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「金髪のヤバいやつがきた」ファイティングイーグルス名古屋・石川海斗選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.46>

2022.12.21

Bリーグ×ファッション連載46回目は、ファイティングイーグルス名古屋(以下FE名古屋)の石川海斗選手が登場。石川選手は2013年に日立サンロッカーズ(現サンロッカーズ渋谷)に入団し、信州ブレイブウォリアーズなどを経て2021年にFE名古屋に加入。昨シーズンのB2優勝とB1昇格に貢献しました。今回は選手生活10年目を迎えた石川選手に、ファッションのこだわりやバスケに取り組む姿勢について聞いてきました。

金髪で結果を出していこう

――今日はナイキ・エアプレストに、トップスがモンクレール、パンツはユニクロです。

スニーカーはNike By Youで作りました。人とかぶるのが好きではないので、普段のスニーカーもバッシュもオリジナルを作ることが多いです。

「金髪のヤバいやつがきた」ファイティングイーグルス名古屋・石川海斗選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.46>

僕は髪の色もバッシュも、バスケをしている時は派手です。一方で、普段は落ち着いた色の服が好きで、黒・白・ネイビーで揃えることが多いです。プライベートで選ぶ服は値段の高い・安いで分けることはないですが、ハイブランドだったらヴィトンよりもシックなプラダを選ぶタイプです。

――なぜ、「バスケは派手に、プライベートはシックに」というスタイルなのですか?

バスケットボールという競技は、スポーツの中でもファッショナブルなイメージがありませんか? そのイメージを持って初めてバスケの試合を見に来た人が僕を見て、「金髪のヤバいやつがいる」と面白がってくれたらいいなと思っています。言ってしまえば、バスケをするだけなら簡単だけれど、もっとバスケをエンターテインメントとして楽しんでもらうことも必要だと思うんです。

「金髪のヤバいやつがきた」ファイティングイーグルス名古屋・石川海斗選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.46>

©FE NAGOYA

最初に金髪にしたのは、まだBリーグがない頃です。bjリーグとNBLというリーグがあって、僕が日立(サンロッカーズ)から岩手(ビッグブルズ)に移籍する時に、みんなと同じ黒髪で行くよりも金髪にして、「面白そうなヤツが来た」と興味を持ってほしいと考えて金髪にしました。それから髪の色を変え続けていて、自分の髪を痛めつけながら(笑)、「今日の石川の髪は何色だろう?」と楽しんでもらいたいと思っています。

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――選手の髪の色に注目することから始まるバスケ観戦があってもいいですね。

日本には金髪はチャラいというイメージがあると思うので、金髪で変なプレーをしていたら「髪ばかりいじっているヤツ」と非難があがる。だったら、金髪で結果を残していこうと考えています。僕は、自分にプレッシャーをかけるのが好きなんです。

それに、髪を染めるのが悪いことだとは思わないです。髪の色に限らず、いろんな選手がもっと自由に自分を表現できるようになれば、バスケ界にも、もっとクリエイティブな選手が出てくると思います。髪の色でプレーが決まるわけではなくて、どんな自己表現をしていても下手なことをしたら、そこまでの選手だということです。

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――Bリーグのおしゃれな選手に、群馬クレインサンダーズの並里成(なみざと・なりと)選手を挙げました。

ここから話すことは、Bリーグや日本の文化を批判しているわけではないです。
日本ではスーツやスウェットなど、みんな同じ服装で試合会場に入ります。一方でNBAは、選手個人が自分らしく自由なファッションで入る。会場入りから華やかなんです。バスケに興味がない人でも、ファッショナブルでスマートな選手の会場入りは気になると思うんです。

そういう視点でBリーグを見ると、成はいろんな人を惹きつけるファッションをしています。みんなと同じじゃない選手って、リーグでは成くらいだと思っています。

「金髪のヤバいやつがきた」ファイティングイーグルス名古屋・石川海斗選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.46>

日本語のコミュニケーションなんて難しいわけない

――FE名古屋は今季B1に昇格しました。B2から昇格したチームは昇格組と呼ばれて、B1の壁を越えられるか挑戦のシーズンという見方があります。石川選手はシーズンの始まりに、どんな思いでこの言葉を聞いていますか?

B2で結果を残して昇格したから、「じゃあ、B1で出来るの?」という疑問は当然だと思います。ただ、僕自身は、B1はそこまで大きな壁だとは思っていないです。確かに、B1の本当にトップにいる一部の選手は壁かもしれませんが、B2で試合に出ている選手のほうが、B1で試合に出ていない選手よりも実力的に上だと思うことがあります。
この意識をチーム全体に共有することはないのですが、「昇格組のチャレンジ」と言われてもチームメイトは気にしないし、「じゃあ、どうチャレンジしていく?」という気持ちでいると思います。

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©FE NAGOYA

――石川選手はFE名古屋で6チーム目です。チームに早く馴染んでいくために心がけていることはありますか?

僕はコミュニケーション能力は高いと思います。それは、バスケのポジションに関係があるかもしれません。ガードってチームの潤滑油になる役割があるから、チームメイトの中でもいちばん話さないといけないポジションです。僕のもともとの性格は話すのは得意ではないのですが、プロになってからは誰とでも話すしかない状況になりました。

FE名古屋に来る前までのチームは、ずっと外国籍のコーチでした。ガードとしては日本人も外国籍も関係なくコミュニケーションを取らないといけなくて、英語で話す難しさが身に染みているんです。だから、日本語でコミュニケーションを取るなんて難しいわけないって気持ちを持てる。この気持ちがあるからどこにでも入っていける。
それに、僕の性格として、いじられるのも嫌じゃないです。たぶん、いじられるのが嫌な人は、すんなり新しい組織に入っていけない部分があると思います。

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――プライドとか歳をとるにつれて積み重なる経験が邪魔をして、人からいじられることに抵抗がある人もいると思います。

僕は人との間に壁をつくるのが嫌なんです。たとえば、後輩に対して先輩という壁を立ててしまうと、相手は本音を言えなくなるし、僕が思っていることも言えなくなる。いじったり・いじられたりしながら、オープンに本音を言えるようにしてあげるのは、年齢を重ねた人がやることだと思っています。

「石川海斗被害者の会」入会するか、免れるか

――SNSで「#石川海斗被害者の会」というハッシュタグがあります。試合終了間際に逆転勝利を決める石川選手のプレーに対するハッシュタグで、石川選手の土壇場の勝負強さが表現されています。

信州(ブレイブウォリアーズ)にいた時にできたハッシュタグです。僕がクラッチタイムのシュートを決めることが多いのと、「決めてやった」というドヤ顔……僕自身はドヤ顔をしているつもりはないのですが、その表情を見て「被害者」という表現が出てきたのだと思います。

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©FE NAGOYA

「被害者の会」という言葉を素直に受け止めるなら、その表現はイヤです(笑)。でも、石川海斗被害者の会というハッシュタグには、リスペクトしながら言葉遊びとしてタグを付けてくれているのが分かるので嬉しいです。今シーズンは「B1でも会員が増やせるの?」と言われていることも知っているので、B1会員が増えるように頑張っていかなきゃなと思っています。

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トップス:モンクレール
パンツ:ユニクロ
スニーカー:ナイキ

取材・文:石川歩
写真:水野由佳
取材協力:ファイティングイーグルス名古屋

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