千葉ジェッツ・小野龍猛選手「本当に靴が好きなの」<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.20>
ちょっと怖そうで、あまり笑わないクールなイメージのある小野龍猛選手。しかし、ユニフォームから私服に着替えた小野選手と向き合って話してみると、198cmを見上げた先にあるのは、なんでも素直に話してくれる優しい笑顔でした。
シーズン序盤に右手を骨折して長期離脱を余儀なくされ、消化不良のまま終えた2018-19シーズンをリセットし、シーズンオフの早い段階から体づくりをしてきたという小野選手。ユニフォーム姿ではとても大きく見える体ですが、近くで見るとかなり引き締まったモデルのようなきれいな体型。この体型なら、どんな服でも似合いそう……!
今回は、2013年にトヨタ自動車(現アルバルク東京)から千葉ジェッツに移籍し、今年でジェッツ7シーズン目をむかえる小野龍猛(おのりゅうも・31歳)選手に、大好きな靴とファッション、子どもの話を聞きました。
ハイブランドからヴァンズまで。小野龍猛選手に聞く“靴愛”。
――今日の靴は、名門ブランド『バレンシアガ』のスニーカーです。この靴を選んだ理由は?
「昨日、広報の三浦さんとこの取材について話していて、僕は靴をたくさん持っているから、何でも履いていけるよって言っていたら、たまたまそこに(西村)文男が来たの。文男は前にこの連載に出ていたから、“何を履けばいいかな?”って聞いたら、“ジェッツはブランドしばりにしようよ”っていうから、これにしました。バレンシアガは靴のデザインが特に好きで何足か持っています。今日履いてきたのは、ダッドシューズ(※1)が流行ったときに欲しいなと思って探したものです」
――西村選手が取材で履いてくれたのはクリスチャン・ディオールでした。ジェッツのハイブランドしばり……次に出てくれるジェッツの選手のハードルが上がりますね(笑)。小野選手は足のサイズが32cmなので、靴を買うのに苦労しそうです。
「僕は本当に靴が好きなのですが、日本ではサイズがないので、オフシーズンに行くハワイで買ったり、『StockX』などのアプリで買います。『ナイキ(NIKE)』も日本で32cmがあるのはジョーダンシリーズくらいで、エアマックス<AIRMAX>とかSBになると、30cmまでですね。日本では買えないけど、『ヴァンズ(VANS)』もかなり好き。オールドスクール<OLD SKOOL>のスタンダードなカラーとチェック柄、フレイムも持っています」
――小野選手は体が大きいので、いかついジョーダンも似合いますが、ヴァンズも似合いそう! ヴァンズはどんな服にも合って足元をおしゃれに見せてくれますが、小野選手はもう1ランク上がった履きこなしをしそうです。
「ヴァンズはマジでかっこいいよね。汚れていてもかっこいいというか……汚して履きたい靴。僕のなかでヴァンズは、“育てる靴”。ちょっと雑に、わざと汚くなるように歩いて、僕なりの汚れたヴァンズスタイルにしていくのが好きです」
自慢できるスニーカーと、収納方法は?
――“これはちょっと自慢できる”という靴はありますか?
「エアジョーダン6<AIR JORDAN 6>とスラムダンクがコラボしたスニーカーは、ちょっと自慢です。僕は普通に買ったけど、今だとプレミア価格がついているものもあるみたい。後悔しているのは、前に井上雄彦先生と対談する機会があって、そのときに持っていかなかったこと。サインをしてもらいたかったのに、対談する当日に持っていくのを忘れちゃったの(笑)。あの靴は、箱にもスラムダンクのイラストが描かれていて良かった。僕は、箱もきちんと取っておきたいタイプです」
――小野選手は、どのくらい靴を持っているのですか? 1足が32cmあるし、収納が大変そうです。
「家には靴収納専用のタワーボックスがあります。それでも場所を取るので、奥さんには文句を言われるけれど、それは仕方ないんだよって言います(笑)。今は靴を厳選しているので、家にあるのは50足くらい。僕は靴の手入れをきちんとしたいので、あまり数を増やすと大変なんです。でも、先月は欲しいスニーカーが多くて、ナイキSBとジョーダンブランドがコラボしたエアジョーダンと、エアマックスのTokyo Mazeを買いました」
――先月で2足も増えてる(笑)。他のBリーガーとは、靴の話をしますか?
