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能代工業のある秋田は、Bリーガーにも厳しい? 熱狂的ブースターと共に戦う秋田ノーザンハピネッツ【Bリーグ広報のてまえみそ<秋田ノーザンハピネッツ編>】

2020.11.16

昨シーズンは19勝22敗と、過去3シーズンで最多勝利をあげていた秋田ノーザンハピネッツ。新型コロナウイルスの影響拡大によりリーグは中止されましたが、今シーズンへの期待を抱かせる成績を残しました。秋田といえば、他チームの選手が嫌がるほどの応援で知られる“クレイジーピンク”と呼ばれる熱狂的なブースターがいることで有名。今シーズンはコロナ禍での開幕という難しい状況のなかで、どんな応援スタイルを築いていくのか。広報3シーズン目をむかえた杉沼紀子さんに、広報の目線から見たチームとその周辺について話を聞きました。

能代工業のある秋田は、Bリーガーにも厳しい? 熱狂的ブースターと共に戦う秋田ノーザンハピネッツ【Bリーグ広報のてまえみそ<秋田ノーザンハピネッツ編>】

秋田ノーザンハピネッツ広報3シーズン目をむかえる杉沼紀子さん。今回はオンラインでお話を聞きました

コロナ禍の“クレイジーピンク”はどう進化する?

――初めて秋田のホームゲームに行ったとき、ブースターの声援と盛り上がりがすごすぎて試合後も耳がツーンと鳴っていました(笑)。

「ブースターさんは、応援というより声援で選手と一緒に戦ってくれているイメージなんです。競り合っているときのスティールや得点につながるような激しいディフェンスをすると会場がわいて、そこから一気に秋田に流れがくるというシーンは何度もあります。ブースターさんのいる会場全体で試合の流れを変えるのは、秋田ならではの強みです」

能代工業のある秋田は、Bリーガーにも厳しい? 熱狂的ブースターと共に戦う秋田ノーザンハピネッツ【Bリーグ広報のてまえみそ<秋田ノーザンハピネッツ編>】

ⓒAKITA NORTHERN HAPPINETS

――シュートが入ったら盛り上がるのは当たり前で、秋田はその前段階から声援がありますよね。応援が具体的だと感じました。

「秋田に移籍してきた選手は『ディフェンスやスティールなど、このプレーで盛り上がってくれるのかというところで声援がくる』と言っています。秋田県には能代工業があるので、バスケ観戦の目が肥えているのかもしれません。だからこそ厳しい部分もあって、ダメなプレーには選手たちが“ウッ”となるような叱咤激励もあります」

――秋田ブースターの声援はホームアドバンテージの最たるものだと思いますが、今シーズンは声を出す応援ができません。選手を後押しするホームゲームづくりはフロントの腕の見せどころです。

「ブースターの皆さんなら声を出さなくても一体感はつくれるはずです。社長の水野(勇気)も、声は出せなくても日本一のアリーナをつくると言っていて、今シーズンのスローガンは“AKITA BEAT”になりました。手拍子でリズムを刻んで一体になる新しい応援スタイルです」

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ⓒAKITA NORTHERN HAPPINETS

「今シーズンは、手拍子・拍手・メガホンの応援を行っています。オフェンス、ディフェンスでいくつかある音源にのせて一緒にクラップしてもらいます。秋田の代名詞でもある選手入場後の秋田県民歌斉唱も声を出すことはできませんが、ブースターさんから募集した県民歌斉唱動画を選手たちの映像に組み合わせてビジョンに映し出しています。また接戦の試合や盛り上がりが最高潮に達したときに『FLY AGAIN』が流れると、チアダンスチームがパフォーマンスをします。それに合わせてブースターの皆さんも一緒に両手を上げて参戦してくれます。会場全体が一つになるパフォーマンスはコロナ禍でもやはり盛り上がります」

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ⓒAKITA NORTHERN HAPPINETS

秋田ノーザンハピネッツ・キャプテン就任の中山拓哉選手のオフコートは?

――今シーズンのキャプテンは中山拓哉選手です。杉沼さんから見て、中山選手はどんな人ですか?

