シューズアドバイザー藤原岳久のランニングシューズレビュー!/サッカニー『フリーダム ISO2』
藤原岳久
選ぶ、履く、使いこなす、シューズお買いものトータルプロデュース。一般社団法人日本フットウエア技術協会理事。スポーツシューフィッター資格認定講座講師。2時間34分28秒 (2018年別府大分毎日マラソン)
ランニングシューズの魅力とオススメポイント、そしてちょっと踏み込んだ豆知識に迫る、シューズアドバイザー・藤原岳久のランニングシューズ企画。ご自身もフルマラソンを2時間34分28秒で走るランナーであり、また、一般社団法人日本フットウエア技術協会理事でもあります。そんな藤原さんが、今オススメのランニングシューズについて、独自の視点でざっくばらんに語ります。
今回は、世界最古のフルマラソン、あのボストンマラソンと同じくらいの歴史がある創業120年『Saucony(サッカニー)』のランニングシューズの魅力をお伝えしていきます。
ランニングシューズ『サッカニーフリーダムISO2』はまさにフリーダム
みなさん、こんにちは。シューズアドバイザー藤原です。さて、今回は、サッカニーのフリーダムISO2<FREEDOM ISO 2>をご紹介します。
このシューズ、まさにサッカニーの機能のオールスター。アッパー(シューズ上部)は、サッカニーではお馴染みのフィット感を増す構造『ISOフィット』を採用。今回からニット化され、『ISOニットフィット』になりました。ミッドソールには、これまた、サッカニーの代名詞『エバーラン』というクッション材がフルレングスで使用されています。アウトソールも評判のクリスタルラバー。デザイン的に、とてもグッドです。
フリーダム(自由)というネーミングのその名の通り、その使い方はそのランナーに委ねられたようなシューズですね。カラーリングも豊富で、そのルックスもナイスなシューズは街歩きに最適。アスレジャーといったアスレチックウエアをオシャレに着こなすアメリカンカルチャーを感じずにはいられません。
あの米ランナーズワールド誌にフリーダムISO2の使用用途のコメントに
「”Saturday long runs and Sunday morning strolls”
土曜日にはロングランに使って、日曜日は朝の散歩に使う」
とありました。なんて、ウイットに富んだ表現なんでしょう。これ、いただきます! まさに自由気ままに使って欲しい、そんなシューズです。アメリカ人なら知らない人がいないサッカニー、そのもっともホットなシューズ、フリーダムISO2をもっと詳しくみてみましょう。
ISOフィットが進化、機能性とデザイン性が増す作りに
アッパーの『ISOフィット』は、今回のシリーズ2から、ニットアッパーに変わり『ISOニットフィット』になりました。これがデビューモデルとの大きな変更点ですね。
『ISOニットフィット』とは、甲周りのフィット感を出す構造で、まるでソックス。ちなみに、甲周りがフィットすることは、履き心地のとても大切なポイントです。シューレースで締め上げるだけのフィット感は、まったく快適ではありませんからね。甲周り全体のフィット感をぜひ体感してみてください。
ニットアッパーは、セーターのように編む技術ですので、ダイレクトなブレサブルホールを作ることも容易です。これがメッシュとの大きな違いであり、アドバンテージです。
このモデルもソックスの色が分かっちゃうぐらい、通気性抜群です。また、単純にニットアッパーは、見た目もグッド。おしゃれ感が増しますね。
『エバーラン』クッションはシューズ界潮流のポリウレタンソール
ミッドソール素材に『エバーラン』をフルレングスで採用するフリーダムISO2はブランドの上位モデルです。ズバリ、この素材は最近の潮流、ポリウレタンソールで、従来の素材のようなスポンジ構造ではないので、とても耐久性が高いのが特徴です。経年劣化によってソールの元気がなくなるヘタリがおきにくい素材です。
また、反発があるのが大きなメリット。分かりやすく言えば、エバーランは小粒のスーパーボールが集まったようなソール。とてもソフトでバウンジーな感触をイメージしてもらえることでしょう。クッションがあるだけでなく、推進力を生み出す、そんなクッションですね。
そして、エバーランが特徴的なのは、常にそのクッションを楽しめる仕掛け。インソールを外すと見える素材、トップソール(ミッドソールとインソールの間のボード)は、ミッドソール素材のエバーランです。まさにダブルクッション。足の裏に直接クッションの感覚が伝わる工夫がされています。
だからこそ、走ってみると、そのスタックハイト(厚み)以上にクッションを感じるのでしょうね。そして、アウトソールは、グミっぽいクリスタルラバーが特徴的。街履きとしては、そのシューズの裏側も見せたくなりますね。デザイン性もそうですが、そのグリップ機能もしっかりしています。
レスドロップでナチュラルランスタイルを演出
『ナチュラルラン』という言葉を聞いたことがあるかもしれません。なんとなくフワッとした言葉ですが、これはサッカニーのように『レスドロップ』シューズで走ることといってもいいでしょう。
レスドロップとは、ソールに傾斜がないこと。フリーダムISO2も、実はドロップ4mmとシューズに高低差がなく、ほぼフラットに近いものになっています。そのため、ランナーが自身で少し前傾する必要があり、自然な重心移動を意識できる構造になっているというわけ。
一般的なドロップの効いたトレーニングシューズ(10~12mmドロップ)は、坂道のソールなので、前傾を誘導する感覚が強いのに対し、レスドロップはそれが自然で、ナチュラル(自然)ランと言われる所以です。ですから、“ときにはファッションシューズ、またあるときには、ジョグで使う”という楽しみ方のランナーにピッタリです。そして、難しいこと抜きに、自然にフォームを意識させられる感じは、トレッドミルでのランニングにピッタリですね。私の場合、フリーダムISO2は、ここで多く使ってます。
ランニング習慣があるランナーは履き分けを!
基本的には、このシューズはサッカニーのラインナップの中でレーシー(速く走るシューズ)な目的で作られています。スピード練習やレース(大会)などに使用する1足としても最適。フルエバーランソールのそれは、レーシングシューズとして、アドバンテージでしかありません。
ただ、付け加えておきたいのは、ランニングをすでに習慣化して走っているというランナーには、このシューズだけを使用するのではなく、トレーニングシューズと履き分けるべきです。トレーニング頻度が増えるほど、体を支える時間が長くなります。自分で頑張るか、シューズが頑張るか、ってことになるわけで、時間や距離が長いとき、体調に不安があるときは、トレーニングシューズを。気持ち良くスピードを出して走るときに使用するのは、このシューズという具合に。そうすることでこのシューズの良さも、さらに引き出されるでしょう。まずは、駅伝や10K(テンケー)のレースで使ってみてください。
ランニングシューズ・サッカニー『フリーダムISO2』の形は、日本人に合うラスト
サッカニーのこのフィット感を日本人が知らないのはもったいないですよ。サッカニーのシューズラストは、少し前足部に膨らみがあって、かかとが細い形になっているような足型で、日本人に合う人が多いからです。実は、足の厚みよりも幅がある足型は、ワイドじゃなくて、サッカニーみたいな前足部に膨らみがあるデザインがもっとも合うはずです。フリーダムISO2は、まさにその典型のシューズラストになっています。
そして、サイズ感。シリーズ1がややタイトなので、大きめにしようかと思っている方! こちらのシューズはサイズを大きくしすぎないことをオススメします。わたしは実測の0.5cmアップで問題ありません。ほとんどの方が、実測から0.5〜1.0cmアップで問題なさそうですよ。