プーマ担当者がスニーカーを語る。まとめ3選『ラルフ サンプソン デミ OG』『ライダー』『スウェード』
普段から多くのシューズに触れている各メーカーの担当者に、お気に入りのシューズについて聞く “担当者がスニーカーを語る” シリーズは開始から約3年。これまで複数のメーカーさんより、数多くのシューズをご紹介いただきました。そこで、今までに登場したシューズの数々を、各メーカーごとにまとめてご紹介していきます。
今回は『プーマ(PUMA)』のスニーカー3モデルをご紹介。ドイツ発祥、世界的スポーツブランドが誇る人気スニーカーについて、スニーカーマニアとしても知られるプーマ ジャパンの野崎兵輔さんが語ってくださいました。
(1)ラルフ サンプソン デミ OG「履く人にとってオンリーワンのシューズになる」
NBAで主に1980年代に活躍し、4度のオールスター出場、MVP選出など、輝かしい功績を残したラルフ・サンプソン(Ralph Sampson)。その名を刻んだこのモデルは、何度も復刻盤が発売されました。そんなラルフ サンプソン デミ OG<RALPH SAMPSON DEMI OG>の紹介記事は、2020年5月に公開されました。
――『ラルフ サンプソン デミ OG』はどんなスニーカーですか?
ラルフ サンプソン デミ OGのオリジナルが発表されたのは1985年。オリジナルのプロダクトネームは『サンダーボルト デミ』です。ミッドとローの2種類があり、昨年復刻されたラルフ サンプソン ミッド OG※(マジェスティ)、ラルフ サンプソン ロー OGのバリエーションの1つとして展開しています。
※製品名はMID表記ですが実際はハイカット。
メッシュのアッパーに天然皮革の補強パーツを使用。軽量で通気性に優れたモデルですね。オリジナルは北米のみで販売され、ローカットのクイックネスとハイカットのサポート性を持つデミカットのモデルは、多くの学生プレーヤーやNBA選手のサマーキャンプ用シューズとして人気でした。
――譲れないお気に入りのポイントは?
ビジュアルはオリジナルを尊重、ですが、タウンユースとしても最適な仕様で復刻されているところですね。
アッパーに使用されている天然皮革は、上質なものが使われているので、手入れをしながら履き込んでいくといいでしょう。革靴のような経年変化が楽しめます。ただ、革靴とは違ってソール交換が出来ないので、ローテーションで履きます。じっくりと長く大切に愛用していきたくなるシューズですね。
またクラシック トレーニングシューズの復刻版の生産で実績のあるルーマニア メイドというのもポイントですね。1980年代のシャープで美しいシルエットが再現されていて、オールドスニーカーファンにも納得してもらえると思います。
過去に何度か復刻を果たしているモデルですが、今回の復刻が間違いなくナンバーワンと言えるでしょう。
――『ラルフ サンプソン デミ OG』とのストーリーを教えてください。
実は数年前にオリジナルのサンダーボルト デミを入手しました。コンディションはイマイチだったのですが、どうしても欲しくて資料用に購入しました。サンダーボルト デミはマニアックなシューズ。競技用シューズとして履きつぶされているため、現存数は少なく、且つ北米のみでの販売であった背景から絶対に復刻されないと思っていました。
だから今回の復刻は本当に驚いたし、サンプルを見た時点で購入を決意しました。履けないオリジナルを眺めるだけだと思っていたので、ガンガン履ける復刻モデルは本当に嬉しい。新品から履き込んで、手入れをしながら自分だけの逸足にする。
着用する人それぞれの変化がアッパーに表れるので、その人にとってオンリーワンのシューズになると思います。
(2)ライダーシリーズ「小学生の時、憧れのファストライダーは18,000円…」
1980年代に発売したランニングシューズのライダー<RIDER>。プーマのアイコニック的な存在でもあり、今やライダーと名の付く様々なモデルが発売されています。プーマのクラシックランニングシューズの名作にして、誕生から40年目(2020年当時)にして新たに進化したモデルについて、語ってくれました。(2020年7月)
――『ライダー』シリーズはどんなスニーカーですか?
今回特にオススメしたいのが、ライダー<RIDER>シリーズ誕生から40年のアニバーサリーイヤーを迎える今年発表された『ファストライダー ソース<FAST RIDER SOURCE>』『フューチャーライダー<FUTURE RIDER>』『スタイルライダー<STYLE RIDER>』の3足です。
まず、ライダーシリーズの元祖とも言えるファストライダー<FAST RIDER>がデビューしたのが1980年。
ファストライダーは、二股のスタッドが着地時に開くことで衝撃を吸収し、元に戻ろうとする力で反発性を生み出すフェダーバインソールを搭載した画期的なランニングシューズです。世界的に権威のあるランニング誌『Runner’s World』のシューズ テストで最高の5スターを獲得したほどでした。このシューズの開発に関わったのが、当時バイオメカ理論の第一人者と言われたピーター・カバナー博士。今年発表されたファストライダー ソース<FAST RIDER SOURCE>は、名前の通り、オリジナルを踏襲した仕様です。プーマらしいシャープなシルエットと、スポーティーな配色が魅力です。
そしてフューチャーライダーは、ファストライダーの細身で綺麗なシルエットを残しつつ、ミッドソールには反発性の高いモールテドEVAを採用して、弾むような履き心地を実現しています。スタイルライダーはシルエットはボリューム感があり、アッパーの外周を包み込むような、曲線型のミッドソールが特徴です。粗目のオープンメッシュ、毛足の長いスウェード補強などレトロな外観を持ちながら、クッション性と安定性を両立し、快適な履き心地を持ったシューズに仕上がっています。
フューチャーライダー、スタイルライダーはともにオリジナルのフェダーバインソールとは異なった単一のスタッドに変更し、快適に街履きできるようアップデートされています。
――今回発表された3足のお気に入りのポイントは?
