「スニーカー選びは、奥さんの意見を尊重する」 宇都宮ブレックス アイザック・フォトゥ選手<Bリーグ×ファッションの密な関係Vol.52>
Bリーグ×ファッション連載52回目は、宇都宮ブレックスのアイザック・フォトゥ選手が登場(通訳:加藤敏章さん)。イギリスで生まれてニュージーランドで育ち、ハワイ大学を卒業。プロバスケットボール選手として、スペイン・ドイツ・イタリアでプレーし、2021年から宇都宮ブレックスに所属しています。また、2014年からニュージーランド代表としても活躍しており、2023年のワールドカップに出場しました。
「すでに履ききれないほどの靴を持っています」
――今日のスニーカーはエアジョーダン4です。ジョーダン4を選んだ理由は?
ジョーダンシリーズの中でも、ジョーダン4と11のデザインが好きなんです。今日は服に合わせて、ブラックとレッドのジョーダン4を選んできました。
僕の普段の私服は、かなりカラフルなファッションが多いです。やっぱり、明るい色の服を着ていると気分も明るくなって良いですから。でも今日は、ボブ・マーリーのいろんな表情が写されたプリントTシャツを選びました。チームメイトにはよく知られているのですが、僕はレゲエ、特にボブ・マーリーが大好きなんです。パンツは僕としてはおとなしめのプレーンなものを選んで、ジョーダン4と合わせました。
――これまでにフォトゥ選手はさまざまな国でプレーしてきました。プレミアのついたスニーカーを買う機会も多かったと思うのですが、「これは自慢できる」というスニーカーは持っていますか?
めちゃくちゃ高いプレミアムなスニーカーは持っていません。ジョーダンシリーズなど、自分が好きな服に合う靴を選んでいます。
子どもの頃はインターネットでレアなスニーカーを探して、「このスニーカーが買えたらいいのに」と思っていましたが、なかなか手が届きませんでした。大人になって、プロバスケットボール選手として収入が得られるようになって、好きな靴を買えるようになりました。すでに履ききれないほどの靴を持っているので、今は持っている靴を順番に履いているところです。
――何足持っているのですか?
そうですね……多すぎて数えられないほど持っています。ヨーロッパで8年間、日本で4年間プレーしてきて、毎年スニーカーを買い集めてきましたから。両親の家とニュージーランドの自分の家に置いているスニーカーがあり、日本の家にもスニーカーがあります。いつか引退して自分の家を持つことがあったら、スニーカー用の大きな倉庫を用意して、今まで集めてきた靴をまとめて保管できる場所をつくりたいですね。
「スニーカー選びは、奥さんの意見を尊重します」
――Bリーグでプレーしていて、「良いバッシュを履いているな」と思う選手はいますか?
チームの中だと、遠藤(祐亮)選手はすごくかっこいい靴をたくさん持っています。あと、渡邉(裕規)選手もいい靴を履いているなと思って見ています。
Bリーグでたくさんの試合をしてきましたが、リーグでプレーする多くの選手が良いバッシュを履いているなと思って見ています。Bリーグの選手は、オシャレですね。その中でも、とてもレアなバッシュを履いている選手もいます。特にコービーシリーズを履いている選手には目がいくし、羨ましいなと思います。
――「羨ましいな」と見ているけれど、フォトゥ選手自身はレアなバッシュに興味がないのですか?
今は、だいたい500ドル以下の靴を選んで履いています。奥さんとの間で「靴1足に700ドルも使うのはどうなんだろうね?」と話していて。コービーシリーズのバッシュが好きなのですが、コービー・ブライアントが亡くなってから価格が跳ね上がってしまって、なかなか手に入れられません。コービーが亡くなる前に買っていたシューズがあるので、それをたまに履いています。
――お財布は、奥さんが握っている感じですか。
僕がもっと若かったら、ためらいなく欲しいものにお金を使っていたと思います。でも今は、歳を重ねて将来のことも考えるようになったので、奥さんの意見を尊重しています。
ファッションは、個性を表現する手段
――フォトゥ選手は身長が203cmです。日本に、フォトゥ選手が着られる服はありますか?
