「“利きエアフォース”の時間が楽しい」宇都宮ブレックス・荒谷裕秀選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.38>
今回は、白鴎大学在学中の2020年に、特別指定選手として宇都宮ブレックスに入団した荒谷裕秀(あらやひろひで)選手が登場。「何事もハマるまでは時間がかかるけれど、ハマってからはずっと好きでいる」という荒谷選手。スニーカーは小学生の頃にハマって以来集め続け、持っている靴は100足以上。今回の取材にも貴重な1足を履いてきてくれました。どんどんマニアックになっていく荒谷選手のスニーカーインタビュー。さあ! みなさん、最後まで付いてきてください!
荒谷少年、スニーカーにハマる
――今回はナイキ・エアフォース1 G -DRAGONパラノイズを履いてきてくれました。なかなか手に入りづらいスニーカーで、コレクションしている人も多いです。
「もともとエアフォースが好きで一番たくさん集めている靴ですが、その中でも最近よく履いている靴を選びました。自分は抽選で当たっても、高い値段で買ってもすぐに履きます。履かないと、”なんで買ってるんだろう”という気持ちになる。結局、かっこいい靴は販売後に値段が上がるから買った値段は気にしないです」
――パラノイズは最初は真っ黒の靴で、履いていくうちに摩擦でアッパーの黒が剥がれてアートワークが出てきます。荒谷選手のパラノイズは後ろのほうがまだ剥がれていないです。
「最初は全部剥がそうと思ったけど、諦めました。ドライヤーで温めながらピンセットで剥がしていくんですが、つま先だけやって面倒で心が折れました。その後は自然に剥がれたままを履いています」
――今日はSupremeのTシャツにスイスのアーミーパンツです。荒谷選手は、どんなふうに服を選びますか?
「Instagramを見たりして欲しいのを見つけたら、それを探します。ネットではあまり買わず、いろんなショップを見に行って、欲しかったものを見つけたら試着して買う。うちはお母さんとお姉ちゃんがすごく服好きで、高校までずっと一緒に選んでもらっていました。自分で選んで買っても、『それってどうなの?』と横槍を入れてくるんです(笑)。小さい頃から本当にいろんな服を着させられていて、”瞬足”とかは履かせてもらえなかった。子どもの頃に履いていたのはナイキ・コンバース・オニツカタイガーで、小学校の陸上記録会の写真を見たらナイキのコルテッツを履いていました」
――荒谷選手が、初めて自分で欲しいと思った靴は何ですか?
「たぶんABCマートさんにも売っていたと思いますが、小学6年の時にナイキのターミネーターのレイカーズカラーがめちゃくちゃ欲しくて買ってもらいました。それからもずっとスニーカーが好きでいろいろ欲しかったのですが、親から『足のサイズが止まるまでは集めたらダメ』と言われて、インライン(編註:ABCマート等のショップで一般的に販売しているスニーカーのモデル。アーティスト等のコラボモデルや限定モデル以外を指す)で我慢していました」
「中学3年の夏に、足のサイズが30cmで止まったんです。それで、家族で東京に旅行したときにアメ横の海外輸入ショップにお父さんだけ連れていって、ジョーダン6の北京オリンピックモデルを買いました。お父さんはあまり細かく言わないので、お年玉を貯めた自分のお金で買うならいいんじゃない? って感じでした。それからずっとスニーカーにハマっていて、今はバッシュも含めて100足ちょっと持っています」
「遠藤さんとは好きな系統が似ている」
――ブレックスは、遠藤祐亮選手・鵤誠司選手とスニーカー好きの仲間がいます。
「遠藤さんとは好きな系統が似ていて、遠征のバスで、『今日はその靴なんですね』って話をします。以前、遠藤さんがClarksのワラビーを履いてきたことがあって、自分も買おうか悩んでいたので聞いたら『いいよ』って言っていたので、いまサイズを探しています。バスケをやってる人はスニーカーが好きで集めてる人も多いから、そういう友だちが増えていくんです。だから、自分がマニアックかどうか分からなくなっていますが、ブレックスだと遠藤さん・鵤さんの3人で話しています」
――事前のアンケートで、自慢のスニーカーはナイキSBのDunkHigh・Cherry Blossomと聞きました。全面に桜のイラストが描かれていて独特の雰囲気を持つスニーカーですが、荒谷選手はどんな服と合わせていますか?
「Cherry Blossomは、持っている人が少ないかなと思って書きました。実際はそこまで派手なスニーカーではないです。夏なら、ヒールカップの半分くらいまでの長さのディッキーズ ダブルニー874のこげ茶を履いて、白いTシャツと合わせます。冬ならSTUSSYとナイキがコラボした黒のトレーナーを着て、END.とA.P.C.がコラボしたプレートのネックレスをしますね」
「今は楽しんでバスケをしています」
――荒谷選手は、2020年12月に特別指定選手としてブレックスに入りました。プロチームを経験して感じたことはなんですか?
