貫いて自力で念の針を抜く。キルアはそこで覚醒して、ラモットを一瞬で倒すんです。キルアが一皮剥けて強くなるところがかっこよくて、好きなシーンです。

――村岸選手は、バスケットボール選手としての“念の針”が刺さっていたことはありますか?

僕は2022-23シーズンに練習生で(宇都宮)ブレックスに入って、昨シーズンから選手契約をさせてもらっていますが、練習生から上がった時は、B1リーグの中で自分の実力は下位のほうだと自覚がありました。念の針で表現するなら、「ボールをもらっても僕が攻めていいの? ミスしちゃうんじゃない? もっと上手い人にパスをさばいて攻めてもらえばいいんじゃないか」という念の針が刺さっていたと思います。僕がシュートを打つよりもD.J(ニュービル)にパスを回して打ってもらったほうがいい、マコ(比江島慎)さんが打ったほうが確率が高いと理屈で考えて、僕は自分ができることをやればいいという意識はありました。

「僕は操作系か放出系」宇都宮ブレックス村岸航選手×HUNTER×HUNTER【Bリーガーと漫画VOL.15】

――どうやって念の針を抜いたのですか?

消極的なプレーをした時にコーチから「打っていい」と言われ続けてきて、そういう日々の練習の積み重ねの中で針が取れていきました。チームとして回ってきたパスはみんなで作ったプレーだから、僕が打たないことによってみんなのプレーがなかったことになると言われました。僕がシュートを打って、みんなで繋げたプレーを自分で完結させることがチームのためになると言ってもらって、そこから自信を持って強気なプレーができるようになりました。

宇都宮ブレックスの選手をHUNTER×HUNTERのキャラクターで例えると?

――宇都宮ブレックスの中のゴン=フリークスは誰ですか?

アイザック(フォトゥ)です。ゴンの元気で陽気で天真爛漫な雰囲気が、アイザックに似ています。ゴンはふわっとしている部分があって天然なイメージもあるんですが、戦う時は怖さを見せます。このコントラストがアイザックと重なる部分があります。

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©TOCHIGI BREX INC.

――キルア=ゾルディックは?

小川(敦也)選手です。キルアって能力が高いし、音速で動けるキャラクターです。ブレックスの中の潜在能力が高くて速くて若い選手ということで、小川選手だと思いました。小川選手は世代別の日本代表にも選ばれていて将来を嘱望されているし、カリスマ性があるのもキルアに似ています。

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©TOCHIGI BREX INC.

――クラピカは?

クラピカは難しいのですが……(竹内)公輔さんです。クラピカって能力が高くて、あまり周りの人を頼りたがらない。情が厚くて、優しすぎるゆえに人を頼らない孤高の人というキャライメージがあります。今では公輔さんは気さくで優しい人だとわかっていますが、最初に会った時は孤高の人という印象でした。自分でなんとかできる強さがある部分にも、クラピカと公輔さんは通じる部分があると思います。

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©TOCHIGI BREX INC.

――レオリオ=パラディナイトは?

遠藤(祐亮)さんです。遠藤さんを一言で表現するなら「ナイスガイ」で、レオリオと重なります。ゴンの病室に行こうとしない父親のジンに激怒してぶん殴るシーンが象徴的ですが、レオリオもナイスガイです。以前、子どもたちと一緒に撮影する機会があったのですが、僕は人見知りでどう話していいかわからないのに、遠藤さんが気さくに子どもたちと話して場の雰囲気が和みました。遠藤さんは、全体のことを考えて振る舞うことができる誠実な人だと思います。

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©TOCHIGI BREX INC.

――ジン=フリークスは?

ジンはナベ(渡邉裕規)さんです。ジンは、自分が楽しいと思うことに全力で突き進んでいく印象があって、その姿勢がナベさんにも通じます。ナベさんはバスケ以外にも農業やラジオなど好きなことに精力的に取り組んでいて、そこがジンと似ている。あと、二人とも芯が強くて周りを引っ張る力があると思います。

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©TOCHIGI BREX INC.

――村岸選手は、HUNTER×HUNTERのどのキャラクターに似ていると思いますか?

シュートかな……。シュートは弱気で、「本当に大丈夫かな? でも自分ならやれるはず」って自問自答しているキャラクターですが、僕も同じような葛藤があるところが似ていると思います。

――シュートは、ユピーに立ち向かうゴンを見て腹をくくりますよね。

そうですね。覚悟を決めてユピーに挑んでいきますよね。そして、シュートは致命傷を負っても戦い続けて「死ぬ気でやったから命が永らえたんだ」と自覚するんです。HUNTER×HUNTER風に言うなら、僕もシュートのような献身性をもって、必死にやっていくことで、チームが良い結果を残せたらと思っています。

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©TOCHIGI BREX INC.

――村岸選手が一番好きなキャラクターは?

キルアかクロロで迷いますね。38巻で幻影旅団ができた背景がわかって、クロロに感情移入する部分があります。最初は大悪党で同情できなかったのですが、子ども時代の凄惨な体験が明かされて。クロロは自分が悪をすべて背負うことで、仲間と故郷を守ると決めたんですよね。その覚悟がかっこいい。好きなキャラクターを一人選ぶなら、クロロですね。

――クロロが現代社会にいたら、どんな靴を履いていると思いますか?

黒のプレーントゥです。もしもクロロが現代社会にいたら、綺麗めの格好をしていると思います。ですから、綺麗めの服装に似合う黒のプレーントゥを履いていると思います。

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ビビリな僕が、ヒソカから影響を受けたこと

――HUNTER×HUNTERの念能力6系統だと、村岸選手は何系ですか?

操作系か放出系です。僕は中〜遠距離向きで、相手に近づかずに攻撃できるほうが性格に合っています。もともとできるだけリスクを回避したい性格なので、中距離を保ったまま自分のフィールドにもっていけたり、離れた距離から攻撃できたりするほうが自分らしいと思います。

――村岸選手は慎重な性格なのですね。

私生活では安定したい部分がありますね。数年前にダイビングに行ったのですが、酸素ボンベで呼吸できるとわかっているのに海に潜ったら怖くなって、これは無理だと思って浮上しました。友だちはダイビングを楽しんでいたのに、僕はずっと船の上で過ごしました。最近も、南海トラフ地震臨時情報のニュースが出ていた時に太平洋沖の離島に行く計画があったのですが、地震が起きたら怖いので別の場所に変更してもらいました。ビビりなんです。

「僕は操作系か放出系」宇都宮ブレックス村岸航選手×HUNTER×HUNTER【Bリーガーと漫画VOL.15】

――今回、「表紙のヒソカが好き」ということで34巻を持ってきてくれました。ヒソカはビビりとは真逆の性格ですね。

ヒソカは戦闘狂で、良いキャラクターだと思います。自分の強さと好奇心を追求している部分は、他の作品の主人公と変わらない気がして。やっぱりバトル漫画は、強いキャラクターが魅力です。

僕はHUNTER×HUNTERでいうとシュートに似ているので、強い敵と戦いたいというより「あいつに勝てるのか?」って常に自問自答しているほうです。ただ、これはバスケに限らないですが、勝負の場に立つなら自分がどれだけ強いのか、どこまでやれるのかを追求する姿勢は大切だと思います。自分にはその気持ちがまだ足りていないので、これからも負けん気の強さを磨きながら、自分のバスケを追求していきます。

「僕は操作系か放出系」宇都宮ブレックス村岸航選手×HUNTER×HUNTER【Bリーガーと漫画VOL.15】

取材・文:石川歩
写真:高橋マナミ
取材・写真協力:宇都宮ブレックス

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