日本で自分に合う服を探すのはけっこう難しいので、アメリカなど海外から買うことが多いです。ただ、奥さんがセカンドハンドの店を巡るのが好きなんですね。彼女がいろんな町の古着屋を回ってくれていて、僕に合うサイズの服を見つけると「この服は合いそうだよ。欲しい?」と連絡をくれます。
――フォトゥ選手は、イギリス・ニュージーランド・ハワイ・スペイン・ドイツ・イタリア・日本と様々な国で生活してきました。それぞれの国で、どんなふうにファッションを楽しんできましたか?
ハワイやニュージーランドは小さな島国で、基本はTシャツと短パンで過ごします。自然が近くにあるので、気取らずに落ち着いた雰囲気のファッションが多いですね。僕は、このゆったりしたスタイルが好きで、自分のファッションに取り入れた部分があります。一方で、イギリスやイタリアはコートやジャケットを着る人が多い印象です。ヨーロッパにいる時は、僕も影響を受けていました。
日本は、ファッションに対してとても真剣に取り組んでいるイメージがあります。特に日本の若い人たちは、好きな服を着てオシャレをしようという意識の高さを感じます。オフで東京に買い物に行く時は、若い人たちのファッションを見て楽しんでいます。中でも、オーバーサイズの服を上手に着こなすスタイルが好きですね。あと、ブレックスのチームメイトもオシャレですよ。遠征は私服で行くのですが、みんなとてもオシャレな格好で来ます。見ていて、いつも感心しています。
僕は、もともと色でコーディネートするのが好きです。上下の色味を合わせたり、意外な色を組み合わせたりしてファッションを楽しんでいます。そこには、これまで住んできた土地のエッセンスも入っていると思います。国や地域によって、よく使われる色や流行りのスタイル、日常のファッションが違うので、各国のエッセンスを取り入れながら今の自分のスタイルになったと思います。
――フォトゥ選手はタトゥーも印象的です。フォトゥ選手にとって、タトゥーはどんな意味を持っていますか?
自分にとって大きな存在なのは、文化としてのタトゥーです。例えば、左腕のタトゥーは自分のルーツでもあるトンガのデザインが刻まれています。文化以外の視点で言えば、タトゥーには自分の好きなものや名前、大切な家族、住んできた街のシンボルなどが入っています。自分が歩いてきた歴史や人生そのものを刻んでいる感覚といえば伝わるでしょうか。
一番好きな動物であるライオンや、4(フォー)2(トゥー)というファミリーナンバー、両親を表現している薔薇、ハワイのシンボルである亀、僕が育ったオークランドの街並みなどがタトゥーのデザインになっています。
――日本社会では年齢に応じた服装やスタイルを期待されることが多くて、それがプレッシャーになることがあります。こういった社会的なファッションの制約について、どう思いますか?
僕は、日本のファッションがすごく好きです。ただ一つ、おっしゃるように日本のファッションは黒・白・ベージュなどオーソドックスな色を選びがちだなと感じます。僕は、明るい色の服を着ることは自分の気持ちを明るく保つ効果があると感じているんです。自分自身のために選ぶ色づかいですね。
それに、周囲と違った色を選ぶことは、社会からはみ出すことではなくて、自分を際立たせる要素として働くのではないでしょうか。個性的な色を取り入れたファッションは他の人と差別化ができるし、自分のスタイルや個性を表現する手段だと考えてみるのはどうでしょうか。
――最後にお聞きします。フォトゥ選手はいつも明るい雰囲気をまとっていて、ブレックスのファンを含め、誰にでも好意的に受け入れられているように感じます。なにか普段から心がけていることがありますか?
まず、大切にしているのはいつも自分らしくいることです。ありのままでいることで自然な人間関係が生まれると思うし、自分にも負担がかかりません。
僕たちの仕事はファンの皆さんの応援があって成り立つものなので、本当に感謝しています。宇都宮市内を歩いているとファンの方がよく声をかけてくれます。いつも心がけているのは、常にみんなに対して親切であること。偶然に出会う人が、どんな背景や経験を持っているのか、今どんな状況にいるのかは分からないので、常にリスペクトを持って、優しく親身な姿勢で接することが大切だと思っています。
取材・文:石川歩
写真:高橋マナミ
取材・写真協力:宇都宮ブレックス