無観客試合から『カメムシ事件』まで。生粋のグラウジーズファン、てまえみそを語り尽くす! 【Bリーグ広報のてまえみそ<富山グラウジーズ編>】
富山県初のプロスポーツチーム『富山グラウジーズ』。今シーズンは、序盤にジョシュア・スミス選手が怪我で離脱して苦戦を強いられましたが、1月にアイザック・バッツ選手が加入してから勝ち星を増やし、2位と1ゲーム差まで詰めたところでリーグ中止。中地区3位で、シーズンを終了しました。
今回は子どもの頃から生粋のグラウジーズファンで、現在は広報を担当する細川彩芽さんに話を聞きました。
無観客試合からリーグ中止まで、富山グラウジーズ広報が見た選手の姿
――今シーズン最後の試合になった3月15日の三遠ネオフェニックス戦は、結果としてグラウジーズが負けましたが、オーバータイムにもつれこむすごい試合でした! 新型コロナウイルスの感染リスクとも戦いながらの試合でしたが、選手たちの勝利への集中力が伝わってきて、とても感動しました。
「無観客の2試合はティップオフが早くて、2日とも選手たちは他会場が中止になったことを試合後に知りました。中止のニュースにびっくりしていましたが、そこで士気が落ちているようには見えませんでした。ただ、無観客試合をやりづらいと話す選手は多かったです。いつもはアウェーチームの声援が選手たちの反動になって、それがプレーにつながるのに、その声がなかった」
「私もコート脇でカメラを構えていて、いつもアウェーでも届いてくる富山ブースターさんの声援に興奮しているのですが、無観客だとこんなに淡々と試合が進んでいくのだなと思いました。『プロバスケ選手はファンの皆さんと一緒に戦っているから成り立つ職業だ』と話す選手は多かったです」
――無観客試合の後、リーグが中止を決定するまで時間が空きました。その間、選手たちはどんな様子でしたか?
「無観客でリーグを続ける可能性もあったので、プロとして戦わないといけないという使命感は選手から感じていました」
「コーチ陣は、練習メニューに苦心している様子でした。コンディションとモチベーションを保つために、普段のリーグ中にはない走り込むメニューなど、かなりキツい練習が組まれていました。こういう時期だからこそ、バスケで気分を盛り上げようとしている意識は、各選手から感じていました」
“優しいお兄ちゃん”宇都選手と、ユニフォームを着忘れる前田選手
――グラウジーズといえば、『モテ男NO.1』になった宇都直輝選手がいます。広報さんから見て、宇都選手はどんな人ですか?
「リーグ開幕のころは赤髪でやんちゃなイメージがあったと思うんですが、落ち着いた……と言ったら怒られそうですが(笑)、本当に優しいお兄ちゃんです。今はこんな状況ですが、『こんな時だからこそ協力するよ』と言って嫌な顔をせず何度もオフィスにきて取材対応をしてくれます」
「練習後はレオ・ライオンズ選手、アイザック・バッツ選手、ジョシュ・ペッパーズ選手と、ハーフコートから誰が一番先にシュートを入れられるか競争していました。4人でハーフコートラインに並んで、シュートを打ち続けてる。日本人選手だと松山駿選手や松脇圭志選手を手下みたいに従えて(笑)、行動を共にしていることが多かったです。若手選手を可愛がる選手です」
――今シーズンの新人王に選ばれた前田悟選手は、シーズン序盤からスタメンに定着し、平均11.5得点と大活躍でした。広報さんから見た前田選手の“意外な素顔”を教えてください。
「富山ブースターさんにはバレているかもしれませんが……おっちょこちょいな人です。ティップオフ直前に、ジャージを脱いだらユニフォームを着ていないことが今シーズン2回くらいありました。コートインの直前に、ユニフォームを着忘れたのに気がついて、『あれ!? 着てない』って慌てていました(笑)」