フューチャーレトロな外観と、それぞれのシューズが持つ個性的な履き心地が気に入っています。オリジナルモデルを尊重しながら、色々なファッションやライフスタイルに合うように上手くアップデートされていると感じています。
普段からクラシックなスニーカーを愛用している方なら、ファストライダーは鉄板モデルと言えるでしょう。
また、クラシックなスニーカーしか履かない方にも、フューチャーライダーやスタイルライダーであれば、自信を持ってオススメ出来ます。若いスニーカーファンの方々にとっても、レトロランニングモデルのフィーリングと、現代的なシルエットを持つスニーカーとして受け入れてもらえると信じています。
――『ライダー』シリーズとのストーリーを教えてください。
ファストライダーこそ、僕が初めてスポーツブランドのシューズを意識したモデルです。小学校5年生の時(1982年)、スポーツ店で旧西ドイツ製のものが18,000円で売られていました。
ブルー/イエローという配色と、何よりスパイクのようなイボイボのソールの見た目に心を奪われてしまったのですが、当然、買ってもらえるわけが無く、長きに亘り憧れの一足になりました。
発売から30周年の2010年に初めて復刻され、昨年末にも復刻。もちろん両方とも購入して履いています。子供の頃憧れだったオリジナルも入手し、全部で3種類をコンプリートしました。
そんな思い入れの強いファストライダーのバリエーションとして登場した、フューチャーライダーやスタイルライダーもお気に入りで、インラインモデルやコラボレーションモデルまで幅広く愛用しています。
(3)スウェード「不変の美しさ。トレンドが変化しても、常にストリートにある」
不変の美しさが魅力のプーマの定番モデルの一つであるスウェード<SUEDE>。1968年に初めて登場して以来、様々な世代を代表する人たちから愛されてきました。“同じカラーリングは二度と作らない”というこだわりを持つこのシューズについてのインタビュー記事は、2021年2月に公開されました。
――『スウェード』はどんなスニーカーですか?
スウェードのルーツは、バスケットボールシューズとして開発された『クライド<CLYDE>』です。(CLYDEとは、1967年~80年に米国のプロ・バスケットボールプレーヤーとして活躍したウォルト・フレイジャーのニックネーム。プーマクラックは、更にそのOGという位置付け)
プーマは、1979年にウォルト・“クライド”・フレイジャーとの契約が終了すると、クライドの刻印を外した仕様で継続販売を行います。クライドはオン・コートだけでなく、ストリートでも人気があった為、このシューズの存続を訴える声が上がったことがその理由です。
その当時のプロダクトネームは『PUMA』。プーマの『PUMA』……。このシューズを愛用していた人たちも、きっと違和感があったと思います。
そんな中で、このシューズを「プーマのスウェードの靴」と呼ぶ人たちが現れはじめました。実は、『プーマ スウェード(現在はスウェード クラシックという商品名)』というプロダクトネームは、ストリートでの呼称から名付けられているのです。
スウェードは、1979年から80年代中期までは、アッパーとソールを接着剤で接合するセメント製法で作られていました。80年代中期以降は、アッパーとソールの接合強度を上げる為にサイドマッケイ製法にアップデートされています。このタフな仕様にシンプルなデザインのシューズは、世界中から販売のリクエストを受けるようになります。ニーズが増えたことによりヨーロッパの生産だけでは間に合わなくなり、アジアにも生産の拠点を設けることになりました。そして、1990年に入るとスウェードの生産はアジアで行われるように。
1990年代、スウェードがストリートユースのシューズとして生まれ変わる為に、細身でスタイリッシュなラスト(木型)が用いられることになったのです。世界中で最も多くの方々に愛された1990年代のシルエットを再現したのが、スウェード クラシック XXIです。
――譲れないお気に入りのポイントは?
時代に合わせてアップデートは行われていますが、やはり不変の美しさです。スニーカーのトレンドが変わっても、常にストリートに存在していることも魅力です。
シューレースを交換する楽しみ。アッパーの色に合わせるのか、フォームストリップに合わせるのか、全く違う色を持ってくるのか。シューレースは細いモノなのか、太いモノなのか。シンプルだけど、自分の個性が発揮出来るんです。洋服の色、プリントの色など、コーディネートする楽しみを教えてくれるシューズであることです。
――『スウェード』とのストーリーを教えてください。
私が初めて手に入れたのが、1990年代に売られていたプーマ スウェードです。いわゆる当時の現行品です。
フォレスト グリーンに白いラインのプーマ スウェード。当時(1991、92年頃)、日本ではプーマ スウェードの展開が無く、並行輸入品を購入しました。シンプルな2トーンのシューズを、大好きな英国のミュージシャンたちが格好良く履きこなしていたことが購入の動機です。
色々なシューズを履きますが、1990年代前半に並行品を手に入れてから今までずっと、自分の靴棚にあるシューズはプーマ スウェードだけです。足入れの頻度は変わることがあっても、常に手元にあるシューズ。定番の5カラー(Puma Black-Puma White、High Risk Red-Puma White、Peacoat-Puma White、Steel Gray-Puma White、Puma Black-Puma Black)は、履き潰したら買い替えられるのも魅力。
またシーズナル カラーについては、同じカラーリングは二度と作らないという拘りも格好良いと思います。(同じようなカラーはリリースされていますが、パントーンのカラーを変えています)普通だけど、実はコレクタブルなアイテム。スウェードは、きっとこれからも自分の近くに居続けるシューズだと思っています。