4年目のBリーグ開幕!バスケは現地観戦が楽しい理由
10月3日、横浜アリーナで4年目のBリーグが開幕した。B1“THE”GAMEとして開催された開幕戦のカードは、川崎ブレイブサンダース vs. 宇都宮ブレックス。2チームとも日本代表選手を擁する人気チームで、木曜日の平日開催にもかかわらず1万人近くのファンが、横浜アリーナに詰めかけた。
落語からスタート!4年目のBリーグ。
ティップオフ前は、ブースめぐりが楽しい。この日、人気だったのは2019-20シーズンのチアアンバサダーになったスヌーピーとのコラボレーショングッズブース。スヌーピーがダンクするところをウッドストックが応援しているデザインのTシャツは、普段づかいもできそうなキュートな1枚。
川崎ブレイブサンダースは、川崎市を舞台にしたバスケットボール漫画『あひるの空』とコラボレーションを展開中。川崎のホームゲームでは、キャストのトークショーやコラボグッズの販売など、さまざまなイベントが予定されているので、あひるの空が好きな人はこの機会に川崎のホームゲームに足を運んでみては?
いよいよティップオフが迫ってきたころ、暗転した会場に流れたのは落語のお囃子。コートの中心にちんまり座った落語家の立川吉笑さんにスポットライトがあたると、まさかの落語演出にざわつく会場。しかし、さすがの吉笑さん、初めて宇都宮ブレックスを知ったときに、きっとほとんどの人が思うことーー“監督の名前、安齋なのか……!”を引き合いに、「最後まで…希望を捨てちゃいかん。あきらめたらそこで試合終了だよ」の名言を持ち出して、一気に会場を惹きつける。
「揺れ動く世界情勢で先行き不透明な時代に、1分1秒先さえ分からないバスケに惹かれる」の名言を残して、吉笑さん自らがスターティング5を呼び込むと、会場は大熱狂に包まれた。
田臥勇太をスターター起用! 宇都宮の出だしは?
宇都宮のスターティング5に、日本人初のNBA選手・田臥勇太が入るサプライズ! ほぼ1年ぶりの田臥のスターター起用に、わっと盛り上がる宇都宮ファン。宇都宮は、田臥、比江島慎、遠藤祐亮、ジェフ・ギブス、ライアン・ロシターの5人。一方の川崎は、藤井祐眞、篠山竜青、マティアス・カルファニ、ニック・ファジーカス、熊谷尚也と、今シーズン新加入のカルファニと熊谷をスターターに起用。
昨シーズンのクォーターファイナルで宇都宮に惨敗した川崎は、この開幕戦で雪辱を晴らしたいはず。そして、比江島・篠山・ニックは、今夏、ワールドカップを戦った日本代表選手であり、5戦全敗という結果から持ち帰った悔しさと学びを、Bリーグのコートで表現してくれるはず。エキサイティングな試合を期待するファンたちの熱気で、会場の温度はどんどん上がっていく。
開幕戦の初得点は、ロシターのフリースローから。昨シーズンのベストディフェンダーに選ばれた遠藤を中心に、宇都宮のディフェンスの強さが目立つが、いつもの宇都宮なら決めているようなシュートがリングに嫌われているのが気になる。
川崎がリードすると宇都宮が差を詰める展開で1Q残り4分14秒、怪我から復活した宇都宮の喜多川修平と、川崎の辻直人がコートイン。大歓声で迎えられる2選手に、このシューターたちの復活を待っていたファンは多かったのだなあと実感。喜多川が3Pシュートを決めると、川崎の藤井も3Pシュートを決め返す拮抗状態が続き、15-13の川崎2点リードで1Qが終了。
バスケの魅力の一つは、目の前で戦いが繰り広げられる迫力
2Qは篠山のシュートからスタート。204cmのカルファニと208cmのジョーダン・ヒースが守る川崎のゴール下が強い。両チームのディフェンス合戦のなか、開始1分24秒でヒースのリバウンドからカルファニのジャンプショットで19-15と、川崎が4点リード。2分54秒に篠山がゴール下で転倒しながらレイアップを決めて21-16にすると、会場は川崎ファンの大歓声に包まれる。