「ルーキーイヤーでここまで活躍したので、前田選手の取材は多かったんです。ただ、負けた試合の後はロッカーからメディアルームに行くまでに『何を話せばいいんだろう』と自問自答しているのをよく見ていました。負けた試合で悔しい気持ちを持ちながら、何を話せばいいのか必死に考えているんです。いざメディアの皆さんの前に出ると、その時の気持ちを包み隠さず、自分の言葉でしっかり話します。前田選手は抜けているところもあるけれど(笑)、要所ではしっかりしていて、プレーは抜群。そんなギャップが、魅力的な選手だと思います」
『グラウジーズ・カメムシ事件』
――選手兼通訳の山口祐希選手は、メディアとしてもお世話になっています。山口選手の通訳は、分かりやすい日本語でありがたいです。
「山口選手は本当にいい人で、その場にいると場が温かくなります。直訳すると分かりづらいニュアンスを一度自分の中で解釈して、伝えるのに最適な日本語を選んでくれています。すごく賢い人だと感じます」
「意外な素顔か分からないのですが、遠征中のバスで、後ろから山口選手の悲鳴が聞こえてきたことがありました。山口選手の席の近くにカメムシがいたみたいで、子どもみたいに逃げ回っていました(笑)。山口選手は本当にカメムシが苦手みたいで、『助けて! Stinky!!(くさいやつ)』って叫んでいました」
――思わず英語が出ちゃっていますね(笑)。
「結局、ペッパーズ選手が袋でつかんで外に逃してあげていました。これが、グラウジーズ・カメムシ事件です(笑)」
八村塁効果とジレンマ
――富山県といえば、NBAワシントン・ウィザーズの八村塁選手とGリーグに挑戦中の馬場雄大選手の出身地です。2選手がメディア露出するようになって、グラウジーズを取り巻く環境は変わりましたか?
「県内のバスケ熱が上がったのを感じます。ただ、NBAとグラウジーズが結びつかないところがもどかしいです。八村選手が活躍をすると報道のほとんどがNBAになって、グラウジーズが勝ってもテロップだけになる。そこは枠を食い合うのではなく、共存できる方法を探っています。せっかく八村選手がつくってくれたバスケ熱を絶やさないように、身近なバスケチームとしてグラウジーズに興味を持ってもらうのがこれからのテーマです」
――細川さんは、なぜ富山グラウジーズ広報という職を選んだのですか?
「私は、グラウジーズが2005年に創設したときからのファンでした。子どものときは、週末に家族でバスケを観に行って、チームで働いている女性に憧れました。その後バスケチームに入るための進路を選んで、大学ではスポーツの学部に入りスポーツビジネス領域に熱中しました。ちょうどBリーグ開幕のときで、グラウジーズでインターンをさせてもらうことになったんです。インターンを2年続けて、そのまま入社しました。グラウジーズは私の成長と共にあって、今は大好きなチームで仕事をさせてもらっている。これが天職だと思います」
――細川さんはSNS等の情報発信からメディア対応まで、1人で広報を担当されています。この仕事のどこにやりがいを感じていますか?
「ブースターさんの笑顔を見られるのが一番のやりがいです。バスケの会場は、喜怒哀楽をみんなで共有できます。コロナウイルスの影響で今は会場で会えませんが、選手とブースターさんをSNSで繋ぐことができます。実際の笑顔は見えなくても、オンラインでも喜んでくれるのを見るのがすごくうれしい。これからも、グラウジーズを取り巻く人たちの笑顔をもっとつくっていきたいと思っています」
富山グラウジーズ、手洗い動画にも本気を見せる
新型コロナウイルスの影響拡大で自粛が続くなか、Bリーグ各クラブは感染拡大防止や家時間を楽しむコンテンツを配信しています。そんな中、グラウジーズが配信したのはPPAP-2020の手洗い動画。 選手たちのこの本気度……最高です!
取材・文:石川歩
取材協力・写真提供:富山グラウジーズ