「特別指定のシーズンを含めて秋田5季目になり、前田(顕蔵)ヘッドコーチの信頼が厚い選手です。キャプテンに任命されてからシーズンオフのメディア露出が増えて、ボソッと『キャプテンは大変なんだなあ』とつぶやいていました(笑)。プライベートを削るような取材が入ると最初は『え~』と言うんですが、取材前にはカチッと切り替えて自分の思いをしっかり伝えています。試合でも何十センチも身長の高い外国籍選手に物怖じせず向かっていくことはブースターの皆さんも分かっていると思いますが、オフコートでもそのメンタルは同じです」

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ⓒAKITA NORTHERN HAPPINETS

「中山選手は秋田での生活が長いので、地元民みたいに秋田のことを知っているんです。それなのに、イントネーションには厳しくて、椅子の発音(※秋田では椅子を英語のthisのように発音する)が違うよって指摘してきます(笑)」

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ⓒAKITA NORTHERN HAPPINETS

古川孝敏選手は「1食に5種類をつくる料理上手」

――昨シーズンから入団した古川孝敏選手は、チームを鼓舞して引っ張っているイメージがあります。

古川選手はチームの柱で支えになっていると思います。昨シーズンから試合に出ても出なくてもコミュニケーションの中心にいます。日本代表やリーグ優勝を経験しているベテランのメンタリティは、他の選手にも良い影響を与えていると思います」

能代工業のある秋田は、Bリーガーにも厳しい? 熱狂的ブースターと共に戦う秋田ノーザンハピネッツ【Bリーグ広報のてまえみそ<秋田ノーザンハピネッツ編>】

ⓒAKITA NORTHERN HAPPINETS

――杉沼さんだから知る、古川選手の意外な素顔はありますか?

「古川選手は、主婦顔負けの料理をつくるんです。主菜・副菜・汁物など1食で5種類、栄養はもちろんですが彩りのいい食事をつくります。夏にはズッキーニを使った料理をつくっていて、私はそんなオシャレ野菜は使ったことないなと思いながら聞いていました(笑)」

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古川選手のある日のごはん。手のかかりそうなおかずがずらり並んでいて美味しそう!
ⓒAKITA NORTHERN HAPPINETS

古川選手はオーラがあって厳しい人というイメージを持っていたのですが、いざ話してみたら気取らないすごく話しやすい人でした。グッズの相談や撮影などでフロントスタッフが体育館に行くのですが、みんな『古川選手、すごくいい人だった~』と言いながら帰ってくるんです(笑)。人柄の良さがすぐに伝わる、本当に人格者だと思います」

三者三様に個性的な秋田の若手選手

――中山選手・古川選手以外に、杉沼さんが今シーズン注目してほしい選手は誰ですか?

「いち選手に絞り込めないですね……。“若手3選手”という括りでどうでしょうか。大浦颯太選手、長谷川暢選手・多田武史選手はチームの中では若手ですが、今シーズンの全員で点を取りにいくスタイルにフィットしてチームに勢いをつけています」

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ⓒAKITA NORTHERN HAPPINETS

大浦選手は独特の雰囲気をまとっていて、物怖じしないマイペースな選手です。多田選手はシューターとしての実力はもちろん、いじられ役というか(笑)、野本(建吾)選手と一緒にギャグでチームを盛り上げています。長谷川選手は能代工業出身で、高校時代から知っているブースターの皆さんにとっては現在、秋田出身選手がチームにいない中でより親近感のある選手だと思います。もともと教職を目指していたそうで、学校訪問での振る舞いは先生そのものの頼もしさでした」

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ⓒAKITA NORTHERN HAPPINETS

秋田広報のやりがいは?

――杉沼さんは、秋田広報のやりがいをどこに感じていますか?

「他のクラブと比較したことがないので正確ではありませんが、秋田のブースターさんはお子さまから高齢の方まで年齢層が幅広いと思います。ホームゲームに行ったとき、おじいちゃん・おばあちゃんたちが前のめりで応援している姿を見て秋田にこんなふうに老若男女で盛り上がる場所があるんだと衝撃を受けました」

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ⓒAKITA NORTHERN HAPPINETS

「クラブの根底には秋田を盛り上げるという思いがあります。チームが勝つために会場にいる全員がハッスルして戦うし、選手のプレーを見て次の日もがんばろうと思えるのはバスケがもたらす大きな効果です。オフコートでも、幼稚園・保育園・小学校訪問などの地域貢献活動を進めています。バスケに限らず、秋田ノーザンハピネッツに関わる人たちと一緒にハッピーになりたいというのが私の仕事の芯の部分にあって、それを常に会場で体感できることにやりがいを感じています」

取材・文:石川歩
取材・写真協力:秋田ノーザンハピネッツ

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