「以前ジェッツにいて、今は富山グラウジーズの阿部(友和)選手はスニーカーが好きなので話します。試合で何を履いているか見るのは、宇都宮ブレックスの遠藤(祐亮)選手。遠藤選手は、いろんなバッシュを履いていますね。他にも、スニーカー好きのBリーガーはたくさんいると思います。川崎ブレイブサンダースの大塚(裕土)選手とか、熊谷(尚也)選手も、靴好きだと聞きます」
――これまで話を聞いてきた選手たちは、プライベートではバッシュを履かない選手が多かったのですが、小野選手はどうですか?
「ナイキのジョーダンシリーズをバッシュとするなら、数も持っているので、外で履けそうなものは履いちゃいます。ラフなコーディネートに合わせるなら、ジョーダンはアリだと思う。バッシュはバスケをするための靴だけど、靴は靴ですから」
年間パスポートを持っているディズニーランドで。
――今日の小野選手のコーディネートは、バレンシアガのTシャツに、ユニクロの黒デニムです。上下で同じ色なのに、体型の良さもあってメリハリが出ていて、とってもおしゃれな着こなしです。
「僕は、ワントーンでシンプルな私服が多いです。ユニクロのパンツが好きで、ナイキのエアフォースワン<AIR FORCE 1>のような感覚でユニクロを履いています。この感覚、分かりますか? スタンダードなものには、安定感があるんです。Instagramや雑誌で、NBA選手やアパレルブランドのディレクターのコーディネートを見るのが好きですが、そこにはあまり影響を受けず、僕は自分の好きな服を好きなように着ます」
――小野選手は6歳と5ヶ月の2人の男の子のお父さんですが、お子さんとお揃いコーデはしますか?
「しないですね。子どもの服は奥さんと僕で選びますが、家族それぞれに似合うものを着ればいいと思う。子どもの靴は、僕が選びます。最近は、ナイキのスカイジョーダン1<SKY JORDAN 1>を履かせています」
――実はディズニーランドが好きだと聞きました。小野選手がミッキーのイヤーハットをかぶっていたら、きゅんとしますが……、かぶりますか?
「かぶらないですねえ(笑)。子どもにも、かぶらせたことがないです。ディズニーランドは大好きで、千葉に移籍してからずっと年間パスポートを持っています。Bリーグのシーズン中も、気分転換によく行きます。もう、散歩に行く感覚でディズニーランドに行っています」
――そんなにたくさん行っていると、ディズニーランドでジェッツファンに会いそうですね。
「よく会いますが、あそこではファンの皆さんもそっとしておいてくれます。以前、すっと僕の番号のキーホルダーを見せてくれた方がいて、そのときは僕も小声で“あざっす”って返しました(笑)。あとは、並んでいて最初に気づいてくれて挨拶して、いったん別れるのに、行列の折り返しでまた会うという……、そのパターンは、ちょっと気まずいですね」
――お子さんは、お父さんがバスケ選手だと分かっていますか? もしも将来、お子さんがバスケ選手を目指すと言ったら、小野選手はどうしますか?
「僕が選手というのは、分かっていますね。長男はバスケが好きで、試合が終わったコートで選手たちに遊んでもらっています。ジェッツの選手たちと会う機会が多いから名前も覚えているし、そういう環境が、彼をバスケに向かわせている部分はあると思います。将来、バスケ選手になるかどうかは分かりませんが、本人がやりたいことをやってほしいです。僕は昨シーズンに怪我をしましたが、体のコンタクトが多い競技だから怪我は仕方ない部分がある。怪我を怖がるのではなく、怪我をしても乗り越えられるような、強い男になってほしいと思います」
「人は、絶対になるようになる」小野龍猛選手
――小野選手は、試合で履くバッシュには、どんなこだわりがありますか?
