「オニツカタイガーを験担ぎに」滋賀レイクスターズ狩野祐介選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.24>
『Bリーグ×ファッションの密な関係』24回目は、滋賀レイクスターズのキャプテン・狩野祐介選手が登場。Bリーグが誕生した2016年にレイクスターズに移籍し、いま4シーズン目を戦っています。レイクスターズは過去3シーズン連続で残留争いを続けていましたが、今シーズンはメンバーが入れ替わり、21節終了時点で西地区の3位争いをする勢いのあるチームに生まれ変わりました。
今回は自分でつくる服のこと、家族とバスケのことを聞いてきました。狩野選手が、これまで積み重ねてきたものすごい練習量が垣間見えるインタビューになりました!
自分で服をつくるようになった理由は?
――今日のコーディネートは、狩野選手がご自身でつくっている『KARLY(カーリー)』が目をひきます!
「僕は私服にあまりこだわりがなくて、どこでもジャージで出かけるスタイルだったのですが(笑)、子どもが生まれてからきちんとした服を着るようになりました。やっぱり、格好いいお父さんでいなくてはと思って。カーリーは自分で着る用にオリジナルでつくっています。お店に行っても着たいと思う服がなくて、それなら自分が好きな服をつくろうって。世の中に一つしかないから、誰かとかぶることも無いです」
――自分の服を自分でつくるって、一番おしゃれかも! ロゴの下の数字は何を表現しているのですか?
「小学校からの背番号です。高校までは監督が決めた番号で、大学から自分で決めた番号です。背番号に意味を持たせる選手もいますけど、僕はわりとあっさり決めます。大学で空いている番号を見てパッと目に入った33を選んで、プロでは33に近い32を着けています」
――デニムはどこのものですか?
「『YVAM TOKYO』という知り合いが立ち上げたブランドです。ずっとスキニーを履きたくて、履けるパンツを探していたときに教えてもらいました。僕は肌が弱くて、スキニーを履くときに足の毛が引っかかって痛かったので、足だけ脱毛しました」
――本当だ! 膝下がツルツルだ! 狩野選手は、ユニフォームのときタイツを履かないので、美脚を見せて戦っているんですね。
「もうね、コートではツルツルの足を見せています(笑)。ファンで気がついてくれる方もいて、僕の足の写真を撮ってくれます(笑)」
――ファンのみなさんは、よく狩野選手を見ているのですね!
「銭湯で裸のときに握手してくださいって言われたときは、びっくりしました。『僕、裸ですよ』って言ったのですが(笑)、『裸でもいいです』って言われて。とっさに隠して、握手しました(笑)」
狩野選手が、験担ぎでやっていること
――今日はオニツカタイガーのFABREを履いてきてくれました。このシューズを選んだ理由は?
「普段はあまりハイカットを履かないのですが、シンプルでガツンとくる素材感とシルエットが好きで、このハイカットを選びました。このシューズを履きはじめてからチームが勝つようになったので、験担ぎもあって試合の日はこれを履くようにしています」
――滋賀レイクスターズ・狩野選手は、縁起を大切にするタイプですか?
「体育館に入るときや靴紐を結ぶときとか、けっこう細かく決めています。僕は試合の5時間前にしか食事を摂らないのですが、その理由も以前にそういう食事をしたときに調子が良かったので、そこから験担ぎをしています。ただ、5時間前に食べる量を間違えると試合中にガス欠になって体が震えてヤバい状態になるので、そこは慎重にやっています。結婚するときに奥さんがアスリートフードマイスターの資格を取ってくれて、試合後はオレンジと炭水化物を摂るように言われています」
――狩野選手は、レイクスターズに移籍した年に結婚されましたが、結婚するとバスケに取り組む意識は変わるものですか?
「変わりますね。家族を養わないといけないし、結果を残さないと家族にも負担がかかる。それに、家族に対してもメンツが立たないです」
「1年前に子どもが生まれてからは、さらに気持ちが変わりました。Bリーグは60試合あってその間にメンタルがやられるときもありますが、結婚してからは家に帰ると家族がいるから気持ちが楽になりました。息子の寝ている姿を見ると、もう一度頑張ろうという気持ちになります」
――パパがプロバスケ選手だとお子さんの将来にも影響を与えると思うのですが、お子さんがバスケ選手になりたいと言ったら狩野選手はどうしますか?
