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「いつかミニオンの足元で」サンロッカーズ渋谷・山内盛久選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.21>

2019.11.18

真っ黄色のユニフォームに金髪、カラフルなバッシュでコートを走りまくって、得点をクリエイトしながら自らも点を取る。サンロッカーズ渋谷のガード・山内盛久選手(やまうちもりひさ・29歳)は、2017-18シーズンに琉球ゴールデンキングスから渋谷に移籍し、今季で渋谷3シーズン目をむかえます。

沖縄県出身、2・3・4・6歳の4人の男の子のお父さんで、現在は、奥さんと子どもを沖縄において単身赴任中の山内選手に、ファッションや子どもたちのこと、「一度は辞めようと思った」というバスケのことについて聞きました。

派手な見た目とは裏腹に、実は人見知りで、初対面の人との会話では「努力のワンラリー」を心がけるという山内選手。気取らずに、何でも素直に話してくれた山内選手のインタビューからは、等身大のBリーガーの姿が見えてきました。

「いつかミニオンの足元で」サンロッカーズ渋谷・山内盛久選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.21>

黄色の私服と、山内盛久選手のオリジナルブランド『moooly』

――サンロッカーズ渋谷は、ユニフォームもロゴもとにかく真っ黄色のイメージがありますが、山内選手の私服も黄色! 渋谷には、黄色を着なさいという暗黙のドレスコードがあるのでしょうか?

「強制はされないけれど(笑)、今日は渋谷のチームカラーに合わせてみました。シャツとパンツはH&Mです。僕は、ハイブランドを着ると緊張しちゃうから、ブランドものはあまり着ないです。もしも真似したいと思う人がいても、Tシャツ1枚2万円だと気軽に買えないし」

――Bリーガーの皆さんはきれいな体型をしているので、ハイブランドを着こなしている姿も見たいし……、でも親近感がわくのはファストファッション……どっちのコーデも見てみたいです! 山内選手はご自身のアパレルブランド『moooly(モーリー)』を展開していますが、今日は着てこなかったのですね。

「自分のブランドを着てメディアに出ても……気持ち悪い人になるかなと思ってやめました。本当は着たいけれど(笑)。僕はラバーバンドが好きでいつも付けているのですが、いまmooolyオリジナルのラバーバンドをつくろうと思って、色やプリントを試しているところです。これは販売するのではなくて、mooolyのアイテムを買ってくれた方に、ノベルティとして渡そうかなと思っています」

「いつかミニオンの足元で」サンロッカーズ渋谷・山内盛久選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.21>

ベンドラメ選手とお揃い、山内盛久選手のコーディネート。

――事前に『おしゃれだと思うBリーガーは誰ですか?』というアンケートに答えていただいたのですが、同じチームのベンドラメ礼生(べんどらめれお)選手、千葉ジェッツの西村文男選手、3×3の落合知也選手を挙げられました。

「レオは『ナイキ(NIKE)』をうまくコーディネートしています。いつもおしゃれなんですよ。(この話をしているときに、ちょうどベンドラメ選手が通りかかりました。トップスが山内選手とそっくりのイエロー×黒チェック柄)まさかの、イエローチェックかぶり! レオ、揃えてくるやん!(このあと2人で記念撮影をして去っていくベンドラメ選手)」

――渋谷の選手の私服、やっぱり黄色しばりがあるのでは……(笑)。西村選手と落合選手は、バスケ界のおしゃれな選手として、よく名前が挙がります。

「二人は、もういっこ上のおしゃれというか、何がおしゃれか分かんない領域の人って感じです。芸術的というか、あえてレディースを着るみたいなこだわりがあるというか。全身黒でも、それを上手に着こなすイメージ。西村選手も自分のアパレルブランドを持っていて、きちんとポップアップも出したりして、すごくいいなって思います。僕のやっているブランドも、そこまでになりたいなと思う」

「いつかミニオンの足元で」サンロッカーズ渋谷・山内盛久選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.21>

「自分が一番楽しいと思うことを、仕事にした」山内盛久選手

――山内選手はバスケ選手になる前は、アパレルの会社に勤めていたことがあるのですよね?