その直後、今度は比江島がフローターでやり返してバスケットカウントももらって21-19と点差を縮める。残り1分11秒、ファストブレイクからヒースのダンクで31-29、さらにヒースがブザービーターも決めて33-31、川崎が2点リードで前半を折り返す。
バスケ観戦の魅力はいろいろあるけれど、初観戦で驚くのは選手との距離の近さ。目の前で選手どうしがコンタクトする迫力と、あっという間に10人の選手が通り過ぎるスピードは、ほかではなかなか味わえない体験。選手の出す声も息づかいも聞こえる最前列の景色はこんな感じ。2メートル前後の選手を見ていると、遠近感が狂ってきて不思議な感覚になる。
日本代表のキャプテンが、開幕戦で残したもの
後半は、3点前後で川崎がリードする展開が続く。攻守が目まぐるしく入れ替わるなか、前半の30秒以上に渡って宇都宮の長いオフェンスが続く。最後はロシターのシュートが決まり、38-37と宇都宮が1点差に迫る。しかし、3Q残り3分3秒、ヒースの外したシュートを篠山がリバウンドからレイアップを決めて47-41と点差を広げる。
ワールドカップでは、海外の強いゴール下にアタックすることができず、海外とのフィジカルの差の課題が浮き彫りになった日本代表。その代表のキャプテンを務めた篠山が、Bリーグで強度の強いディフェンスやゴール下のコンタクトを実践しているのを見ると、本当にワールドカップの悔しさははかりしれないものだったのだなと、胸があつくなる。
54-45と川崎が9点リードで4Qスタート。開始43秒で藤井のジャンパーが決まり56-47と、じわじわと点差が開く。ヒースの得点で58-47と11点差がついたところで宇都宮がタイムアウト。それでも、宇都宮はここからの粘り強さがある。どんなビハインドでも諦めずに、最後まで戦い続ける選手が揃っているから、ファンも最後まで声援をおくる、それが宇都宮ブレックスというチーム。
残り4分55秒、宇都宮・橋本晃佑の3Pシュートで61-50の1ケタ点差にすると、まだ勝負のゆくえは分からないという会場の雰囲気。しかし、その直後に篠山の超ロングシュートで64-50にすると、流れは一気に川崎に。残り3分59秒にカルファニのダンクで66-50。宇都宮はロシターのリバウンドからのシュートで反撃するなど最後まで点を重ねるも届かず、78-57で川崎の勝利。
試合終了後、宇都宮の安齋ヘッドコーチは「自分たちのオフェンスが良い時間もあったが、川崎の激しいディフェンスで徐々に流れを持っていかれた。今日が一番底辺、あと59試合あるので、これから頑張ります」とコメントした。
3日後に開催された川崎戦GAME2も75-69で敗戦したが、その後は、滋賀レイクスターズ・千葉ジェッツ・シーホース三河に5連勝している。特に三河戦は、ジェフ・ギブス、竹内公輔、シャブリック・ランドルフのビッグ3を欠くなかでの2連勝で、今シーズンの宇都宮の大きな可能性を見せつけた。
一方の川崎・佐藤ヘッドコーチは「強度の高いプレーが見せられた。これからもスタートからフルスロットルでいく。エンジン全開をチームで続けていくゲームを毎回繰り返すことで、日本バスケもレベルアップしていく」とコメントした。その言葉を体現するように、その後の川崎は富山グラウジーズに1敗するも、それ以外の試合では10月20日時点で全勝している。
さあ、4年目のBリーグを楽しもう!
四年に一度の国際大会を来年に控える今シーズンは、“世紀の祭典に向けて”という言葉がたくさん出てくるだろう。Bリーグで戦う選手たちが、世界で戦うことを見据えて、勝利に貪欲に強度のあるバスケをするのは、見ていて楽しい。明確な“負け”もない代わりに、大きな“勝ち”もない私たちの日常のなかで、目の前の勝負を応援することでもらえるエナジーも大きい。
オープニングで立川吉笑さんが語ったように、1分1秒先が分からないのがバスケットボールの面白さ。まだ観戦したことのない人は、ぜひ会場で体感してみて。さあ、4年目のBリーグを楽しもう!
文:石川歩
写真:(C)B.LEAGUE