「僕からはプロの道を勧めないですね。プロバスケ選手は楽しいしやりがいもありますが、1日1日が勝負で辛いこともかなりある。結果が全ての世界で結果が出なかったらめちゃくちゃ落ち込むし、僕はけっこう辛い大学生活を送ったので。でも、本人がやりたいというなら本当に応援します」
東海大学バスケ部の、本当にキツかった練習
――狩野選手は東海大学出身です。東海大は、アルバルク東京の竹内譲次選手・田中大貴選手、サンロッカーズ渋谷のベンドラメ礼生選手・石井講祐選手などなど、たくさんのBリーガーの出身大学ですね。
「東海大はヤバいですよ。入ってくる選手一人一人の意識が高いから、少しでも休むとすぐに追い抜かれます。これだけたくさんのプロ選手を出しているのは、陸川(章)監督の存在が大きいと思います。僕は、練習は楽しくやっていましたが、トレーニングは本当にキツかったですね」
――狩野選手が今でも覚えている、大学時代のトレーニングはありますか?
「毎年夏にあった、山形のトレーニング合宿はキツかったですね。朝6時から陸上競技場をぐるぐる走るんです。400mと200mを延々と、もう陸上部みたいに走る。スクワット10回を100セット、ベンチプレスを100セットっていう体づくりもキツかった。ベンチプレスは最初は重りをつけているのですが、90セットくらいからバーだけでも上がらなくなってくる。東海大出身の選手は、体が強いと思います」
――トレーニングを想像するだけで気が遠のきそうです……。そこまで心身を追い込んでも、コートに立てるのは5人です。自分の思うようにいかないとき、メンタルがやられませんか?
「高校・大学と監督の影響もあって、自分がされてうれしいことを人にするというのを心がけていて、誰かがミスをしても絶対に怒らないようにしてきました。本人が最もミスしたことを分かっているし、監督に怒られてチームメイトにも怒られたらプレーに影響が出るし、その選手も伸びないと思う。僕は、そうやって溜めたストレスを抱え込んでしまうんです。大学2年のときに自分のプレーがうまくいかず、ストレスも溜まって全身に蕁麻疹が出てひどいことになりました。今でも毎日、ストレス性の蕁麻疹の薬をのんでいます。まあ、これが僕の人生なので、この病気とは付き合っていくしかないです」
仲良し・滋賀レイクスターズの息抜き方法
――今シーズンのレイクスターズのベンチは、とても楽しそうなのが印象的です。狩野選手は、キャプテンとしてチームをどう見ていますか?
「めちゃくちゃ仲がいいです。移動中は、みんなでゲームをしています(笑)。『大乱闘スマッシュブラザーズ』っていうゲームにハマっていて、(齋藤)拓実・アヴィ(シェーファーアヴィ幸樹)・(佐藤)卓磨・(中村)功平は、座席についた途端にゲームをはじめる準備をして、『まだ?』ってこっちを見てきます(笑)。3人の外国籍選手も本当に仲がいい。このあいだ5時間半のバス移動があったのですが、一回も途切れることなく3人で話し続けていました。3人ともNBA経験者で、特にジェフ(エアーズ)は練習中からバスケへの真摯な態度を見せてくれる。そういう姿勢にみんなが影響を受けています」
――狩野選手は試合で、『アシックス(asics)』のライトノヴァ<LYTE NOVA>を履いています。このシューズを選んでいる理由は?
「僕がバッシュを選ぶ基準は、軽さとグリップ力です。前はゲルフープ<GELHOOP>を履いていたのですが、ゲルフープのグリップ力をキープしたまま軽くなったのがライトノヴァです。本当はオリジナルのインソールが良いのですが、そうするとシューズが少し重くなるので普通のソールにしています。軽さは本当に大切で、僕はテーピングを巻くだけでも重く感じます」
――テーピングで変わるのですね! シューターは体の感覚に繊細なイメージがあります。
「たぶん、(サンロッカーズ)渋谷の石井選手や(シーホース三河)金丸(晃輔)選手とかもやっていると思いますが、爪は自分で試合前に研いでいます。僕は人差指・中指・薬指の爪だけ伸ばしていて、シュートを打つときに爪にボールが当たる音を確認しています。その音が鳴っていないと、指先までボールがいってないってことです」
――シュートが入らなくても打ち続けるのがシューターだと思いますが、連続で外すとくじけそうになりませんか?
「うまくいかなくても、考え過ぎないようにしています。プロになってからはとにかく打って、入らなかったら練習しようと思ってプレーしています。打って入らなかったら練習できるけれど、打たない試合は何もできない。少しでも体に違和感があるとシュートに響いてしまうのですが、そういう状態でも試合に響かないようにするために練習をしています。1日1日の過ごし方が、次の試合に関わってくるんです」
今回のインタビューで、狩野選手の繊細さと優しさが伝わったのでは? 狩野選手は、日本代表経験もあるシューター。決めてほしいシーンでシュートを決めるプレーは心強く、見ていて気持ちがいいです!
インタビューを読んで狩野選手が気になった方は、ぜひレイクスターズのホームゲームに足を運んでみてください! 積み重ねた努力が垣間見える狩野選手のプレーを見たら、きっと明日へのパワーチャージができるはずです。
文:石川歩
写真:高橋マナミ
写真協力:滋賀レイクスターズ