「もともとファッションに興味があって、沖縄でアパレルの会社に就職しました。やっていてとても楽しかったんですが、僕はこのまま60歳までアパレルの仕事だけを経験していくのかなと疑問になってきて、自分が何をしているときが一番楽しいのか考えたんです。その答えはバスケだった。一度プロ選手を目指してみて、プロになれなかったら、バスケが好きという気持ちに区切りをつけようと思いました」

――結果として、山内選手は当時bjリーグの琉球ゴールデンキングスで、練習生になりました。

「いま考えれば、よくやったなと思うのですが……、練習生といってもプロの練習に入れるわけではなくて、キングスの選手が来る前に練習の準備をして、練習中はボール拾い、練習が終わって選手の自主練が始まるとパス出し、選手たちが帰ってから自分の練習をして、片付けをするという毎日でした。給料が出ないので、練習の後に焼き鳥屋でバイトをしていた。睡眠時間も短くて大変だったと思うのですが、プロと一緒に練習ができるし、ずっとバスケができて楽しかった。アパレルの会社に就職したときに親がとても喜んでくれたのに、結局、頭を下げてバスケにチャレンジしたので、覚悟をもってやっていました。プロになるまでは、がむしゃらに突き進みましたね」

「いつかミニオンの足元で」サンロッカーズ渋谷・山内盛久選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.21>

――山内選手のように会社員からプロになった選手がいる一方で、学生時代から有名でプロ選手まで一直線にたどり着いた選手もいる。いろんなバックグラウンドを持った選手たちが、同じコートで戦っているのがBリーグなんですよね。選手たちのプロになる前の背景を知ると、Bリーグをさらに楽しめそうです。

バッシュでこだわるのは、カラー展開が多いこと。

――今日のシューズは、エアフォースワン‘07ウィートヌバックです。このシューズ、素材も色も秋らしくて良いですね。

「僕はずっとエアフォースワン<AIR FORCE 1>が好きで、真っ白のエアフォースワンは、汚れたら買い換えて履いています。今日履いてきたのは、色が好きで買いました。こういう色のシューズを持っていなかったので、1足ほしいなと思って」

「いつかミニオンの足元で」サンロッカーズ渋谷・山内盛久選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.21>

――山内選手の“ちょっと自慢のシューズ”は、ナイキのアダプトBB<ADAPT BB>。電動のシューレース調整機能を搭載したシューズですが、電動で靴紐がしまるってどんな感覚ですか?

「電動靴紐は、すごいっす。靴紐は少しずつゆるんでくるんですが、電動で調整してくれるから常に足にフィットした状態なんです。電動でしめるときの音がウィンウィンとけっこううるさいので、僕は競技中に履いたことはないです。レオは試合で履いていました。試合中に、ウィンウィン鳴っていましたね(笑)」

――山内選手が、試合中に履いているシューズはなんですか? バッシュには、どんなこだわりがありますか?

「僕は、ユニフォームとは全く違う色のバッシュを履きたいんです。アダプトBBを試合で履かないのは、カラー展開がないという理由もあります。前はナイキのカイリーロー< KYRIE LOW>を履いていたのですが、もう無いので、最近はコービー4<KOBE 4>を履いています。

バスケはプレーはもちろんですが、選手の見た目からも楽しんでほしいと思っています。僕は、NBAを見るときに選手のファッションにも目がいくほうなので、“あの選手の履いているバッシュは何だろう”とか、そういう入り口からバスケを見てもらってもいいと思う。だから僕は、いろんな種類と色のバッシュを履くようにしています」

「いつかミニオンの足元で」サンロッカーズ渋谷・山内盛久選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.21>

(C)SUNROCKERS SHIBUYA

――Bリーグでも、外国籍選手の足元を見るとスーパーマンのソックスを履いていたりして、いいなーって写真を撮りますが、日本の選手はあまり足元を派手にしている選手はいませんね。

「たしかに、名古屋(ダイヤモンドドルフィンズ )のヒルトン・アームストロング選手とか、引退したロバートサクレ選手は、ドラゴンボールのソックスを履いてプレーしていました。本当は僕もカラフルなソックスで試合に出るのを狙っているのですが、まだ勇気がなくて(笑)。クリスマスにやってみようかな」

――せっかくなので、黄色いキャラクターのソックスはどうですか? くまのプーさんとか? 戦う感がないけれど……(笑)。

「だったら、僕はミニオンが好きなので、まずはミニオンからやってみようかな(笑)」

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4人の男の子のお父さん、家族の時間を大切にする。

――山内選手は、2・3・4・6歳の4人の男の子のお父さんです。可愛い時期に単身赴任は寂しいですね。家族とは、どんなふうにコミュニケーションをとっていますか?