「僕は、バッシュはローカットが好きなので、ナイキ・コービー4を履いていました。このコービーの履き心地に似ているのが、ナイキのズームフリークで、履いていてしっくりきています。履き心地とデザインと色で選んでいて、ジェッツカラーにすることが多いです」
――小野選手は、2013年にトヨタ自動車から移籍して、ジェッツ在籍7シーズン目に入りました。長くジェッツにいる小野選手から見て、クラブの変化をどう感じていますか?
「クラブの変わりかたは壮絶ですよ。移動手段も練習環境も、観客動員数もクラブの規模も、身の回りのもの全ての規模がどんどん大きく、良くなっていきました。僕はジェッツに来る前は企業チームにいたので、ジェッツ移籍当初に感じた差はすごかったです。ただ、環境の落差よりもバスケの楽しさが勝っていたので、ネガティブな気持ちにはならなかった。当時からバスケはきっと人気が出ると思っていたし、チームがどう変わっても、シーズンの結果が良くても悪くても、昨シーズンのことは忘れて新しいシーズンにイチから取り組んできました」
――小野選手は、ジェッツに移籍する前年に結婚されました。家庭を守らないといけないとか、子どもができたら責任を持つものが増えるとか……プロ選手としてのプレッシャーはありましたか?
「家庭を持ったから頑張らないといけないとか、そういうプレッシャーは全くないです。そんなこと言うと、奥さんに怒られちゃうけれど(笑)。トヨタにいたときはなかなか試合に出られなかったので、移籍は考えていました。そのタイミングで、たまたまジェッツの試合を見る機会があって、正直に言ってお客さんはほとんどいなかったけれど、ファンの熱量のすごさは感じていたんです。いざ移籍するときに、最初に声をかけてくれたのがジェッツだったので、他のチームのオファーを待たずにジェッツに決めました。
子どもが生まれたときも、プレーに影響はなかったです。彼らを育て上げなきゃいけないという危機感もない。僕はプレッシャーを感じないタイプで、どうなってもそれが自分の運命なんだと考える。人は、絶対になるようになるんです。だったら、余計なプレッシャーを感じずに生きたほうがいい。僕は、そういう生き方をしています」
トップス:バレンシアガ
パンツ:ユニクロ
シューズ:バレンシアガ
今シーズンの千葉ジェッツは、スタメンに定着していた石井講祐選手、アキ・チェンバース選手が移籍するなど、チームが変化しました。昨シーズンは怪我もあり、定位置だったスタメンから外れた小野選手ですが、4年目のBリーグ開幕直前に行ったこのインタビューでは、「今はチームをつくる準備期間で、良い雰囲気になっています。新しく入った選手は自分の役割を出そうとしているし、ずっといるメンバーは負けずにやるべきことをやっている。僕はずっとスタメンでやってきて、そこにプライドを持っているし、今シーズンはスタメンを狙っていきます」と話しました。
昨シーズン52勝8敗という史上最高勝率を叩き出したジェッツですが、チャンピオンシップでは大方の予想を覆してアルバルク東京に敗戦し、チャンピオンを逃しました。“今シーズンこそは”という思いが最も強いのは、ジェッツかもしれません。今季のレギュラーシーズンも、ジェッツの快進撃は続くのか? 4年目が開幕したBリーグの会場に足を運んで、その勝利への熱量を感じてみてください!
※ダッドシューズ:おじさんが履いていそうな、ソールの分厚いぼってりとしたシルエットの靴のこと。アディダスやプーマのほか、ルイヴィトンやグッチなどハイブランドからもダッドシューズが販売された。
INTERVIEW / TEXT:石川歩
PHOTO:野呂美帆
写真協力:千葉ジェッツ/原淳二