「自分自身はあまり変わっていないですが、田臥(勇太)さんは、食べ物に気をつかって毎朝同じものを食べていると聞いて、体のケアの仕方がすごいなと思いました。あと、チーム全体の思いが違います。学生バスケは、プロになりそう・プロになりたい・プロを目指していない……というふうに個々で目指す場所が違うこともあり、モチベーションにばらつきがあるのが難しいところでした」
――その状況で荒谷選手は、プロに向かって歩みを進めてきたのですね。
「高校を卒業して白鵬大学に決まった年にBリーグが開幕しました。”これがプロだ”というのが分かりやすく目の前にあって、それからずっと目標にしていました。大学バスケでもAチームは優勝という目標があったので、メンバーのベクトルを合わせるためにシーズン前のミーティングやチームビルディングで思いを共有していく感じです。ブレックスに入ったら、そもそもみんなが同じところ、優勝に思いが向かっているのでやりやすかった。大学入学前に目標にしていた通りの状況が叶っていて、今はすごく楽しいです」
――大学バスケとBリーグではメディアや観客数が違いますが、プレッシャーは感じませんか?
「うーん、どうなんだろう……いつも楽しいなって思っています。ブレックスのホームゲームは本当にたくさんのファンが応援してくれるんだなと感じています。たぶん、すごく緊迫したシーンをまだ経験していないので、プレッシャーを想像できないのかもしれないです。今は楽しんでバスケをしています」
――今年はどんなシーズンにしたいですか?
「やっぱり優勝したいです。チームが優勝して、結果として新人賞とか新人賞ベストファイブになれたら、より嬉しいです。チームが優勝することが、結果として自分の評価につながると思っています。それに、これまで個人賞はもらっているけれど優勝したことはないので、まずは優勝したいという気持ちが大きいです」
荒谷選手の靴にまつわる朝のルーティン
――靴をたくさん持っている荒谷選手ですが、選手の皆さんに話を聞くと、シーズン中に私服になる日は少ないそうです。
「そうなんです。すでに、私服を着るのは1年に3回くらいです(笑)。夏はサンダルで練習はチームウェアで行くので、今日久しぶりに靴を履きました。でも、普段は履かなくても欲しいのを我慢するのはストレスなので、スニーカーの抽選はしています。どうせ当たらないので、もはや運試しで朝のルーティン化してます(笑)。朝、コーヒーを飲みながら抽選して、当たらないから結果も見ない。年に2~3回当たればいいほうです」
――1年で、スニーカーの当選回数と私服を着る回数が同じです(笑)。
「スニーカーは履かなくても見るんです。家にいて『あ! あのスニーカーを見よう』とか『そういえば、あれはしばらく見てないな』と思い立って見るとか(笑)。たぶん周りから見たらおかしいと思うんですが、そんなことをしています。コロナの自粛が続いて出かけられないのは、むしろありがたいかもしれないです。いま一番好きな時間は、映画を観た後にスニーカーを見ているときです。たとえば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー※1』でマーティ・マクフライが履いていたのがエア マグで、2015年にタイムスリップしたマーティはブルーインを履いていて、ドク(エメット・ブラウン博士)はバンダルを履いているのですが、家にあるバンダルシリーズを眺めて『あ、持ってるわ』って思うのが楽しい」
「『キスから始まるものがたり※2』でダンスコンテストに出るシーンがあるのですが、衣装を揃えている場面でエアマックス97シッピングボックスが出てきます。段ボールからインスパイアされたカラーリングなんですが、シッピングボックスを履いてダンスコンテストに出るシーンを観た後に、自分が持っているエアマックス97を4足並べて『あー、ここが違うわ』って思いながら見る時間も好きです。見ていて一番楽しいのはエアフォースです。同じ型でデザインが違うので『利きエアフォース』をして楽しんでいます。そうやっていると、なんだか人生は楽しいんです(笑)」
※1『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ロバート・ゼメキス監督、マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド出演、1985年
※2『キスから始まるものがたり』ヴィンス・マルセロ監督、ジョーイ・キング出演、2018年、Netflix
取材・文:石川歩
写真:白松清之
取材協力:宇都宮ブレックス
宇都宮ブレックス・鵤誠司選手『エアジョーダン』を大人買いする <Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.31>
宇都宮ブレックス遠藤祐亮選手、エアジョーダン1争奪戦にも勝つ。<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.32>