「シーズンオフは沖縄で過ごして、シーズンに入っても、月に一度は沖縄に帰るようにしています。日曜日の試合が終わって、そのまま最終便で沖縄に帰ります。チームは月曜日が休みなので、火曜日の朝に関東に戻ってきて、そのまま練習に行くんです。遠征先から沖縄に帰ることもあります。頑張れば、家族には会えるもんですよ」

――子どもたちは、お父さんがバスケ選手だと分かっているのですか?

「上の3人は理解していますね。長男は自分からバスケをしたいと言い出したので、いまバスケ教室に通っています。子どもたちは(千葉ジェッツの)富樫(勇樹)選手のファンなんですよ。『パパも、とがっぴ(富樫選手)みたいに、もっとシュートを入れればいいじゃん』って言われるので、『はい、決めます』って言います(笑)」

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奥さんの言葉で、バスケ選手を続けると決めた。

――練習生のときから数えると、山内選手は7シーズンを琉球ゴールデンキングスで過ごしました。生まれも育ちも家族も沖縄にいる山内選手にとって、キングスから渋谷への移籍は大きな決断だったと思います。

「キングスを退団すると決まったとき、僕はバスケを辞めようと思っていました。子どものことや奥さんの子育ての負担を考えると、家族で沖縄を離れることはできなかった。家族のために早く引退して、仕事をはじめたほうがいいと思って、沖縄でできる仕事を探していました。でも、沖縄にいたら家族とずっと一緒にいられると思う一方で、まだバスケをやりたい気持ちがすごくあったんです」

「いつかミニオンの足元で」サンロッカーズ渋谷・山内盛久選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.21>

――ちょうどBリーグが開幕して、日本のバスケがこれから盛り上がっていく時流があったタイミングですね。

「そう、バスケが盛り上がっていく気配がすごくあった。それで僕は、何かバスケに関わる仕事がしたいと思って職探しをしていたんです。それを奥さんがみかねて、『本当にいまバスケを辞めて、後悔しないの?』と聞いてきました。『引退して仕事をはじめてから、キングスの試合を見に行こうって誘ったら、あなたは見に行けるの?』って。僕は、まだ気持ちはモヤモヤしているから、試合は見に行けないと思った。『だったら、やれるところまでやってみて、ダメだったら戻ってくればいい。バスケをやらせてあげられなかった自分が後悔するから、いけるところまでチャレンジしてほしい』って奥さんに言われて、移籍することを決めました」

「いつかミニオンの足元で」サンロッカーズ渋谷・山内盛久選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.21>

キャップ:ナイキ ジョーダン
トップス:H&M
パンツ:H&M
シューズ:ナイキ

今シーズン、大きくメンバーが入れ替わったサンロッカーズ渋谷。Bリーグ第1節では、昨シーズンのファイナリストである千葉ジェッツに2連勝し、今シーズンの渋谷の大きな可能性を強烈に印象付けました。

「僕は、チームでは中堅なので、若い選手とベテラン選手のパイプ役になれるようにしています。今シーズンはレオがキャプテンで、彼はプレーでもメンタルでも責任を感じるシーズンだと思うので、僕がフォローしていければ。レオの責任を少しでも軽くして、ストレスなくやっていけるようにしないといけない立場にいると思っています。メンバーのうち半分以上が今シーズンからジョインしているので、今までのチームの伝統を引き継いで新しい選手に伝えながら、同じ目標を持って、チームとして一つになって戦っていきます」と山内選手。

「いつかミニオンの足元で」サンロッカーズ渋谷・山内盛久選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.21>

取材中、ベンドラメ選手や田渡修人選手が通りかかって、山内選手の邪魔? をしていくようすは、わちゃわちゃしていて、とても楽しそう……! 新しく生まれ変わった渋谷は、チームとしてはじまったばかりですが、気持ちはすでにまとまっているのかも! 強豪揃いの東地区で台風の目になるのは、渋谷かもしれません。

ホームが青山学院記念館で、気軽に試合を見に行けるのもサンロッカーズ渋谷の良いところ。今日の山内選手のシューズはどんな色だろう……? そんな動機で観にいっても、きっと楽しめます。ぜひ一度、試合に足を運んでみてください。

文:石川歩
写真:白松清之
写真協力:サンロッカーズ渋谷

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